STAR OCEAN Sanctions of God







第八章 







第一部  





「アシュトン、食料は後何日分?」

レナが調理室に顔をひょいと出す

アシュトンが今日は当番で料理を担当していた

「後もって一週間かな」

レナがため息を付く

「ちょっととっさに出てきちゃったから燃料ももつか微妙な所だね…」

アシュトンが続けざまにため息を付いた



ここ数日程カルナスノヴァのレーダーを辿っているのだが、一向に追いつかないのだ

食料や燃料もハイダから片道分程を消費してしまっている

「やっぱりこんな小型船じゃ追いつけないのかな…」

アシュトンが料理の味見をしながら外を見つめる

レナは考えながら自室へ戻っていく

「こんな広大な宇宙を探そうとしたのが、間違いだったのかな…

でもレーダーの方は探知してるわけだし…」

枕に顔を伏してうーと唸ってみる

「クロード…会いたいよ…」









---牢獄---


「生け捕りにしたのはいいが…

こいつをどう使うんだかな?」

兵がクロードを牢獄越しに見入る

「といっても確か連邦の方の犬だろ?

さっさと殺しちまえばいいのに」

嘲笑しながら牢獄を過ぎていく兵士

クロードは片目だけ薄っすら開いて周りを見渡す

「ここは…

どこだ…」

何があったか把握が出来ないクロードは、深呼吸する

「いッ…」

よく見ると体中が傷だらけであちこちが痛くなっていた

「そうか…ハイダの崩壊の時に…」

爆発で崩れた瓦礫は間一髪で自動でクロードを防衛したカルナスノヴァによって助けられた

だが、助けた後は一人のロウズの隊員によって回収され、今に至る




ガチャンッ

「おうおう、金髪のあんちゃんよ

俺様が直接会いに来てやったんだから嬉しく思えよ」

ロウズの団長が威張りながらクロードを見据える

「こいつか…?」

また違った声が響く

クロードは少し聞き覚えのある声に体を起こす

「はいー、こいつなんですよーヴァルンティス様」

団長がよそよそしく頭を下げる相手

「あの時のバンデーン…」

そう、F・カルナスに攻撃を仕掛けてきたバンデーンの指揮官

そいつが目の前にいる

多分宇宙海賊の上で動き、いい様に使われているのがロウズのような宇宙海賊

宇宙海賊のバックにバンデーンがいるということで、解決する事件も数多く出てくるだろう

バンデーンが何故動いているかは前回聞いた、力を伸ばすために無限の力を手に入れようとしているということ

それが何かはあまり予想できないが、この世界に取って良い事とは到底思えない

そう感じただけでどのような事をされ、どんな事をされるのかある程度予想がついた

「僕を使って銀河連邦と交渉しようとするのは無駄だ」

ヴァルンティスが見下した表情で

「何故だ?」

クロードはヴァルンティスを睨みつける

「ならここで舌を噛み切る」

ヴァルンティスはあざ笑うかのように銃を突きつけてきた

「銀河連邦には本当がっかりさせられるよ

軍の犬ばっかりなのだな、そんなに軍が大事か?」

クロードは言い切る


「軍じゃない!!人々のためだ!!!」


呆れた表情で銃をクロードの頭に標準を合わせる

「綺麗事を言うのも軍の犬だからか?

我らの交渉に使われるくらいなら死ぬ?

では死んで見るか?」


ズギュンッ!!


