STAR OCEAN Sanctions of God







第八章 







第四部  





「僕が…軍を辞める…?」

クロードは自室を統括から支給してもらい、そこのベッドで寝転がっていた

「僕が…」

あの当時の僕は幼い頃から軍の教育を受けていた僕にとっては半身を捨てるようなもの、

それに僕はその後どうしていけばいいのだろう…?


僕が若くして少尉になれたのは

それは父さんの影響も大きい

期待をされた上で色々な任務につく事ができ、様々な経験をすることが出来たが

やはりどんなに頑張っても流石提督の息子としてしか見てくれなかった

僕はそんな周りの目が嫌でわざと成績を落としていた時期もある

そうすると、提督の息子なのに

そう言われてしまう

父さんは大きな壁だった…

そしてエクスペルの皆と出会い、十賢者を倒し、世界を救った

皆が、レナが…いたからここまで来れた…今でも僕はそう思っている

その後の惑星エディフィスでの出来事

リヴァルに引き寄せられ、僕らは一つの星を守った

その後といえば、プリシス達は研究に没頭し、僕とレナは軍に戻り

再び皆それぞれの生活に戻っていった

その後の僕といえば、今までの分を補うように、様々な任務をこなし

大きな事件をも解決へと導いた判断力や行動力が高く評価され

僕は少佐へと昇格した

十賢者によって殺された父さんがいなくてもここまでの偉業を僕は成し遂げた

皆は僕を個人の軍人としてみてくれるようになり、七光りという言葉も薄れていったのである

だから精一杯努力しようと思って僕は期待通りに任務をこなしていく


でも…ある任務の際僕は一度死にかけ、一人の少女を殺した



ウィン……


入り口のドアが開いた


「クロー…ド」







「…………」

クロードは黙って天井を見たまま

レナはずっと入り口の所で立ち尽くしていた





「私ね…クロードとちゃんとお話したいと思うの…真剣に」





クロードはレナを見ずに起き上がり、ベッドに腰掛けた


「何を?」

冷え切った言い方にレナは一歩引いてしまった

「なんで…私を突き放すの…?

喧嘩した時言い過ぎた…?

だったら謝るから…理由を教えてよ…」

忙しくて会えなかったのはしょうがないと思う、どこかクロードが遠慮していたのも分かる

でもこの任務前も今も本当にレナを拒むクロード

レナはその理由が知りたくしてしょうがなかった

「君が知る必要はない」

レナは肩を震わせて下を向いてうつむいてしまった

クロードはレナとは目線を向けずに

「君は軍をやめるんだろ?」

その態度にレナは少し悔しく思いながら頷く

「私達が軍を辞めて、このバンデーンでの出来事をなかったことにすれば…

私たちのバックにバンデーンが着いてくれる事になる…

そうすればエディフィスのマザーだって簡単に…」

クロードは無言で立ち上がる

「そしたら君はエクスペルに戻るといいよ」

レナは一瞬クロードも一緒にエクスペルに来てくれるのだと考えてしまったが…

「クロード…あなたは…?」

クロードは答えようとしない

レナは唇を噛み締めてクロードの両腕をレナの小さな手でギュッと掴む

「クロードは軍を辞めたらどうするのって聞いてるの!!」

クロードは目つきを変えてレナに叫ぶ


「君は軍に入ったのは最近で、簡単に辞められるかもしれないけど!!!

僕は…僕は軍という仕事事態が僕自身なんだ」


レナはそんなことは分かっているつもりでいる

私たちと旅をしたことで、その自分自身を確信に変えることが出来た

「あなたがどう言おうとクロードには軍を辞めてもらうの…!!」

クロードは拳を握りつぶす

「僕自身を否定するっていうのかい?

今まで積み上げてきた功績や信頼を捨てろっていうのか!?

君との約束を潰してまで費やした…時間を…!」

レナの眼差しは変わらない


「クロードはクロードでしょ!!?

軍を辞めようが、辞めまいが…私にとっては…


この世で一番大切なクロードなんだからッ!!!」



クロードはその言葉とレナの哀しそうな表情を見て鳥肌が立った

そう…いつでもレナは…僕という存在を知ってくれている…


「私だって…ネーデの時は本当に自分が数億年前のネーデ人だなんて知らなかった…

でも…クロード?

