STAR OCEAN Sanctions of God







第八章 







第三部  







ヴァルンティスはどこか一歩退いて笑い始める

「何を言うと思えば…寂しい…?何がだ?」

クロードは何も言わなかった

心に流れてくる仲間たちとの記憶…


「ヴァルンティス…お前は…力を無くしたら何が残る?

力で押し固めただけの部下が言う事を聞くと思うか?」


ヴァルンティスは悠々と言い放つ


「力を無くしたら私は志だけが残る」


クロードはただ呆然とヴァルンティスを見つめていた

「志…?」

ヴァルンティスはそれ以上何も喋ろうとはしなかった


「さて…これでお前の処分は決まったな」


違う声が闘技場に響く

クロードはそちらの方向を見つめた

そこにはヴァルンティスを狼に例えるのなら、だんまりとしながらその空間を支配するような龍がそこに立っていた

隣には兵士に挟まれて拘束された…


レナッ!!!


レナがクロードを見ると少しだけ笑顔になって、前に出ようとするがバンデーン兵が押しとめる

そこにいる一際違うオーラを放つバンデーン

「元帥…!なぜここに…」

ヴァルンティスがそのバンデーンを見て態勢を低くした

その瞬間にクロードは実感する

このバンデーンが…


バンデーン全てを統括する者だと


その場が静まりかえり、威厳を放つバンデーンのディブル元帥がクロードを睨みつける

「貴様か、海賊などに捕われた軍人は」

クロードはどこか悔しい気持ちになりながらも頷く

「なぜ…この女性…軍医らしいが…

ここにいると思う…」

レナがクロードを不安と恐怖で脅える姿で見つめる、今にも泣いてしまいそうな脅えた表情

クロードは拳を握り締める


「助けに…来てくれたのか…」


心が締め付けられる気持ちでレナを見つめる

愛しく想ってしまう…

だが


「どうして来たんだ」


レナが一瞬、真っ白になったような表情をした後、うつむいてしまった

ヴァルンティスが嘲笑する

「ずいぶんとお前は矛盾した奴だな

仲間を大切にするようなふうに言っていなかったか?」

クロードは無言

ディブル元帥は無表情でヴァルンティスを見下す

「情報が正しければお前は強力な力を手に入れて…

私を蹴落としてバンデーンをディブル元帥したがっているらしいな

私は敵艦及び、民間機の観察とだけ言っておいたはずだが

その確認に来たのだが…」

ヴァルンティスは頭が上がらなかった

下の者にはその事を機密にするよう命じたはずではあったが、いずれ矛盾点が出てばれると思っていた

クロードはハッとした…

バンデーンがその力を求めているわけではなく…

ヴァルンティスの海賊を使った、個人行動に過ぎなかったということ

ヴァルンティスはもう、どうしようもないような表情になり、立ち上がった

「私は神をも超える力を得てこの宇宙を支配する…!」


「波動…い…」


これ以上はディブル元帥を殺るしかない

そう思ったのだろうが、いつのまにか放とうとした右手がディブル元帥によって捕まれていた

ディブル元帥がヴァルンティスを睨みつける、ヴァルンティスは悪寒を感じた

「確かにお前は頭が冴えて、戦闘力も申し分ない

だが…


お前に戦闘兵を、一統括できる指揮官止まりだ

なぜか分かるか?」


ヴァルンティスはこれ以上にない程悔しそうな顔で床を叩いて歯を食いしばった

「私に足りないものなどない」

ディブル元帥は無表情でヴァルンティスが気が付く前に首を掴み上げ、上に持ち上げられていた

「かはッ」

ディブル元帥は絞めている手に力を込める


「足りないもの…それは

足りないものを知ることだ」


ヴァルンティスは意味が分からない様子で腕や足に力を入れようとするが、ディブル元帥の瞳を見た途端に動けなくなってしまった


「自分を知り、相手を思い、そして世界を知る、

そして、責任を全て背負い一直線にバンデーンの未来を見つめる

それが今の私の立場だ

宇宙などお前が支配できるようなものではない

ましてやこのバンデーンも」


「私を殺そうと考えた事、私に偽造して部下たちを動かした事、無断で捕虜の処分を偽造し、殺し続けた事…分かっているな?」

ヴァルンティスは立ち上がって手を差し出した

「覚悟はしていました…」

レナについていた兵士が前に出てヴァルンティスを拘束しようとした瞬間


「クロードよ…大切な仲間を奪われるのはそんなに辛いものなのか?」


クロード一瞬首を傾げるが、ハッと気が付く

ヴァルンティスが兵士から銃を奪い取り、レナに向けて乱射した


「レナ…!」


「えッ…」


ズガガガガガガガガガガッ!!!!


