STAR OCEAN Sanctions of God







第九章 







第四部  







ズゥゥウォオオオオオオオオンッ!!!!





地響きがゆっくりと引いていき、マーズの人々がそのまま倒れこんでいった

その光景に城門の兵達が肩を落とす

セリーヌの父、エグラスは膝をつき、ゆっくりと後ろに倒れていく村長に目を奪われた

「村長…」

周りの者も体を上げ、倒れた村長を見やる

おおらかで、やり遂げた表情で…息絶えていた

皆、虚しさと、悲しさが溢れたが、心残りはない

母なる大地を台にしてまでも生き延びようと、誇りをかけて戦い抜いたマーズの人々

「われらは…マーズ村の者として…やり遂げたのだ…」

目の前の光景を見ようとも、エグラスは表情を変えなかった

そう…魔族が目の前に迫っていても…



「我等が大地を痛みつけてまで紋章術を使うなど…

我等の怒りが増すばかりだぞ?」



そこにはジーネ、人の姿をした魔族王ジーネが立っていた

その背後には怒りを増した魔族達が待ち構えている

「魔族王には…通用…しないというのか…」

エグラスはそれだけが腑に落ちず、眉間にしわを寄せる

星の命を削ってまで扱った破壊の紋章術、ジーネを中心とした後ろの魔族以外は粉砕できたが…

見積もってもまだ1万程はいるだろう

エグラスはただただ目の前を全て背景として見つめ、瞳を閉じる

「貴様ら人間より、我等は星と共に生きてきた存在

その頂点に立った私が…逆のエネルギーを送り込んで粉砕した」

ジーネはゆっくりと歩みを進める

それに続いて魔族も歩き出す

エグラスは絶望などはしなかった

命を削ってまでも最後の紋章術を使い

それがもし良い結果じゃなくとしても…

そう…私達の出来る事はもうなくて…

マーズの人々は呆然と目の前の光景を目に焼け付ける

門の兵士達は察した





負けた…と










---城門内---




「私達の負けですわ」

セリーヌは立ち上がってクリスに笑みを受かべる

「あぁ」

クリスも立ち上がって剣を手に取った

「どんなに…窮地に追い込まれようとも…僕達は戦う」

報告に来ていた兵士達が頭を下げたまま並んでいた

そして町の人々が迎え入れてくれた

大勢の人々がクリスとセリーヌを見入る

不安に立たされながら、城門に向かって歩を進める二人は

一人の若い兵士が身を震わせながら二人の前に飛び出した


「いいのですか…王と女王が生き残れば…また機会が…!」


クリスはその兵士に笑みを浮かべる



「この国は…この大陸は…クロスの人々がいて成り立つんだ…

王と女王がまた建国しようと…二度とクロス王国にはなりえない」



誰一人反論しようとしない

むしろ肩を震わせて涙を零す者がほとんどで…

でも志が折れる事はない涙


「悲しみに浸るより…今を精一杯生きるんだ

それが僕からの最後の言葉であり、願いだ」


一時の歓声と共に皆城門付近に迫る魔族に見入る

「行きますわよ…クリス」

クリスの後にセリーヌが続き、後ろに兵士が、人々が続いていく

「今なら…負けても…悪い気はしないんだ」

セリーヌが精一杯の笑顔でクリスと手を繋いだ










その時であった

















ブゥウウウウウウウンッ!!!!















目の前に大勢の軍服を来た兵士達が転送されてきたのであった

その数もざっと目の前を埋め尽くす程

人々は一気に脅え、その転送されてきた兵士達にすら魔族に見えて、たじろいでいきそうになるが…


「我等は君達の仲間だ」


訳も分からず攻撃をしようとする人達を押さえ込む兵士の人々

セリーヌは唇を噛み締め、軍服姿の兵に目を細めた

そして目の前に立つ、他の者とは違うオーラを放つ軍服の男

「クリス王ですな…?」

クリス王を見下す様な眼差しで長身のその男

クリスとセリーヌは見知っていた


「連邦軍の方は…呼んでいません」


そう言ってクリスは剣を片手に連邦の兵士を押しのけ魔族達の元へ向かっていく

だが、城門から先に進む事ができなかった

まるで見えない壁があるかのように…

「ど、どいうことだ!」

クリスは振り向いた瞬間に目の前が真っ暗になった

「かはッ…!」

気が付くと一人の軍服の兵に睡眠針を打ち込まれていた

群れていた軍の兵達はクリスから離れ、意識を失ったクリスはそのまま倒れこむ

「大丈夫、ただちょっと手荒いが、眠ってもらっているだけだ」

セリーヌが叫びを、見ていた人々が怒りの声をあげる

「クリスッ!!」

クリスに向かって走っていこうとするが、一人のオーラの違う指揮官であろう男が立ちふさがる

「今のクロス王は融通が利かないようですな?

申し遅れた、私はマグライト・トレイアー

連邦のエクスペルの管理の方を任されている者だ」

セリーヌは既に紋章を唱え始めていたが…

「無駄だ…この城内は特殊なバリアに包ませてもらった」

セリーヌは力が抜けていくのが分かって、抵抗を止め、マグライトを睨みつける

「私達は…これから戦いに行く所でしたのよ…?」

マグライトは頷いて薄っすらと笑う

「確実に負けるというのに?」

セリーヌは真剣な眼差しで頷く

「当たり前でしてよ…私達は誇りをかけて戦いますの」

そう言っただけなのに軍の兵士から声が聞こえてくる


『誇りなんて…やっぱり古い奴らは言う事が違うな』

『負けに行くなんて馬鹿のやることだろ…』

『流石あのケニーの仲間だな』


セリーヌはこみ上げる怒りと、今から戦おうとする人々に対する侮辱に…


パシンッ!!