クロードも言ってくれたよね…?」


『レナはレナなんだから』


クロードはどこか懐かしく思いながらもレナを見据える

「軍をやめるのは…軍のクロードを捨てるということ…

確かにクロードはそうすれば行き場を失うし、自分を見失うかもしれない

でも…失った分は…私が埋めてあげる


私だけしか見れなくしてあげるんだからッ!!!」


言い慣れない台詞に真っ赤になりながらレナはクロードを見つめる

クロードの表情が少し穏やかになった

レナはそんなクロードの顔を見た瞬間に目を反らしてしまう

「ドキドキ…しちゃうよ…」

そんなレナを見てクロードはレナをゆっくり抱きしめる

柔らかく、心を落ち着かせてくれるレナの髪香り、その髪を梳かしながら撫でた

「こんなことしてもらうの…ひさしぶりだから…ドキドキが止まらないよ…クロード」

レナを愛しく想ってしまうクロード

クロードはもう、躊躇しなかった



「…ごめん…レナ」

レナはクロードの胸に収まって薄っすらと瞳を開け、笑みを零していた

「前は自分を見失っていたけど…今度は自分に自信を持ちすぎてしまった…

前より人々に期待されて…より自分を追い詰めてしまっていたんだと思う

でもね…レナ、今なら言うけど…

ずっと今までレナを思わなかった事はなかったんだよ…」

レナはクロードの大きな肩をキュッと抱きしめる

そのままレナは無言でクロードの胸に顔を擦り付けた

そんなレナを可愛らしく思いながらクロードは続ける

「僕はある時、地球内での内戦の中で指揮を取っていたんだ」

内戦、それは連邦軍と、それに反する町の人々が行った戦争

ちょっとした小競り合いの中で小さな戦争がおこってしまったのだ

町が集合した住民対連邦軍

その内戦にレナは参加していなかった

「もちろん連邦が圧勝した

民間の団体が勝てる筈がなかったんだ

でも…その中で…僕は数十人の子供たちに殺されかけた」

レナは驚きを隠せなかった

聞いたことがなかったのだ…そんな話

確か撃たれたのは違う人だって…

「刑務所に輸送しようとした時に僕に向かってタイミングを見計らってか、一気に銃を乱射されたんだ」

それも聞いていない

レナはどんどんとクロードを抱きしめる手に力が入る

「僕は体中に弾をくらって、重傷だった

そしたら…一人の少女の頭に当たって無残な姿になった…

そしたらその母と町の人々が僕にこう言った


人殺し…と」


レナは想像もしたくなかった

「僕は任務遂行のために尽くしていたつもりだったけど…

人を殺した

反逆して、緊急の際は民間人を撃ってもいいんだ

でも僕は一人の子供を殺し、町の人々を哀しませた

自分の手で無実の子を殺してしまったことは初めてで…僕はそのまま放心状態に陥ってしまった」

レナは確かにクロードが長引いた調査報告書をまとめるために一ヶ月程仕事から戻れないというのは聞いていた

ちょうどその頃から私自身の休暇が増えたり…色々と疑問が残る部分がやっと繋がる

その間…クロードは…

クロードは徐に服を脱ぎ始めた

レナはあわあわしながらクロードの胸を見る

「手術したけど…弾丸の痕…残ってるんだ」

太ももや胸など薄っすら残っているものや…大きく残っている物があった

「だから…海の時も…脱がなかったの…?

私と…一緒に居るときも…?」

クロードは頷く

「見せたくなかった…心配かけたくなくて」

レナはどうしようもない感情に押しつぶされそうになりながらも、クロードの胸板の傷をそっと触る

ぞっとした

レナはその胸に顔をうずめる

クロードは話を続けた

「その内戦は連邦の勝手な土地の押収をしようとして、その土地内の町の人々が反逆したんだ

理不尽だと思いながらも僕は任務を遂行していた

任務の為として強行した僕の決断は子供を一人殺したことにより

全てを否定され…民間の正義と連邦の正義を突きつけられた…

僕は正義だと思っていた連邦の行いが正義に思えなくなって、軍医のカウンセリングを受けたんだ…


『相手の正義を正義だと思わないこと、自分の正義だけを信じて、

そうしないとあなたは軍人としてやっていけない』


確かに相手の正義と自分の正義が同じだとは言い切れない

両立した中で軍に忠実に従える筈はなかった」

レナが不意に顔を上げる

「ねぇクロード…?クロードは軍人には向いていなかったんじゃないかな?

クロードは凄い正義感があって、責任感がある

んーん、ありすぎる、優しすぎるの」

クロードは唖然とした表情で答える

「分かっていたけど…僕が僕であるためには…軍しかないと思ったから…」

レナはクロードの両手を小さな手で掴む


「私が…いるわ」


クロードはレナの肩を抱く

「だからなんだ…君を失いたくない…

悲しませたくない…

あの後…僕は数度に渡って民間団体にまた襲われた

言ってたんだ

『お前のような冷酷な軍人がいるから民間人がこんな苦しい想いをしなくちゃいけないんだ!!!

