STAR OCEAN Sanctions of God







第八章 







第二部  









---小型宇宙船内---




「クロードったらねぇ!私がもう好きじゃないなんて言うのよ!?あったまきちゃう!!!

私がこっちから願い下げですぉー!!!」

レナは泥酔していた

アシュトンが苦笑いで隣でお酒を注いでいた

「うわぁあああああんッ!!!!クロード大好きぃいいッ!!会いたいよぉーーー!!!!」

強弱の激しいレナにアシュトンは苦笑いするしかなかった

今まであまりお酒を飲まないレナが、ここまで飲んだ原因というのも…


「お酒…かぁ…なんか飲んでみようかな…」

飲料系が後、水かお酒しか残っていない状態でレナは飲んでいるうちにクロードの想いをぶつけてきたのだった


アシュトンはやはり隣でただただ苦笑い

「私ね…本当はクロードにもう軍をやめて欲しかったの…」

それは以外だった、レナは軍に戻って自分の居場所を取り戻してもらいたいと言っていた気がした

レナはグラスを両手でギュッと握りながら唇を噛み締める

「確かに七光りなんて言われてもくじけずにクロードは頑張って任務をこなしてる…

でも…クロードは人一倍正義感があって責任感があるから…色々なものを背負い過ぎちゃう…

だから時々会う時は本当にクロードの重荷を下ろせればいいなって…」

ゆっくりとレナはアシュトンに寄りかかる

「れ、レナ…?」

レナはアシュトンの服をギュッと握り締めて瞳を潤ませる

「それでもね…いつの日かどんなに私が会おうと言っても会ってくれなくなった…

任務で一緒になっても指揮官としてしか私に声をかけない…」

アシュトンは複雑な心境でレナの小さな肩を抱きしめる

「それで、私クロードが私に愛想をつかして任務のほうをとったのかなって…おも…って…ッ

毎日…毎日…私は自分を痛みつけた…の…あんなに苦しいの初めてでッ…

今なんか…もっと…もっと…不安で…押しつぶされそうで…」

アシュトンはただただレナの頭を撫でた

ふとプリシスを思い出す

「エディフィスの戦いが終わってから、プリシスもいつの日か僕に連絡をくれなくなったんだ

どうしてだと思う?」

レナは首を小さく横に振る

「自分一人で頑張りたかったんだってさ

僕を頼ればいいのに…自分で押さえこんでプリシスからは連絡してこなくなっちゃたんだ

だから、多分クロードも何かレナに迷惑をかけたくない理由があったんだよ」

レナは分からないと呟く

「その時のアシュトンは…?」

レナはじっとアシュトンを見上げる

「……辛かった」

レナはぐっと自分の胸を押さえつける

「恋人になる前はそんなじゃなかった…

プリシスが僕にどれだけ迷惑かけてもニコニコ笑いながらお礼を言ってくれた…

それだけでいいのに…

時間が立つに連れて連絡をあまりしなくなってきた…

だから…こんな頼りがいのない性格の僕だから…

飽きちゃったのかなって…不安に思ったんだ」

レナは頷きながら涙を流していた…


「でも、大好きだもん…

しょうがないんだよ…

お互い、大好きな程迷惑かけたくないって…思うんだよ

不安にならなくてもいいよって言われても大好きだから常に不安になっちゃう…」


アシュトンは安堵の息を付く

「なら、クロードに分からせなくちゃ駄目なんじゃないの?

迷惑じゃないよって

不安にならなくていいよって」

レナはどこか落ち着いた様子でアシュトンを見つめる

「そうだね…落ち着いて…ちゃんと話し合わないとね…

クロードの詰め込んでる事聞いてあげないと…」



ブゥウン…



「アシュ…トン?アシュトン?アシュトン!?」

レナの前で一瞬で消えたアシュトン

何が何だか分からずにレナは必死に辺りを見渡した…

消えてしまった…?



独り…独り…?


独り











---惑星???---





「おい、またあの指揮官が戦うらしいぞ?」

バンデーン兵の待合室で一人のバンデーン兵が駆け出してきた

「どうせまた捕虜がやられるんだろう?」

新聞片手にバンデーン兵が呟く

「いや、今回は銀河連邦で英雄って慕われてた奴らしいぞ?」

「そりゃすげぇな」

「うし、行くか」

そう聞くと兵達は興味津々で走って行った




---模擬練習場---


戦うには十分のスペースの練習場

ここがバンデーンの射撃訓練や、組み手などを行っている場所なのだろうか

クロードは銀河連邦とはまた違う機械構造に目を奪われる

バンデーン自体が謎の存在なのに、ここまで見せるということはやはり帰す気がないのだろう


「お前の所持していたのはこの剣でいいな?」

ヴァルンティスが剣を放り投げる

ぱしッと受け取ると、クロードは剣を確認する

「あぁ」

周りが騒ぎ出した

ここまで多いバンデーン兵に囲まれていると物凄いプレッシャーがかかる

敵の中でここまで囲まれて戦うのは久しぶりであった

「これからお前の生と死をかけた戦いを行うわけだが…

何か言いたいことはあるか?」

クロードは剣を出して構える

どこか曇った表情で答えた

「……ない」

ヴァルンティスがクロードを睨みつける

「嘘をつくのが下手のようだな…?

そのような状態で私に勝てるとでも思っているのか?」

クロードは黙ったまま

周りの兵達がブーイングする中、ヴァルンティスが構える

拳のまま…?

