STAR OCEAN Sanctions of God







第九章 







第七部  










---エクスペル クロス城跡、防衛拠点---



「…私達…まだ生きていますの…?」

ゆっくりと瞳を開けるセリーヌ

隣ではまだ気を失っているクリス

目の前にはボーマン、チサト、ノエルがそれぞれの態勢で瞳を開けていた

「どういうことだ…?天国もこういう所なのか?」

ボーマンが呆然と立ち尽くす

「えっとー…確か大きな揺れまでは覚えてるのよねー…」

チサトが記憶を探るように頭をたたき出す

ノエルが何気ない表情で外を見つめた

「ここはエクスペルで…ただ分かるのは

僕らは連邦の張ったエネルギーフィールドによって助かった…そして…


アシュトンがたった一人で…

平原に立ち尽くしているということ…」


ノエルが見つめる先

それを食い入るように見つめるチサト

唖然とした様子のボーマンとセリーヌ

そしてその横で立ち尽くすジーネ

不意に言葉を零した


馬鹿者達が…帰っておけばいいものを…


ジーネが事情を知っていると分かったボーマンが睨みをきかせた

「事情を短直に説明してもらおうか」

ジーネがコツコツと窓口に歩きながら息をつく

「彼らはクロード達の為にここに来て

クロード達のために去る筈だったのだ…

だが、現状を知ってしまった三人は手を出さずにはいられなかった」

チサトが今まさに飛び出そうと後ずさりをしていた

それをセリーヌが杖で通路をふさぐ

「今…飛び出して…どうにかなる戦いだと思いますの?

私達が出て行っても邪魔になるだけですわ」

いても立ってもらいられないチサトは

それでもひっきりなしに溢れる汗に焦っていた

「でも…!でもアシュトンが!!ボーマンもノエルも何か言ってあげてよ!」

ノエルはただチサトを見て顔を横にふるだけ

ボーマンはただ外を見つめてチサトを気にする様子はなかった

ジーネはただチサトを無表情で見つめる

その様子にチサトは我に返ってセリーヌを見つめた

「ごめん…私達が…手出しできるような…話じゃないよね…」




















---クロス平原---




ブゥウウウウン!!


マグライト率いる連邦小隊がアシュトンを囲うように転送されてきた

その数ざっと五千人

アシュトンの表情は曇る事無く少し半笑いしている

「半ば勢いだったけど…二人は後悔していないよね?」

ギョロとウルルンは何も答えようとせずにニヤリと笑った後にブレスを上空に舞わせる

その様子を見た連邦軍は一瞬にして三人を魔族として認識した


そう…人以上の恐怖を漂わせていたからだ…


「分かっているのかね?君は…私の計画を丸潰しにしてくれたのだよ?」

マグライトが一歩踏み出して眉間にしわを寄せて笑っていた

アシュトンは腰に手を当て少し笑みを浮かべた後にマグライトをにらみつける


「知らないね…結局君達はエクスペルを守ると言いながら…

災いを持ち込んだ…誇りを、エクスペルの皆のプライドを傷つけた」


マグライトが頭を押さえながら笑い始めた

「未開惑星の原始人ごときを同等の人類と見れるとでも思ったか?

ここの物資をいただくだけ頂いて労働するだけの動物にしてやろうと思ったのだがなぁ」

アシュトンは無言で双剣を握り締め、ギョロウルは口からブレスを溜め込んでいた

「それが敵わないならこの星を吹っ飛ばして、どこかの未開惑星でも…

支配してやろうと思ったんだよ


それがなんだ貴様は?人間何だか魔族なんだか…

本当に気持ちの悪い生物だ

さっさと死んでこの星の藻屑にでもなるがいい」


その瞬間にアシュトンの怒りは頂点に達していた


「僕は負けない…!人として!魔族として!

このエクスペルを守ってみせる!!!」


マグライトがその言葉にしびれを切らして命令を下した


「一斉射撃!!塵にしてやれ!!!」



ズダダダダダァンッ!!!!