「………」

レナはゆっくりと瞳を開けた

「当たって…ない?」

レナには一発も当たらずに、ディブル元帥が全て手で受け止め、地面に落としていく

「無断で捕虜を殺そうとした…また罪を重ねたな

処分は楽しみに待っているがいい」

ドゥ

「かはッ」

そう言った途端にヴァルンティスはディブル元帥の見えない波動で体をびくつかせて気絶させる

「連れて行け」

いつの間にかバンデーン兵が周りを囲い、敬礼をしていた

「はっ」

数名のバンデーン兵がヴァルンティスを連行していく




「すまないな、ゆうずの聞かない奴が申し訳ないことをした」

クロードは驚いていた

てっきりヴァルンティスのような冷酷な人だと思っていたが、相当理解のある人だった

「あなたのような人がなぜ連邦に歯向くのですか?」

クロードは少し焦りを見せながらディブル元帥に語りかける

ディブル元帥はどこか穏やかにクロードに歩み寄る

「私は心の底から連邦が嫌いというわけではない

良い部分も重々理解しているつもりだ

だが…連邦で納得のいかない部分が多いのだよ」

クロードはディブル元帥と目を合わせる事が出来なかった

確かに銀河連邦は連邦の規模拡大、そして宇宙の星と星との交流の幅を大きくしている

だが…表では良いように見せながら支配を行っている連邦部も存在し、

種族間での値打ちをつけ、人身売買を行っている人々の裏には連邦が関わっているという事実も聞いた事がある

銀河の区域で行っている戦争での武装、戦艦などの売買、そして引き金になっているのも連邦

裏を見れば限りのない連邦の悪

クロードはただただ立ち尽くす

「だが、全て連邦が悪いと思っているわけではないのだ

それに、連邦を潰そうとまでは我々は思っていない

ただ…今の連邦のあり方に納得がいかないだけだ」

クロードは一気にバンデーンの見方が変わった

バンデーンをこんな人が仕切っているのだ…

どこか連邦の軍として恥ずかしくなってしまった

「だが、分かっているな」

ディブル元帥の瞳が虎の様な瞳に変わる

クロードは立場を今一度理解した

「民間人ならなんとか条件付で見逃す事が出来たが…

君らは連邦の軍人だ

どんなに君を信用しようとも、我々のことを知ってしまった以上

軍と接触させるわけにはいかない」

クロードは息を飲む

「牢獄…ですか」

ディブル元帥は首を横に振る

「確か君は面白い事に地球を追い出されてまである任務についているらしいな?」

クロードは大きく頷く

「確か宇宙の危機を救う任務と言ったな?」

クロードは詳しく説明をした






「その内容、信用していいのだな?