クロードは少し疑問に思った

バンデーンなら機銃系を持ち込んでこちらを圧倒させると思っていたが

「どうして拳なんだ?」

ヴァルンティスは嘲笑した

「我々は元々拳なのだ

だが、連邦軍と戦うとなると不利な部分が多くてな

この拳を使えるのはもう限られた者だけだ

弾数など気にせず敵をいっそうできるからな…」

クロードはあまりにもバンデーンの事を知らな過ぎた

そう、相手は…


バンデーンなのだ



本気の目つきになったクロードを見て、ヴァルンティスは同様に真剣な表情になった

同時に動く

クロードはヴァルンティスに向かって一直線に突っ込んで行く

ヴァルンティスは一歩踏み出して右手を構えていた

クロードは気孔を予測して防御態勢に入るが…



波動…壱ッ




ズゴォオオオオオオンッッ!!!!



風というべき領域ではない気の塊がフィールド一帯を吹き飛ばした

予想以上の攻撃にクロードは剣で防ぐ以前に剣が吹き飛び、自らも吹き飛ばされ遠くの壁に叩きつけられて地面に落ちた

現状体でどこか骨が折れているのは確かである

クロードは左わき腹を押さえながら打撲だらけになった体に鞭を打って立ち上がった

「つまらぬな」

見下したようにヴァルンティスが近づいてくる

「これぐらいなら避けてくれると期待していたのだが…今までの捕虜とほとんど変わらないな?

だが、今のを直撃して立ち上がった奴は久しぶりに見た」

カツカツと音を立てて近づくヴァルンティスにクロードは息を荒くして拳を握り締めて構える

「ほう?まだやると?圧倒的な力に脅えないのか?」

クロードの目には何かが燃え始めていた

死と隣合わせになって思い出す想い


波動…弐ッ


ズドォオオオンッッ!!


両拳を叩きつけた途端にヴァルンティスの周りが円を描きながら物凄い波動で吹き飛んでいく


「気の上をいく奥義…」

クロードは右拳を突き出した状態で立っていた

拳は血まみれである

「ほう…打ち消す事ができたか」

クロードが少しよろめいているのが見えるが、十分に関心していた

「最初にこの奥義を説明してから勝負したほうが面白かったようだな

だが、この程度ではまだまだ私には勝てぬぞ?触れる事さえ出来ぬかもな」

ヴァルンティスは拳を握り締める

「この奥義は一発一発が一撃必殺だ、それを何発も防ぐ事もできまい

元々お前には無理な戦いだったのだ」


波動…壱ッ


ズガァアアアアンッッ!!


「くぅッ!!!」

クロードは構えの態勢から両手を突き出し、気を高めたが…

波動弐よりも圧倒的な物量と威力の波動壱は防ぎきれずに床を転がっていった


「弱い…実に弱い…

英雄だとか言ったか?

それがこの程度なら連邦も大した事がないな

それともその英雄という言葉に溺れたか?」


クロードは歯を食いしばる

地面に手を付いて上半身を起こした


「お前になにが分かる…!!!」


ヴァルンティスは首を傾げる


「お前に僕のなにが分かるっていうんだ…!!!」


目つきが変わったクロードにヴァルンティスはもう一度拳を突き出す



波動…壱ッ


ズガァアアアアンッッ!!


「ぐぅあ」

クロードは地面で這い蹲っていたが、また遠くの壁に叩きつけられた


「分かる、分からないも何も…

お前は本当は弱くてどうしようもない奴で

たまたまだったのだろう?英雄の名がついたのも」


ヴァルンティスは近づいてきてクロードの背中を踏みつける

クロードは拳を握り締めて顔を動かす、既に全身打撲で骨が数箇所折れていた


「確かに…僕は弱い…、今でも弱いと思っている…


英雄になれたのも偶然だと思ってる…


でも…


僕が今ここにいるのも、英雄と言われるような軍人になれたのも…



仲間達のおかげだッ!!!」




ヴァルンティスはどこか苛ついた様子で踏みつける足に力を加える


「なんだ?格好つけたつもりか?

仲間?くだらない…

信用出来るのは自分だけだ

弱いのに自分の身も守れない…

そんな仲間に守られてきたんだろう?

情けない

一人では何もできない…

弱者というのはお前のような奴の事を言うんだよ」


ヴァルンティスが叫ぶと同時に気が緩んだ隙を見てクロードがヴァルンティスの顎に蹴りを入れた

「ぐふッ…」


態勢を立て直したが、足を引きずるクロード

だが、クロードの目の闘志は消えていなかった

そして言い放つ

「お前はなんのために拳を振るっている?」


ヴァルンティスが誇らしげに答える


「力で周りの者を蹴散らして、従わせるためだ

力の前では誰もが屈服するしかない…

力に勝るモノなどこの世にはない」


周りの観衆が静かになった

クロードはどこか笑っている


「ここの銃を持たなくては何も出来ない馬鹿どものを従わせる為のな」



周りの観衆がどこか退いて、軽蔑の目線を向けているのが分かった


…昔のディアスと、ヴァンが混ざったような雰囲気に似ている…


でも、結局は…





「お前は寂しい奴なんだな」





ヴァルンティスは少しの間目を見開いていた






*こめんと*


レナやアシュトン達の心境が見え隠れしながら突如アシュトンが消えてしまった

一体今この宇宙で何が起きてしまっているのか…

そしてクロード対ヴァルンティス

互角に見えながらも圧倒的な力の差を見せつけられるクロード

だが、くじけなかった

徐々に思い出していく忘れかけていた思い


次回をお楽しみに。

なんか次回予告みたい…


というわけでどうだったでしょうか?

少し思い当たる部分はありましたでしょうか?

やっぱり体験談というか、経験をすればするほど小説というものは広まっていくものですね

私ごときがいうもんじゃありませんが;

それでは!

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