STAR OCEAN Sanctions of God







第七章 






第四部




次の日


---惑星ストロン スペースベース区裁判所---


そこにはヴァンが中心におり、プリシスを始め、レオンにリヴァルが見守る

その周りには街の様々な人々がヴァンの裁かれる様子を見に大勢来ていた

地球のように被告者にたいして代弁者がおらず、この星の裁判の方式が見て伺える

この惑星ストロンは娯楽施設などが立ち並び、その娯楽を楽しむ者もいればそれに漬け込むものもいるのだ

この惑星ではまだ犯罪法が地球ほど発達しておらず、極めつけ警備員という生身の人間ではなく、

警備部隊という名のごとく、この惑星では毎日のように過激犯罪者が逮捕される

娯楽だけに費やしたもののせいで、法がしっかり定まっていない

そのため違法者が増えたいだけ増えてしまうのだった

街の大半が違法者という都市伝説までできているほどであり、

この裁判所も違法者の多さに様々に簡略化している部分がある

その中で今まででもっとも大きい被害を出したヴァン


裁判長が口を開く

「ヴァンお前はここ惑星ストロンのスペースベースの町の一部を破壊し、そこにいた住民や従業員などを

13人死亡させ、5人負傷させたにも関わらず、止めようとした警備部隊を撃退

その後、罪を受け止め今に至るわけだな?」

裁判長はヴァンを見つめる

ヴァンは頷いた

「はい、その通りです」

裁判長も頷いて、報告書を見つめる

「これを見る限りでは、地球の銀河連邦軍のエディフィスへの任務中らしいが、

連邦の方でお前は最初からこういうことを見込んでいたのか、保障がかかっていない

任務中に死んでも放って置くようだったようだな

見る限り死んだ者達の9割が指名手配犯や、何かしら罪を受けるべき者達であった

それと、お前のこの破壊活動は、一昨日の夜に保護された

レイアという少女が暴行を受けた事に対しての事らしいな?」

ヴァンはうつむいた後に頷く

「はい、その通りです」

周りが少しどよめく

裁判長は続ける

「これで納得するものもいれば納得しないものもいる、分かるな?」

「はい」

「お前は更生の余地があるとは思うのだが、器物破損とかのレベルではない…

被害が大きすぎる

罪を償う時間は長いほうが良い

よって、終身刑とする」

周りの人々がまたざわめく中、プリシス達は唇を噛み締める他なかった

「はい…」

ヴァンは頷くしかなかった

「だが、お前は…確か…殺さない限り死なない生命体だったな…」

周りが少し退いたような声などを出し始める

そう、殺さない限り飲まず食わずでも死なないリヴァルやヴァン

エディフィスが考え出した生命体はあまりにもよく出来すぎていた

「俺は確かに罪深いかもしれません

だからと言って永遠に生きる私がずっと罪を償い続けて…

本当にこの街の人が納得がいくのか…」

死んどけ、納得いかない

様々な罵声を浴びせられながらヴァンは裁判長だけを見つめる

裁判長が首を振る

「今の段階ではその処置が見つからないのだ

私は永遠に生きて罪を償い続けるという裁きを下したことはない

どうしていいのか分からないのが本当の事なのだ

終身刑ではあるため、有余は無限にある…が」

裁判長は少し眉間にしわを寄せて呟く

「一人の者を幸せにしてみせろ

そしてここに連れて来るがいい

本当に幸せで、それがこの罪を償うのに十分なら

お前の終身刑を取り消してやろう

そうすれば後は器物損害などの犯罪でお前を裁く事が出来る」

ヴァンは最悪、人殺しで永遠の罪滅ぼしで、最高…誰かを幸せにすることができ、罪を償うことが出来、望みがある

ヴァンは頷いたが、レオンは首を横に振る

あまりにも無謀な裁判長の考えに一同が騒然としていた

人殺しをして終身刑の者が人を一人幸せにすることができるはずがない

殺す事は出来ても幸せにすることはこいつには無理だろう

だから裁判長はあの男に無理難題を付きつけたんだ

そう、人々の大半が考え、心の中で笑っていた

「まじムカつく…」

プリシスやレオン達はどこか煮え切らない裁判長の言葉に暗い顔をしていた