既に他の星が巨大なその、アポトロディウスという悪魔に大打撃を受けたのは聞いている

その事実が本当なら、この宇宙の全ての星の文明を滅ぼすということだな?」

クロードは頷く

「あまりにもスケールがでかいので、連邦の方はあまり相手にしてくれませんでした…

ですが、ここで嘘の任務を言ったところで何か変わるとも言えません

でも…邪魔をするのでしたら…全力であなた方を殲滅します」

ディブル元帥はクロードの瞳をジッと見つめる


「私は連邦に不信感を抱いているだけだ

むしろ、我らの宇宙が危機だと言うのなら…

条件付で手伝おう」


クロードは一瞬耳を疑った

「バンデーン一組織がですか…?」

ディブル元帥は周りのバンデーン兵に問いかける


「皆、我らの愛する宇宙が好きだなッ?」


バンデーンが歓声を上げた

クロードは一瞬にして回りが全て味方になった気分になり、心が踊った

「まず、星々を破壊しながら君らを殲滅する

エディフィスのマザーコンピューターはあまりにも連邦以上に脅威だ

その調査と破壊をたった君達を含め数人でこなし、でなければ地球追放というのだから本当に連邦は呆れる」

ディブル元帥はクロードの肩に手を乗せた

「よろしいんですか…?バンデーンとして色々な問題が出てくるのでは?」

ディブル元帥は頷く

「その通りだ、連邦と小さな小競り合いで支障が出るかもしれんな

だが、我々は元より連邦に不信感を抱く者たち、すなわち人々の為に動いてきた

なら、宇宙に住む全ての者を救えるなら我らはそちらに加わりたいのだ」

クロードは一気に込み上げてくるディブル元帥の意思に心奪われていた

「本当にありがたく思います…!」

大きく頭を下げるクロード

そして問う

「条件というのは…なんでしょうか」

ディブル元帥が頷く


「我らが動けば周りの反連邦がバンデーンが連邦と手を組んだと思われてしまうのだ

そこで、任務の調査で以上なしを報告し、

君とそこの女性には軍を辞めてもらう」


クロードは立ち尽くす

確かにこのまま牢獄入りか死刑で軍とは関わりがなくなってしまうとは思っていたが…

軍を辞める…?

「と言いますと?」

ディブル元帥は背を向けた


「君らは私たちを知ってしまった、だから軍との接触を絶つというのもあるが

それでも他の仲間がこの任務が引き続き行うという事がまずい

そこに我らが加わるとなると先ほど言ったように連邦の任務に反連邦がいるというのは分が悪すぎる

だから任務を成功という形にした後、軍を辞めてもらい一般人として

君らはエディフィスの任務を、自らの意思で行ってもらう

そこに我らが加わる場合は問題が発生する事はない

連邦の物資が途絶えると思うが、我らが全力でサポートする」


クロードは未だに戸惑いながら喋りだす

「連邦を納得させられる情報、調査が今すぐはできませんが…

せめて、エディフィスの圏内にでも入らない限り…」

ディブル元帥は分かっているように頷く

「大丈夫だ、既に一度蒼く美しい星としてエディフィスの調査を行った資料がある

それを元に少し偽造して、連邦の納得のいく報告書を作成をしておこう」

クロードは頭を下げるが凝視する


「ですが…あまりにも…私達に甘くありませんか?

そこまでして私たちと共にエディフィスのマザーを破壊する理由はあるのですか?」


ディブル元帥は目を細める


「私は地球を追放されてまでエディフィスという星

そして宇宙を守ろうとする人を見たことがないのだ

ただ犬のように働き、動き堕落する人々、そんな者は凡人以上にはなれん

我らはただ連邦と小競り合いをするだけの種族ではない、

バンデーンでも宇宙を救えるという実感を持ちたい

これは我らバンデーンを活気付けるというものもある

そして誇りを持ってこの宇宙を救うという理念を抱いてもらいのだよ

未来のバンデーンにも」


ディブル元帥の考えには本当に驚かされた

クロードはただ呆然としているが、首を横に振る

「すいません、あなた方の志は伝わったんですが…

少し…お時間をもらえませんか…軍を辞める決心がつかないんです…」




クロードは開放されたレナを見る事無く立ち去った




*こめんと*


本当に必要なものとは何か

それは定まっているものもあれば個々でそれぞれ違う

バンデーンのディブル元帥はバンデーンに誇りと、希望を、そして夢を

知的生命体だからこそ争いはするし、その大きな組織のやり方に準じる事ができなければ周りから批判を受ける

でも、それはその人なりの意思

その人個人が掲げる志

クロードはそれをしっかりと受け止める事は出来た…

でも軍を辞めるということは…自分の半身を捨てるようなもの

バンデーンが全面協力してくれると言ってもクロードは悩む

今までの信頼や期待を全て捨てて自分を保てるか…

さぁ…クロードはこの状況をどうしていくか…


ということで次回をお楽しみに!



と、まぁ、書いていて色々考えてしまいました

力が全てー!と全面的に言い放っている人はあまりいませんが、一つの考え方に縛られていませんか?

昔は一つの事を固定して考えるのは病気だと言われたそうです(心を無にして、気を散らさない為の侍の考えですが

まぁ、臨機応変というこですね。

今の世界もそうですが、表もあれば裏もあります

それに批判している人もいるわけで…まぁ…んーですね;

次回の方が考えそうですが…

うーん…それでは!!!


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