STAR OCEAN Sanctions of God







第九章 







第八部  






---エクスペル クロス平原---



「させるかぁああッ!!!!!!!」


ズギャアアアンッ!!!!


まるで大地を揺るがすかのような振動と共にボーマンが城方面から突っ込んで来た

一気にアシュトンの目の前まで滑り込むボーマン

汗を一粒たらした後にニヤリと笑って見せた

「ボーマン…」

アシュトンがかすれた声で笑っていた

そして死の恐怖から脱出したアシュトンは涙を零す


「すまねぇなアシュトン

お前達が代わりに戦ってくれたのによ…

流石にこいつらの卑怯さに飛び出せずにはいられなかった…

お前もそうだろ!チサトッ!!!」


ズギャアアアンッ!!!!


「へっへー、まぁねぇ〜」

チサトが違う方向から敵の陣を崩してアシュトンのところにひょこひょこと出てきた

「チサト…」

アシュトンにまた笑顔が重なっていく

ギョロとウルルンも薄っすら瞳を開けて笑っていた

アシュトンを守るように立つ二人…


ヒュンッ!!!!


アシュトンが瞬きをしている間にアシュトンを囲うのは4人になっていた

セリーヌを中心にテレポートをしてきた二人

「セリーヌ…ノエル!」

セリーヌが呆れた様にメンバーを見つめる

「駄目だっていったのに二人が突っ込んでいったんですもの…

でも…私も…許せるような戦いじゃありませんわ」

アシュトンが頷いて微笑む

座り込んでアシュトンにヒールをかけ始めるノエル

「こんな無理する人だとは思いませんでしたよ…

でも格好良かったです」

ヒールと共にノエルの笑みが心を癒してくれた

アシュトン達が話している間にマグライトがまた不機嫌そうに叫ぶ


「本当にやってもやっても這い上がってくる…

まるで下等生物のようだなッ!」


その言葉に五人から笑顔が消えた

「このメンバーに…勝てるとでも思ってるのか?」

ボーマンが煙草をくわえながら腕をまくりなおした

「少し…キツイおしおきが必要みたいですわね?」

セリーヌが杖を地面に突き立てて連邦軍を睨みつける

「なんか…ネーデ人っていう事忘れてたけど…

あなた達の星に生物が存在する前から宇宙進出してたのよねー

よりムカついてきたわ」

チサトがふんっふんっと言いながら拳同士をたたきあう

ノエルが既に詠唱をしている事に気付く間もなく…


『アースクエイクッ!!!』


ズドドドドドドンッ!!!

ズガガガァアアアンッ!!!!


一瞬にして6人の周りは針のような岩に覆いつくされる

「がはッ…」

マグライトがなんとか岩の間から這いずり左腕を押さえながら再び命令を下した


「全部隊ッ!!転送ッ!!!全てを破壊しろぉッ!!!」


ブゥウウウウウウウウンッ!!!!



