STAR OCEAN Sanctions of God







第九章 







第一部  


※注意:第一、二章 番外編を見ていないと分からない部分があります





---エクスペル ラクール新聞社---



「チサト君…今はノエル先生の取材を行っているようだが…

我がラクール新聞社は…

分かっているな?」

編集長がチサトを目線を低くした状態で見つめた

チサトは頷く

「私が…出向くんですね…クロスに」

編集長は頷いた

今のエクスペルは後々連邦の一部に入る

そう、プリシスが地球で開発したマナクリーナー

それによってソーサリーグローブ落下の際のエクスペルの汚染物質を

取り除き、星を安定した上で連邦に所属する事になっている

魔物のほとんどはゆっくりとだが正常に戻りつつあるのだが

その際、マナクリーナーの効き目が難しい魔族を一掃するという作戦がある

それは…このエクスペルの王国が連携して一掃する予定だが…

クロス王国だけは魔族と生存する事を望んでいた

その結果…



「先日、一人のアクマによってクロス王国自体は崩壊した様に見えたが、王と女王が指揮を取りながら再建している

ラクール王国は先日の魔族の襲撃と共に反撃と奇襲でラクール方面の魔族は一掃した

だが再建途中のクロスでは戦力が十分にいかず、勝手な魔族が攻めて来ても太刀打ちが難しくなっている

それも含め、クロスの心境も取材してきてもらいたい

なぜ、そこまでして魔族の肩を持つのかを…」

チサトは頷いた

「チサト、お前の情報能力と、この仕事に対しての意気込みは誰にも負けないだろう

命の危険にさらされるかもしれないが…

全てお前に任せる

分かっているな…このまま魔族を一掃出来ないでいると連邦が直接処理に来る事になっている

その前に私たちの星の事は私たちでどうにかして

今混乱している人々を安心させて、真実を知らせるんだ」

チサトは元気な笑みを浮かべると頭を下げた

「戦場を駆け抜けて命をかけてこの仕事をこなし…人々のためになれる…

これ以上の幸せはありません…

私の命が尽きようと得た情報だけは手放しません…!!

行って参ります!!」


編集長が凛とした表情で頷いた

























---ランガス山脈---

「なぜですの…?ジーネ…和解…出来ないのですの?」

ランガス山脈頂でジーネとセリーヌは話し合っていた

「まさか女王自ら来るとは…そこまでして我らと和解したいのか?