力を込めてマグライトの頬をひっぱだいていた

だがマグライトは微動だにしない

セリーヌは瞳に熱い物を感じながらもジッとマグライトを睨みつける

「私達は連邦を呼んでいませんのよ!?」

マグライトはある文書を取り出した

それはセリーヌが見覚えのあるもの


「前クロス王が我等と契約した文書だ」


そう、クロスやラクールが後々他の星が存在することを知り

未開惑星だということを明らかにしたのがこのマグライト率いる連邦のエクスペル管理省

既にクロードが未開惑星保護条約を無視、そして色々と観賞した事によってエクスペルの存在が明らかになった

そこには豊富な資源が溢れ、他の星でもまれなエネルギー資源

エナジーストーンがある事を知り、エクスペルをめぐって連邦の間で内戦するほどのものであった

そこから選ばれたマグライト軍はクロス、そしてラクールに契約を交わし

エクスペル内の汚染物質を取り除き次第、連邦に加わるということを…

資源と共に連邦の技術を教えるということで承認した

二人の王はそれでエクスペルの人々が幸せに、苦労をしないで過ごしていけると信じて…


そこで結ばれた契約の中で、それまでクロスとラクールが危機にあった場合マグライト軍が援助、救援というものがある


「そして…王、女王が指揮を出来ない状態になった場合に限り

指揮権を全て私、マグライトに渡すというものだ」


セリーヌはたじろいだ

「私は…指揮が出来る状態にありますわよ…?」

マグライトは首を横に振り、その契約書をしまう

「特攻をせよという命令をだした時点で精神が異常なのだよ」

セリーヌがもう一度右手を構えた時点で…

「ぅッ…」

セリーヌはその場で意識を失い、マグライトに抱きかかえられた


「クロス王、女王共に指揮権を我等に託した

これからは我々に従ってもらう!

魔族がどれだけ愚かかは君達が一番知っている筈だ

その愚か者を私達が殲滅してさしあげよう!」



そう…それは恐怖以外のなんでもなかった



支配されてしまったのだ…クロスは…



人々は戦意を消失し、端に追いやられる



未知の武器、武装をし、城門を出て行く兵士達









ただただ…脅えた































---城門外、クロス平原---



魔族達は意識を失ったマーズの人々に手は出さず、ゆっくりとクロス城へ向かっていく

「他の星の者か…」

ジーネがそう言った瞬間




ブゥウウウウウウウンッ!!!!




そこに現れた人々

一人一人重装備をこなしている部隊もあれば、軽装でフェイズガンだけを所持している者達も存在した

魔族達は数では勝っていたが…

あまりにも…理不尽であった





『人ではないから…いくらでも殺戮をすることができるとは…ンフフ』

『気持ちの悪い生物達めが』

『ストレスが溜まってたから、憂さ晴らしになるか…?』

『やっと訓練が役に立つときがきたんだな』

軍の人々は目の前の魔族を一種族としてではなく、ただの汚染物質としてしか見ていない



「星の力を使う我等に勝てるとでも思っているのか?」



ジーネが前に出て声を張り上げる

それには威圧感が込められ、一瞬軍の人々が怯むが…

マグライトがジーネに向かって叫ぶ



「星など一発で破壊することなど…

我々にとっては容易い事だが?」



ジーネは無言で歩き出す

その一言などでジーネは察した

この者達は我等魔族を、魔族として見ず、ただ殲滅だけをする奴らなのだと…

元々容赦するつもりはないが…

そんな者達に殲滅させられるのは魔族としてのプライドが許さない

クロスの者達はこんな姑息な真似をする者達だったのだろうか…

ジーネは遠くに城門奥に見えるクロスの人々を見つけてしまった

この者達に脅えるクロスの人々、ジーネは体から熱を発し、炎をまとい始めた


「我々の誇りをかけた戦いに水を差すのなだな?」


マグライトは嘲笑しながら愉快そうに手を叩いていた


「誇り?モンスターのような容姿をしながらも心を持ち合わせ

誇りまで持っているというのか?笑わせてくれる

人間には結局勝てない」


そう言うとマグライトは後ろに下がり、その代わりに軽装の部隊が前に出た

そして後ろには重装備部隊


「一斉掃射」


ズドォオォオオンッ!!!!


ズガガガガガガガッ!!!





ズゴゴゴゴゴォッ!!!!!




一斉掃射と共に地響きが起こり、目の前に岩の巨人が現れ、地面が魔族と連邦の兵との間に岩の壁が出来上がる

一斉掃射された弾は全てその壁が受け止め、その間に一人の男が立っていた


「僕は…この星でそんな汚れた兵器を使ってもらいたくない」


ノエルがそこに立って、いつも笑顔の表情からは感じられない覇気が感じられた



*こめんと*


お互い誇りをかけて戦いました

マーズの人々の決死の紋章術もことごとく打ち消されてしまった…

それでも戦う事に迷いをなくしたクリスとセリーヌ、そしてそのクロスの人々

でも…連邦軍が全てを壊してしまった

誇りをかけた戦いから…

本当の『魔族殲滅』へ…

そこで現れるノエル

連邦軍と戦う事を決心したノエルは果たして…?



ということでー

本当頭痛くなる話ですね…

憎しみよりおちゃらけが大好きなんで途中で皆酒飲み大会にでもしようかななんて(おぃ


それでも、魔族は戦います

近代兵器で体をぼろぼろにされても戦い続けるでしょう

誇りを胸に…


次回をお楽しみに。


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