引き金を引くと同時にクロードは数ミリ単位で手かせを上へ持ち上げジャストで弾が当たり、手かせが吹っ飛んだ

そして態勢を立て直す

「さすがだな

だが、私がもう少し威力を強くしていたら手が吹き飛ぶところだったぞ?」

感心しながら銃を団長に投げ捨てる

クロードは壁に張り付いて身を低くした

「発射口を見て威力を測った」

笑っているのか分からないがヴァルンティスは瞳を閉じて小刻みに動いていた

「面白いが、この牢からは出られんだろう?」

おっしゃる通りの現状

手かせはなくても牢に閉じ込められているのだ、逃げ場もない

クロードは少し苦笑いしながら答える

「その通りだ」

ヴァルンティスは団長達を退かせる


「交渉だ」


クロードは息を飲み、ヴァルンティスを睨みつける

「まずは、お前を使って銀河連邦を動かすという選択だが…」

クロードは眉間にしわを寄せる

「今僕は地球を追放中の身だ、使えても期待通りにいくとは思えないが…?」

ヴァルンティスは唖然としているのかその状態で考えている様子

「ロウズめ…役に立たない軍人を連れてくるとはな…

まぁいい、なら選択肢は一つ


処刑だ」


クロードは無表情でヴァルンティスを見やる

「だが、処刑だけ…というのも勿体無い

相当腕が立つそうだな?」

クロードは舌を噛み切る準備をしていた

「まず私と戦う時点で死刑より辛いと思うが

…もし…私と戦って…私を満足させて勝てたなら

逃がしてやろう」

クロードはどこか考えながら立ち上がる

「それはお前の趣味か…?」

ヴァルンティスは拳を出して握り締めると頷く

「私は元々戦う兵士だったのだ

だが、指揮官になるとつまらなくてな、だから強そうな捕虜は私と戦う事になる

そして捕虜は私と戦って殺されるのだ

血がほとばしるのが大好きなんだよ」



クロードは気付いていた

動き方や銃の構え方、それがどれを取っても指揮官というより戦闘兵

腕が立つのは確かだろう

性格的にも冷酷なのが伺える

「これを断った場合は…?」

ヴァルンティスが面白くなさそうにクロードを見つめる

「私は一応バンデーンの中でもトップクラスの戦闘兵、及び最高指揮官だぞ?

わざわざ出向いて交渉をしているのに

いずれバンデーンのトップに立つ私に歯向かうか?」

クロードは目を細める

「敵対勢力のトップだからといって僕は言う事を聞くわけがない

だが、戦って逃がしてくれるというのが信用できないのだが?」

ヴァルンティスが余裕そうに話す

「私が負けるということを考えていない」

そうだろうなとクロードは思っていた

自分に自信が持てるほどの実力の持ち主なのか、それともただの自信過剰か

どちらにせよクロードの選択肢は

戦うか

死ぬか

ここで潔く死んだほうが余計な情報が漏れずに僕の失態として扱われるだけ

戦って逃がしてくれるとも思えない

なら…









































『クロード…、久しぶりに会えたね…何ヶ月ぶりかな?』


どこかのビルの前での待ち合わせ


僕は惑星探査を行い、その間レナは戦闘地域で軍医をこなす


久しぶりに見るレナの笑顔、僕はこれが本当に心の拠り所だと思えた


『うーん?4ヶ月?でも会えて嬉しいよ』


『くろーどぉ〜!』


レナが飛びついてくる


勢い余って僕はそのまま倒れこんだ










温かかった









その時何故か僕は目頭が熱くなるのを感じた








雪が降り出したようで、レナは立ち上がって僕に手を差し伸べる













『ほら、行こうクロード!』








何故か不思議に思った





いつも軍の中では僕は上に立って指揮を取る、任務に忠実で威厳のある指揮官として











上にいるからこそ気を緩めてはいけないし、冷酷でなくてはいけないし、正義感と責任感が問われる










だけど…










やはりレナは僕を僕として見てくれる唯一の存在だった―――











































「レナ…」

ヴァルンティスが無表情で察した

「心残りがあるようだな?

なら、逃げ帰った方がいいんじゃないのか?」

クロードは一時的に頭を真っ白にしてヴェンルンティスに返事をする

「僕にはまだ任務が残っているんだ、ここで死ぬわけにはいかない」

ヴァルンティスは目を細め、どこか面白くなさそうにクロードを見つめた






*こめんと*


やっとレナとアシュトン達の話しになりました

多分この話でまた何か大きく変わっていくと思います

クロードがやはり胸に秘めている物は大きく

昔とは違う何かを心で引っ掛け、何かを置いてきてしまったのかもしれません

レナは自分が自分でいられる場所、そんなレナをどうして突き放していたのか…


真相はいかに



多分このスターオーシャン サンクションズオブゴッドはまだまだ

長いお話だとは思いますが、もう少しこの長編小説にお付き合い下さいませ。

ではでは、次回をお楽しみに。




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