それにこの間クロス王国が潰れたように聞いたが?」

今までに和解書を兵に持たせ、ジーネに届ける筈だったのだが、

幾度もジーネの元に着く前に魔族に殺されてしまう

だから、セリーヌ自ら城からテレポートを数度に渡って使い、ジーネの前に現れたのであった

「確かにリヴァルというアクマに滅ぼされましたが、私クロス女王と王は無事ですわ

だから今復興作業中なんですの

そのさなかの魔族との争いだなんて…私らもどうしようもありませんの…

確かに戦力の影響もありますし、国民が恐怖と不安でいっぱいですのよ…」

ジーネが空を見つめた

周りにいる魔族は魔物とは違い、セリーヌの話しに聞き入っている

「もし…クロス王国が健在で、兵も十分にあったらラクール王国のように滅ぼすのではないのか?」

セリーヌはどこか寂しげに頷く

「私は魔族の全てが悪だとは思っていませんの…

人間同様誇りを持って生きている…

でも…私だけが判断して見過ごせる問題じゃありませんの…

だから脅威として滅ぼす事を選択する他ないんですのよ…」

女王…それは誰よりも国民の幸せを願う役柄

「私だけが魔族を理解していても、国民が理解していない限り無理な和解だとは分かっていますの…

でも…まず魔族と和平を結んで…ゆっくりと国民の理解を得ていかなくては…」


「セリーヌ…女王でなかったら…お前には何ができる」


セリーヌは顔を濁した

「個人で我らに味方した所で…お前は人間を裏切り、愛する人間に殺されるかもしれない…

そこまでしてお前が味方する義理はないはずだ

それに…今は和解案のせいでラクールともめていると聞いている」

セリーヌはため息をついた

どこまで彼からは知っているのだろうか…

「確かにラクールのほうにも和解を求めていたのですわ…

でも…ラクール側では魔族を殲滅した

それは、魔族が恐ろしい存在だから…

確かに私達に危害を加えるけれども…魔族にも親がいて、子供がいる…

私たちとなんら変わらないと思うんですの…」

周りにいた一人の魔族がセリーヌに問う

「なら、我らが和解したとしよう…

だが、我らはどうやって人間と一緒に生きるのだ?

人間はいつも上にいる存在だと過信している、

我らを下に置くのではないのか?

法律を全てこれから全て書き換えるつもりか?」

セリーヌは何も言えなくなってしまった…


「分かっているのであろう?

昔から我らは人間を襲い、人間はそれに抵抗してきていた

同じような知的生命体が、価値観などが違う種類で存在する事自体

元々和解など無理に等しいのだ」


セリーヌは唇を噛み締めた

「でも…私は…魔族にも…人間にも争ってもらいたくないんですの…」

魔族達は皆難しい顔をしていた

「我らも人間が何もしなければひっそりと生きていたいのだ

だが…ラクールの魔族が滅ぼされた事でこちら側の魔族も黙っていられない…

どうだ?もしラクールが滅ぼされて、クロス大陸の者は我らと和解したいと思うか…?」

セリーヌは首を横に振る

悔しそうな表情で周りを見渡した

「交渉…失敗…なんですのね…」

魔族たちは無言でセリーヌを見めていた

ジーネが呟く


「次に会った時は…敵だ…

我らは誇りをかけて全力で人間を滅ぼす

だから…躊躇なく…我らと戦え…女王」


セリーヌは頷く他なかった
















---リンガ---


「あなた…」

ボーマンは荷物をまとめてリンガの風景を見渡していた

「ニーネ…それにエリス…マリ…」

今の今までほとんどラクールの魔族殲滅作戦の医者、兵士として仕事をこなしてきて

やっと愛しい妻と娘達に会えた

でも…今度はクロスでの仕事を引き受けてしまったのだ

ニーネが元気に言ってくれる


「行ってらっしゃい」


ボーマンは頭をかきながら自宅の前で立ち止まる

「前の戦友の女王がお困りなんだとさ

ラクールのより行かなくちゃいけねぇ…

またしばらく帰ってこないかもしれないが…

まぁ、頑張ってくるわ」

エリスがボーマンの袖を引っ張った

「もう行っちゃだめ…パパ…」

ボーマンが少し寂しそうに笑みを零した

腰を低くしてエリスの頭に手をポンっと置いた

「パパはちゃんと帰ってくる」

それでもエリスは離そうとしない

「パパいつも無理するんだもん…!」

ボーマンはニーネに顔を向けた

ニーネは察してエリスの頭を撫でる

「パパはお仕事なの、それに知ってるでしょ?