連邦からのアシュトンに向かっての一斉射撃、それを軽々と上空に舞ってかわしたため

囲っていた連邦の仲間に次々と当たっていく

呆れた表情でアシュトンは自分に標準が合う前に双剣を震わせる

「ちゃんとした指揮もできないなんて、情けないね…呆れちゃうよ」

そう言った瞬間に連邦の兵が見たものは…

上空で体を回転させながら双頭竜がブレスを吐いている姿だった


「いくよ…ギョロ…ウルルン…」


ズオォオオオンッ!!!



「ドラゴンッ!ハリケェーンスラァッシュッ!!!!」



ズギャアアアアアンッ!!!


ブァアアアアアッ!!!!!



アシュトン自ら上空で竜巻の軸になりながら炎と氷のブレスが交じり合う竜巻が形成される

それは周りの物をなぎ払い、焼き尽くし、凍て尽くす風神のごとくの竜巻

その攻撃を受けた瞬間に立っていられずに吹き飛ばされ、焼かれ、凍て尽くす

一瞬で一小隊が壊滅的ダメージを受けた

スタッと地面に降り立つアシュトンと双頭竜には覇気が満ちていて

それを見た瞬間に連邦の兵士はただただ闇雲にフェイズガンを乱射するだけであった

マグライトが歯軋りをたてながら叫び声をあげる

「この化け物がッ!!攻撃特化部隊Aランク転送だッ!!!」


ブゥウウウウン!!


その瞬間に今までとは違う武装の兵士がさき程よりも多い数でアシュトンの周りに転送されてきた

「殲滅だッ!!!コイツを殺せば全てが終わる!!殺した者には栄誉をあたえよう!!!」

マグライトが狂ったようにアシュトンを見つめて笑っていた

「狂ってる…」

その瞬間にはアシュトンは部隊の中に突っ込んでいた


ズギャァン!!


剣を振り上げてアシュトンを一斉に攻撃しようとした瞬間には既に敵の剣はへし折れ


ピシィイインッ!!!


次の瞬間には周りの者が全員凍り付き、素早い動きでアシュトンをしとめようとする敵が攻撃した時には…

「ど、どこに消えた…!」

アシュトンは目の前から姿を消していた

ザシュ!!

ズバァッ!!!ザンッ!!!

気が付けば周りの仲間がどんどんと切り倒されていた

周りには葉が舞っている

それでも冷静な兵士達は防御に身構えながらカウンターの準備をしていた

その時…

「な、なんだッ!!!?」

部隊を囲むようにアシュトンが三人立っている

どれを攻撃しようかと検討、攻撃する瞬間であった


ズォオオオン!!


その三人のアシュトンの中心から大きな結界紋章が浮かび上がる


ドラゴンブレスッ!!!!!


ゴォオオオオオオッ!!!!


連邦の兵士は躊躇する暇もなくアシュトンを攻撃しようとするが

三人のアシュトンのギョロウルルンが巨大化し、大量のブレスが吐き出され

中にいた兵はほとんどが多大な被害を受ける中

アシュトンは外からの攻撃を受ける瞬間に詠唱を唱える事無く目を見開き

双剣を地面に突き刺した

その瞬間にアシュトンとギョロウルには体を覆いつくす紋章が光りだし

三角形を描いていた結界紋章からオーラが放射される


ノーザンクロスッ!デッドトライアングルッ!!プロミネンスッ!!!!


ピシィイイインッ!!!!


ズギャオオオオオオオンッ!!!


ズガァアアアアアンッ!!!!!