いつかお前の大切な物も!お前も皆殺しにしてやる!!!私たちの苦しみを思い知れ!!』

って

表は何も報道していなかったけど、外に出る時は僕は結構なボディーガードに囲まれていた」

レナは一気にクロードの考えている事が分かり始めた

数度となく仕事で約束は破られたけど…

一番印象に残っている…一番落ち込んでしまったときの事を思い出す


「だから…私と極力…会わなかったの…?」


クロードはこの話を言いたくなかったのだろう、そんな何か申し訳ない表情で目を反らした

「他の任務に関しても僕に回ってくるのは生死を分ける任務ばかり…

いつ死ぬか分からない、軍人なら戦で死ぬのが性分だって言われるけど…

レナが…心配で…しょうがなくて…

覚えているかな…あの寒空の日…久しぶりに会えるっていう時に…

ちょうど僕は民間の敵対勢力に襲われて入院したんだ…」

レナは思い出す…普通なら連絡をくれるクロードがずっと連絡もくれずにいた日の事を…

「あの時…仕事じゃなかったの…?危ない目にあっていたの…?なのに…私は…」

クロードが焦りながらレナをきつく抱きしめる

「その時僕は、レナに嫌いになってもらおうと思って…」

レナは笑えてきた

その分目から大粒の涙があふれ出る


「馬鹿…馬鹿だよ…クロードは…

私たちどれだけ一緒にいると思ってるの…」


クロードは予想以上のレナの反応に戸惑いながら…

「でも、このエディフィスの任務は皆いるから安心して任務に取り組めた

最低限指揮官としてしっかりしておかないと思って…」

レナは肩を震わせながら笑う

「そんな罪を…クロードは私に言えないで…一人で抱え込んでたんでしょ…?

喧嘩した時は…私がクロードが仕事しか考えてないって…言ったから…怒ったんでしょ?」

クロードは申し訳なさそうに頷く

レナは自分を情けなく思いながら…叫んだ


「ばかぁあッ!!私に言ってよ!!一人で…抱えこまないでよぉ…!」



クロードはレナの事のことばかり考えていた…

そしてレナも…クロードを常に考えていた…

クロードは本当に申し訳なさそうにレナをギュッと抱きしめる

「言ってくれれば私…我慢したもん…我慢…できたんだから…」

クロードがレナの頭を優しく撫でてくれた

「心配かけたくなかったから…」

あぁ…僕の足りない分を…レナは補ってくれる…レナは僕自身の半身なんだなって…

そう思えた

「クロードぉ…」

レナはそのままの勢いでクロードをベッドに押し倒し、唇を奪い続けた

「ふぁぅ…んんッ…くろーどぉー…あいしてるよぉ…」

クロードは負けじと今まで愛せなかった分、レナを愛しつくした






「ねぇ…覚えている…?出会ったときの事…」

レナがクロードと肌を触れ合わせながら呟く

クロードはレナの顔をジッと見つめながら笑う

「レナが魔物を倒した時?」

レナが倒していないッって言いながらクロードの首を抱きしめる

「私が魔物に襲われている時に助けてくれて、勇者様だって勘違いした時の事…

私…ね

今でもクロードの事を勇者だと思ってるの」

クロードは首を傾げながら笑う

「おとぎ話に僕は出てこないよ…?」

レナは首を横に振る

「勇者って、勇ましい人って事だよね…だったら私はクロードを勇者だって思えるし

クロードっていう勇者がいなかったら今の私やエクスペルはなかったと思うの」

クロードは苦笑いしながら天井を見上げてみる

「僕は勇者って呼べるほど強くはないし、やっぱり何が本当の勇気ってのを知らないんだ」

レナは首を横に振る


「それでも…クロードは私の勇者様」



微笑むレナにクロードは胸が高鳴るのを感じながらレナと仮眠を取った







「決心が…ついたようだな」

統括が二人の服装を見て頷く

軍服を捨て、二人はバンデーンの支給用服を着込んでいた

「君たちはこれからは一応バンデーン兵としてエディフィスへ向かう

個人でどうたらこうたらよりかはかってがいいと思う

最終指揮は私が下すが、その他の指揮はお前に任せる

それと、エディフィスにつくまでには報告書を完成させておくが

完成させたら後はクロード、お前が自分の意思で軍に伝えるのだ、いいな」

クロードは頷く

周りが見慣れないバンデーン兵ばかり、いままで敵だった者達と共同で作戦を行う

違和感を感じるが、クロードは確実な自信を持っていた


「予定通り、目的地はエディフィス、皆宜しく頼む」


統括の掛け声で皆が動き出した


クロードはレナの隣に立つと無限な宇宙を見つめた



「僕は軍を辞めようと、どんな事があろうと、

絶対にマザーエディフィスの進行を止めてみせる…!」


レナはクロードに寄り添い、微笑んだ







*こめんと*


クロレナだから気合入れていかないと!

と思いながらもうーん、な感じですかね

いや、色々とごちゃごちゃさせるとあれなんでゆっくりと

クロードは我を取り戻して、理由を説明

流石に相手を愛しすぎると心配しすぎてしまうものですね

やっとクロードと、レナのわだかまりが解け、すっきりした感じになりました

いよいよ、次はエディフィスでしょうか…?


次回をお楽しみにー。

皆さんそろそろ話しの展開読めてきてますかね?

工夫して頑張らねば!


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