パパは世界一強いパパなんだからって」


エリスはニーネの言葉で大きく頷いてほんのりと涙を零した


「帰ってきたら…いっぱいいっぱい遊ぼうね…パパ…!」


ボーマンはガッツポーズをして太陽のような笑みを浮かべるとリンガから姿を消していった



















---クロス王国---



「これで魔族殲滅作戦が確実に決定したわけか…」

クリス王がセリーヌからの報告を受けてうなだれていた

「申し訳ないんですの…私が…もっと…」

クリス王は首を横に振る

「いいや…セリーヌの意見は間違っていないと思う」

セリーヌがため息をつきながら手を交差させた

「でも、私が言いとどまったせいで戦闘準備が全く整ってないのでしょう?」

クリスは苦笑いで頭をかく

「まず前のリヴァルの襲撃で兵という兵を失ったからね…

それに今までラクールと対立してたせいであちらから兵が送られてくるのも限界があるだろうし…」

セリーヌは自己嫌悪に陥って、周りを見渡した

城は崩壊したままの状態でなんとか外壁を作り上げて、いくつか拠点を置いているだけ

人々も度重なる小さな魔族の軍に脅え、兵も傷ついている始末

この状態で魔族の群れが攻め込んで来たら…確実に負けるだろう

「負け戦って奴ですのかしらね…」

クリスが首を横に振る

「魔族が誇りをかけて攻め込んで来るんだ…こちらも本気で迎え撃つ

勝ち負けじゃない…お互いの誇りを掲げて戦うんだ」

セリーヌも微笑んで立ち上がった

「いくら程兵は集められそうですの?」

クリスは苦笑いしながら人差し指を立てた

「現時点では100人程」

セリーヌも苦笑いで肩を落とした

「確か…ラクール戦では魔族が2万

兵が4万と聞いていますのよ…?

それにこちらの魔族の軍勢には魔族王のジーネが指揮をとって…」

クリスが苦笑いから険しい表情に変わった

「しょうがないんだ…

まず、あんな瓦礫の町になったここをここまで再建出来たのもラクールのおかげ…

でも、そのラクールに反発して魔族と和解することを選んだせいで

物資が今までより相当減った…

対立してしまった町や村もある…

なんとか王にこちらに送ってくる兵も賛成派がなんとか取り繕ってくれたおかげ…」

セリーヌがまたしょんぼりし始めてしまった

「せ、セリーヌのせいじゃないよ!本当に僕は魔族と和平を結びたかった

異例だって言われたけど、誰かが動き出さないといけないんだ」

クリスの腕にしがみつくセリーヌ

ただうつむいたまま呟く

「でも…結局は戦う事になってしまいましたわ…」

クリスはまた振り出しに戻ってしまった

そう思いながらもセリーヌの手を握り締めた

「彼らにも家族や誇りがある

でも、みすみすやられるわけにもいかない…

両方を助けるのが無理のであるならば、片方を全力で守り抜く…

それを決めるのが王であってそれに納得して動くのが兵士や町の人々だ

だから…僕は心に誓う



絶対に勝ってエクスペルの人々を幸せにする」



セリーヌは苦笑しながらクリスに寄り添った

「王様らしいですわよ…クリス」

クリスは笑って星空を見上げた
























---クロス平原---




ノエルはクロス城へ向かいながら平原で一人星空を見上げていた

「星が…悲しんでます…

ソーサリーグローブで弱ってしまったこのエクスペルだけども…

母なる大地は…地上での平和を願っています…

この身が弱ろうと…平和であってもらいたい…

他の星と協定を結んで宇宙に飛び立ち…

便利な世の中になっていく事を望んでいるのは人間だけ…


母なる大地は地上のモノ全てが幸せで…仲良く生きてもらいたい…

そう…



願っているんです

















エクスペルは…ネーデとは違う筈だから…























*こめんと*


第二部の番外編、を見てからでないと、内容が少し分かり辛いかと思います

セリーヌはリヴァルと戦って城ごと崩壊した筈ですが、

セリーヌは意識をなくした後にも精神が反応し、テレポートを行って無事

王と王女だけでは何も出来ないのですが、ラクールの助けもあってなんとか今の状態に至ってます

ボーマンやチサト、ノエルも動き出しています

地球連邦、そして銀河連邦への加入

その際必要になる事…

魔物…魔族の殲滅

その中で魔族殲滅作戦の決行が決まったクロス王国

曖昧な判断は断じて許されない王

やっと決心したセリーヌではあったが…

ラクールが戦わず一緒に和平を結ぶ事を決めれば魔族は従ったでしょうか?

魔族を滅ぼす…

果たしてこの戦いは間違った戦いであるのか…?

お互いの誇りをかけた戦いが始まります…



ということでエクスペル編になりますー

やっとここまで書けた…そんな感じですかね

果たして…どう変わっていくのか…

こうご期待です



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