外から攻撃しようとした者、結界紋章の中の者は一斉に凍て尽くされ

とてつもない高圧縮された三人の力が結界紋章から上空に向かって放たれる

そして結界紋章が一気にクロス平原を覆い、炎をあげながら爆発した

まだ炎をあげるクロス平原で一人立ち尽くすアシュトン

既に瞳とオーラからは神をも凌駕する覇気を漂わせていた














---クロス城跡、防衛拠点---



「あれが…アシュトン…」

セリーヌは震えが止まらなかった

セリーヌの紋章力では隋を抜いていた筈の力が小さく…

いや…アシュトンが…人という領域を超えているのだ…

チサトも震えが止まらずとにかくペンを走らせていた

「行ってたら一発で消しくずにされるとこだったわね…」

ボーマンがいまだに食い入るように遠くのアシュトンを見つめていた

「あいつ…本当にこのまま一人でどうにかしちまうのかもな…」

ジーネも顔を少し強張らせながら頷く

「私は…あの三人の本当の力を解放させただけだ…

紋章術というものの物理法則すら無視し…

自在に自らの力に変換する圧倒的な力…

アンカース一族の本当の力だ…

それに加え、もはや魔族ではなく、魔王として君臨すら出来ほどの双頭竜の力」

セリーヌが少々焦りながらジーネに問う

「アンカース一族って…

代々の紋章剣士とまでは聞いていましたけど…

そこまでの紋章力を持ちながら…

どうして滅んでしまったんですの…?」

ジーネが語り始めた


「自ら滅ぶ事を望み、長自ら村を焼き払った…」


三人は驚きを隠せなかった

「アンカース一族の旅をしていた者の分岐の人々がマーズ村の人間だ」

セリーヌは少し理解した様子でマーズ村の始まりを悟った

そう…マーズ村を作ったのはアンカース一族の末裔…

「アシュトンは難を逃れた放浪するアンカース一族の一人…

昔から親には滅びたのは魔族のせいだと言い聞かせ

アンカース一族の滅んだ理由を知らせたくなかった…

ただ普通の剣士として生きてもらいたかったからだ」

ジーネが何もかも知っているかのように語ると

ボーマンが首を傾ける

「なんで、そこまで知ってるんだ…?」

ジーネはなくなってしまったラスガス山脈を見つめた

「私が長自ら他のアンカース一族の制御を頼まれたのもある

だが…その事はアシュトン本人から聞いたのだ」

その制御を開放したアシュトンは既に人として成り立つ事は不可能

それを可能にしているのが双頭竜のあふれんばかりの力

「まるでネーデ人のような種族だったんですね…」

ノエルが哀れみを含んだ表情でうつむく

「私達…知っているつもりでアシュトンの事…ほとんど知らなかったんですわね…」

他の三人が頷き、その光景を目に焼き付けた

そしてふとチサトが気が付く

「ねぇ…あの三人…体…もつの…?」

その言葉にセリーヌが不安を募らせた表情で振り返る

ボーマンは唇を噛み締めていた

ノエルはただうつむくだけ

ジーネは目を細めた


「既に…アシュトンは双頭竜の呪いも含めて長くは生きられない」


「そんなッ…」

セリーヌは口を手で覆い、目に涙を滲ませた

「ちぃッ!!!」

ズガンッ!

ボーマンは壁をぶち壊すかのごとくに拳を叩きつける

「嘘よ…そんなの…」

チサトは肩を震わせながら拳を握り締め、持っていたペンを砕く

ノエルもよりうつむいて涙を零した

「アシュトンは…人間と魔族の誇りを守るために…ギョロとウルルンとだけで戦うつもりなんですの…?」

ジーネは頷く

「アシュトンは魔族の誇りを知っている…

双頭竜は人間の優しさを知っている…

こんな想いを抱いて戦う者はアシュトンと双頭竜以外いないのだ」

反論はいくらでも出来る

でも四人はただただ戦うアシュトンを見つめるだけであった




















---クロス平原---




ズギャァァァァアアアアアアンッ!




アシュトンは空を見上げた

眩い光がこちらに向かってくる


アースホープであった


ギョロが叫ぶ

『おいッ!アシュトンッ!!どうするつもりだ!』

アシュトンは汗を滲ませながらニヤリと笑って見せる


「粉砕するだけさ!!」


ギョロウルはその表情に安心してアシュトンに任せた




グラウンドトライアロンッ!!!!





ズゴゴオオオオオオオンッッッ!!!!





「くぅッ…!」


さっきより早めに放った筈のグラウンドトライアロンは

短時間に放ったせいでアシュトンの体力の消耗が威力を半減してしまっている

アシュトンのぎりぎりの所で粉砕されるアースホープは

アシュトン自信が地面に埋まるほどのものであり

粉砕されるとともにクロス平原の大地はより削れ

その中央で土埃を被りながらアシュトンが倒れこんでいた


ブゥウウウウン!!