先ほどの二倍はあるだろう部隊が転送され、6人に狙いを定めた

その転送が済んだ頃には目にも止まらぬ拳が部隊を吹っ飛ばしている状態

「な、なんだッ!」

ズガンッ

と声を発した兵の顎にチサトの蹴りがヒットした

「かはッ!!」

ドンッ

余韻を残した状態で兵は目の前が真っ暗になる

再び蹴りを喰らった兵士はそのまま兵士達に突っ込んだ

一呼吸をおいて剣を振り上げる兵士の足をひっかけ

倒れるところで確実に急所に蹴りをかます

「おっと」

同じスピードで動く戦闘兵士がチサトの顔の寸前までダガーを滑らせた

ぎりぎりかわしながら右拳をがら空きのボディーにかますが

「わぉ」

寸前で腕を掴まれて空中に投げ飛ばされた

その無防備な状態に兵士が空を見上げた瞬間

「だから人と戦いたくないんですのよッ!」


『エクスプロード!』


セリーヌの紋章術が兵士達に炸裂した

空中にいるチサトを確認して紋章術を操作したため

上空に舞うはずの炎が地面で一気に燃える

密度の高い炎に形すら残らずに焼かれて蒸発していく

エネルギーフィールドで防いでいた兵士がセリーヌを攻撃しようとする寸前に


『真絶・朧車ぁッ!!!』


紅い閃光を発しながら上空にいたチサトが兵士達をなぎ払う

地面で滑り込み、セリーヌの横で一息ついた

「やっぱり私達って強すぎ?」

セリーヌが苦笑いする

「そうですわね」



「遅いんだよ」

マグライトが周りのやられていく者達に気をとられている頃には

ボーマンの拳がマグライトの顔面を捉えていた

ズゴンッ!!

「がはッ!!!」

部隊の中に飛ばされたマグライトは地面に叩きつけられながら剣を抜く

周りを守っていた筈の兵は地に伏し、顔を上げるマグライト

ボーマンが今まさにとどめをさそうと拳を握り締めていた


「兵達が全部悪いわけじゃねぇ…

指揮をする奴が腐ってるから強い奴らも無駄死にしてくんだよ」


マグライトが後退りしながら首を横にふる

「さ、さっきの衝撃で通信機が壊れて戦艦に

戻れなくなってしまったじゃないか…

あはは、強いよ君らは…本当に強い…降参だ降参!」

そんな事が耳に入るはずもなくボーマンはマグライトと地面ごと砕く

「かはっ!」

ボーマンが周りを見渡す頃には立っているのは見慣れた者達だけであった


「ごふッ…ふはは…我等の…負けだ

だが…知らないだろう?

私を殺したらアースホープが…

自動で最大で放たれる仕組みになっているのだよ…」


ボーマンが…セリーヌが…全員が唖然とした

果てたマグライトを見ながらボーマンがやるせない怒りを叫びに変えた


「ふざけんなぁあああああッ!!!!」


ここまでエクスペルを守り繋いできた人々の思いが全てねじ伏されたようで

地面を自分の血で染まるほどボーマンは殴りつける

チサトもセリーヌも頭の中が真っ白になったようであった

「アシュトン…!まだ動いては!」

ノエルが立ち上がるアシュトンを座らせようとするが…

表情は凛々しくも穏やかであった

「アシュトン…」


「僕達が食い止めるよ」


そう言った瞬間にボーマンが凄い早さで迫り、アシュトンの首根っこを掴みあげた

ギョロウルがなぜだか笑っている

「ふざけんなッ!お前達確実に死ぬぞ!!?」

チサトも顔は笑っていながら目が潤んでいた

アシュトンの腕をギュッと抱きしめる

「アシュトンは…よく頑張ったよ…もういいんだよ…」

アシュトンは空を見上げた


「今日も…綺麗な空だよね」






いつのまにかボーマンも空を見つめていて

日が落ち始め、うっすらと空がオレンジ色になり始めていた

「俺らなんて…眼中にないみたいだな…」

今にもこの星自体が消えてしまうというのに…

過ちを犯しているのに…星は全てを受け入れている

チサトは掴んでいる腕の力を強めた

アシュトンが空を見上げながら壮大な空を背に微笑む


「いつも僕らを見つ続けてくれた空…

後ちょっとすれば日が暮れて…

家から明かりが漏れて…家族の笑い声が聞こえる

そして…

朝がくるんだ」

そこにいる全員が…ある思いにかきたてられた

「死ぬつもりでここに来たのにな…空見上げちまうと…

ニーネや子供達も一緒に…この空見上げてんかな…?」

ボーマンが一瞬想像したニーネや子供達の笑顔


何回も日が沈み…昇っていきながらすくすく育っていく子供達…

絶対ニーネみたいな美人になって…

その辺の男達が集まってきて…


「あぁ!ちきしょう!!