そのアシュトンを囲うようにまたマグライトと違う部隊を転送して来ていた

「さっきまでの勢いはどうした?無様な姿だな?」

アシュトンは起き上がろうとするが…

全身の骨と筋肉がいかれてしまっていた

『短時間であの技二発は無理があったんだ…』

ギョロも起き上がれない様子で語りかけてくる

『だが…あんな星を破壊するほどの威力のものを二発も受け止めたのだ…

お前はよくやったと思う』

ウルルンが笑っているように見えた

アシュトンは上半身だけなんとか起こし、二人を肩に乗せた

そしてマグライトを三人は睨み付ける


「僕達は最後まであなた達に抵抗する…

どんな状態であろうとも…ぐぁあッ!!」


マグライトは屈しないアシュトン達が気に入らないのか一発のフェイズガンで太ももを打ち抜いた

「つまらん意地など無駄なのだよ?

そんな動けない状態で武装した兵士に囲まれている…

どうやって勝つつもりだ?」

アシュトンは流石に苦笑いするしかなかった

確かにこのままでは確実に衰弱死するか、殺されるかだ

『近代兵器で勝ったつもりでいるのは…

我等は納得はできないが…

これが運命なら…従おう…』

ウルルンが目だけを動かしてアシュトンに語りかける

『我等は魔族として…人間として敵はうてなかったかもしれないが…

誇りは取り戻せたと思う…』

ギョロが瞳を閉じながら語りかける

アシュトンは死ぬという事を今一度理解した


「そっか…もう…皆にも…プリシスにも会えないんだ…」


マグライトが察したようにニヤリと笑ってみせた


「これでも私はそこまで悪い奴ではないのだよ


5分だ…5分だけ待ってやる」


アシュトンがどこか苦笑いをしていた

「後5分かぁ…」

ギョロとウルルンは既に瞳を閉じてアシュトンの肩で休んでいた

徐に懐から通信機を取り出し、空を見あげた後に通信機を見入る


思い残した事…?


たくさんあるさ

皆と世界を守らなくちゃいけないんだ…

皆に散々迷惑かけたから謝ったり、お礼言わなくちゃ…

それにプリシスのショッピングに付き添わなくちゃいけないし…

プリシスと動物園ってところにも行って見たい…

プリシスに料理を徹底的に教えなくちゃ…

プリシス今…元気かな…?

プリシスごめんね…

プリシスありがとう…

プリシス…



「あはは……死にたくないなー…」


そんな事を呟きながら刻々と過ぎる時間にアシュトンはなぜか焦りを感じなかった

時間が刻まれる中、アシュトンは今までの事や様々な事を思い出して…

笑って…苦笑いして…少し涙を零した…


「時間だ」


マグライトが命令を下そうとした時…

「ごめん…これだけは送りたいんだ」

その言葉でマグライトが命令を一旦止めた

散々考えた挙句…一つのメールをプリシスに送った


「皆…プリシス…ごめんね…そしてありがとう…」


ギョロとウルルンがアシュトンの顔になすりついてくる

アシュトンは笑顔で瞳を閉じた
















*こめんと*

この部でこの章を終わらせるつもりが…

おさまりきれませんでした…

少しアンカース一族のほうは勝手に設定考えてしまいましたが


力を解放され…

圧倒的な力を見せ付けるアンカース一族の末裔、アシュトン

それに匹敵するほどの力を手に入れた双頭竜、ギョロとウルルン

その三人の前では全てが無に帰る

紋章剣士としての力を使い次々と連邦を追い返すが…

既に限界が来ていたアシュトンに追い討ちをかけるように

二発目のアースホープが放たれた

グラウンドトライアロンを放つが限界に耐えられずに地面に伏す事に…

そして連邦に囲まれ…アシュトン最後の時…

やはり考えたのは皆…そしてプリシスの事

メールを一通だけ送ってアシュトンは時を待つ


次でこの章も最後になると思います!!


こうご期待!!!





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