子供達は全部俺のもんだぁッ!!!」


ビクッと周りが驚いた後…ボーマンはただ一言呟いた


「死にたくねぇッ!!!」


その言葉に一斉にセリーヌやチサト、ノエルの瞳から涙が溢れた

「クロス王国を再建して…人々の幸せを取り戻したいですわ…」

セリーヌが城を振り返る

チサトが胸に入っているメモ帳を見つめた

「人々に…真実を伝え続けたい…」

ノエルが自分の動物保護区の飼育管理の心配をして、

様々な事を考えていた


沈み始める日…それとは逆に光始める上空

アースホープが最大までチャージしている…


アシュトンがふらふらとした足取りでセリーヌの前に立つ


「皆を安全な場所へ…お願いできるかな…?」


その覚悟に…誰もが胸を締め付けられた

今の想いで反論しようにも、あまりにも穏やかで優しい表情のアシュトン

涙がぼろぼろと落ちていくのを感じたチサトは

アシュトンとのやり取りをメモに記録していく


「いいんですの…?プリシスのこと…」


セリーヌが最後の問いをした


「ここで何もしない僕より…

プリシスはきっと…

最後まで抗い続けた僕を…


誇らしく思ってくれる筈だから」


ボーマンがアシュトンの前に立って肩を抱く


「俺だって…俺だって…!エクスペルや…!

家族のために抗いたいんだよッ!!

抗いたいのに…俺の力じゃどうにもならねぇ…

それが


悔しいんだよッ!!!


おしいとこばっかもっていきやがって…!!」

チサトがメモ帳片手にアシュトンの手を掴んだ

「絶対…!!アシュトン達の勇士をエクスペルの皆に伝えるから…!!

新聞のトップ記事で写真つけるんだから…!!!

だから!だから…ッ!!!


元気な姿で帰ってきてよッ!?」


ノエルも未だに治療に専念しながらアシュトン達に微笑みかける

「安心してください、僕らはいつも一緒です

そして僕らはアシュトン…あなた達の生還を信じます…


仲間ですから」


その意思にセリーヌは涙を流しながらアシュトンにそっと身を寄せた


「ぅ…格好良すぎ…ですのよ…」


この中でアシュトンと一番長く旅をしたセリーヌは

最初の頃のアシュトンを思い出す

本当にどうしようもないぐらいのマイナスな人で…

ドジで間抜けで…男として見れなかった時もあるけれど…

優しさだけは誰にも負けない…

ギョロウルにだって…良い仲間になれたと思っている

「本当…こんな人が想ってくれるなんてプリシスがうらやましいですわ…」

クリスも結構な人だと補足した後にセリーヌがアシュトンから離れる

チサトが、ボーマンが、ノエルが離れた後…

アシュトンが一歩下がった



「それじゃ…待ってますわよ」

「写真を撮らせてよね?英雄が誕生って記事書くからさ!」

「またお話しましょう」

「終わったら酒だからなー!」


ブゥウウウウウン…








テレポートで皆が目の前からいなくなると

アシュトンは大粒の涙を流し…

顔を上げた


「迷いは…断ち切れたか?」


ジーネがいつの間にか隣で微笑んでいた

「ジーネ…ごめんね」

どこか申し訳なさそうにジーネを見つめるアシュトン

「何を言う…

アシュトン…そして双頭竜がお前達が決めたのだろう?

なら私はここまでエクスペルを守ってくれたお前達に礼を言わなくてはならない」

アシュトンに本当の笑顔が戻った

「ありがとう」

ジーネが空を見上げる

アースホープの光で見るに見えない空

それでも瞬き一つしなかった

「ほら、ギョロ、ウルルン…起きて」

ギョロとウルルンが薄っすらと瞳を開けてアシュトンに笑いかける

『ここまでこれたのも…お前のおかげだ』

『楽しかったぞ』

ギョロとウルルンは瞳以外動かさず…アシュトンの肩で意識を保っていた

「ごめんねジーネ…勝手な話しなんだけど…

あはは、僕の体じゃもうもたないから…

僕らを支えてくれないかな?」

ジーネは笑った

「星の最後を見届けるには特等席だからな

それに…少しでも星の為になれるなら…本望だ」

アシュトンは笑みを浮かべると…

眩い光を放った






『大いなる創造神トライアロ…』


ブァアアアアアアッ!!!!






アシュトンとギョロ、ウルルンは一つの剣となって眩い光を放ち

ジーネの前で雄々しくその剣は浮かんでいた


「これが…本当のトライエースの…剣(つるぎ)…なのだな」


ジーネはそれを手に取った


ブァアアアアアアッ!!!!


実感する…

三人の力が溢れる剣…それは…


暖かくて…


勇ましかった


ズギャァァァァアアアアアアアアアアアアンッ!!!


アースホープが放たれた

今までの非ではなく…大きさも空が迫っているかのようだった

握る手に力がこもる…

目前に迫る時点で意識が遠くなりそうな光

物質そのものを破壊しながら星を飲み込みそうな光

ジーネは魔力を最大に使い、大地を、空気を揺るがした


ズガァァァァアアアアアアアアアアアアンッ!!!


たった一本の剣がその光を受け止める

「ッ」

凄まじいほどの力のぶつかりあい…

周りの物が呆気なく消し飛んでいく

意識が今にも途絶えそうなジーネは血が吹き出るほどに歯を食い縛る

全身の筋肉がねじ切れていくのが分かった…

普通の人などこの光の下にいる時点で瞬時にぺしゃんこになるであろう圧力

魔族王として君臨していたジーネでさえ恐怖を覚えた

ジーネは体の間隔が麻痺し、今にも息絶えそうだというのに…


その剣は光る事をやめなかった


剣を見ると…ジーネは不思議と安らぎ…

勇気が溢れかえってきた

「なぜ…そんなにも…勇ましくいられるのだ…?」

そう…その眩い光を放ち続ける剣(つるぎ)の言葉は直接頭に流れ込んでくる



『僕達は…ただ…


明日を生きる人の…


明日を守りたいだけなんだ』



ジーネは微笑む他なかった

そうだ…それが…我々の望むモノ…

表情は笑っているのか分からない…

だがジーネは確かに心では笑っていた



「はあああああああッ!!!!!!」









ズガァァァァアアアアアアアンッ!!!



ズゴォオオオオオオオオオオオオオッ!!!










オォオオオオオオオン…








光が一気に弾けとび…

クロスの大地は大きく削られてしまったが…

空には満天の星がしっかりと見えた

ジーネはその場で体が限界に達し…倒れこむと

地面に突き刺さったトライエースの剣を不意に見つめる



ブァアアアアアッ!!



綺麗だった

眩い光を失わず…その剣は光の粒子となって空に返っていく

空は既に日が落ちて…星が瞬いていて

アシュトンとギョロとウルルンの光がまるで…

上空に舞って行く星のようで…そんな空の星達と一緒に光り続けていた




「感謝する…

お前達のおかげで我々は明日に進める…」














*こめんと*

本当にここまで読んでいただいてありがとうございます!

結構細々に分けようとしたんですが…

あまりごちゃごちゃさせたくないので長くなってしまいました、すいませんです。

この後もその後の皆の話を結構書いたんですが…

長いだろうということで、次の番外編でお送りします。

え?本編はまだ…ですか?

エディフィスはまだお預けで!

少し息抜きも兼ねて皆それぞれの番外編を書いていきます

ここまで息が詰まってますから…;

基本9章の後の話しなので10章にしてもいいんですがね…

それでもここまで読んでくれている皆様には大感謝です!


アシュトン達は星を守り抜けた…それだけで満足だと思います

プリシス…?


こうご期待!!!





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