---スペースベース 戦艦収納庫---

修理が完全に終わったFカルナスの前でプリシス達が発進準備をし、今まさにエディフィスに向けて旅立とうとしている

ヴァンは乗り込まずに入り口の外にいた

「すまねぇなレオン、プリシス、リヴァル、俺ここで降りざるを得なくなったわ…」

笑いながら頭をかくヴァン

ヴァンには体中に特殊な電波を流された

スペースベースの内側でしか行動出来ない体になってしまったのである

レオンはどこかふてくされたように腕を組む

「こっちの戦力がた落ちだよ全く

本当…エディフィスに勝てるんだか…

でも決まった事だからちゃんと罪をつぐなうよーに」

ヴァンが苦笑してやり過ごす

プリシスが操縦席から帰ってきて、苦笑いでこそこそっと

「その体に流れてる電波消してあげようか…?」

プリシスには可能な事ではあるが…

ヴァンは首を横に振る

「さすがの俺でもここから逃げるのは悔しいな

プライド、というかケジメをすててまで戦いたくねぇ」

プリシスがため息をついて頷く、分かりきっていた事だが…

どこか寂しさを紛らわすようにプリシスは笑いながら思い出したように

「あ、あのシャルって子…、レイアと一緒に保護施設にいれられるんだっけ?」

ヴァンは頷き、遠くの保護施設を見つめる

「それのことでなんだが…」

と、ヴァンの横からシャルがひょこっと顔を出した

「私お姉ちゃん達と旅がしたいです…」

プリシスがえええッと言いながら屈む

「ヴァン…勝手に連れてきちゃ…」

シャルは首を横に振る

「私がヴァンお兄ちゃんにお願いしたんです…」

それでもプリシスはため息をついて、シャルの頭を撫でる

「これからお姉ちゃんたちは危ない所に行くんだよ?まだ小さいシャルを守りきれないよ?」

本当に分かりきっていないのだろうが、シャルは頷く

だが、シャルなりの意見をぶつける

「私は今までレイアお姉ちゃんに頼りすぎてた部分があると思います…

それに私もっと色々な場所へ行きたいし…

お姉ちゃんの分まで景色を見て、外を感じて…踊り続けたい!」

まるで今のレイアの状態を察すような態度

もし相手がレイアなら構わず操縦指揮などを任せようと考えるが…

シャルはあまりにも幼すぎた

だが、今までなかった思いのこもった言葉にプリシスが困った様子でリヴァルを見やる

リヴァルも腰を屈め、シャルの瞳を見つめる

「私たちと言っても危ない戦いが待ってるだけだよ?

それに私達はこの後エディフィスにしか行く予定はないの…」

それでもシャルは声に出す

「それでも!ここにいるより!!お姉ちゃん達に着いて行ったほうが私は変われる気がするから…!

施設だと親もいない私とお姉ちゃんは結局また世の中に放り出されちゃうの…」

プリシスがそれを思うと苦しくてしょうがないが…

レオンは大きく頷く

「いいと思う、それぐらいの変わりたいっていう気持ちと勢いがあるなら

プリシスとリヴァルもまだこんな小さい子をまた同じ目に合わせたくないだろう?

それに少しでも戦力があったほうがいいしね」

リヴァルも頷いた、プリシスも納得するしかなかった

そこまで言われたら私達で保護しなくちゃそう思ってしまったプリシス

「よろしくねシャル」

プリシスがシャルの手を取る

その手の小ささにどこか寂しさを募らせながら笑うプリシス

なんて世の中は辛いのだろうかと…そう感じた

「うん!」

シャルの笑みが場の空気をゆるくした

リヴァルが立ち上がってヴァンに向き直る

「エディフィスを倒すって目標…達成出来そうにありませんね」

リヴァルが微笑み

ヴァンは笑う

「お前らが倒してくれるんだろ?」

リヴァルが頷く

「その通りですけど…

新しい目標は…その…裁判長の言ってた幸せにするって…?」

ヴァンはいつか聞かれると覚悟していたのか口を開く

「あぁ…終わった後に、裁判長が…」




---裁判長室---


「お前は終身刑にかせられたのは罪滅ぼしをするためだ

だが、お前は死んだ者の親族や友人を幸せにすることはお前には出来ないだろう?」

ヴァンは考えただけでもどれだけ難しいか予想がつく

「俺には無理だと思います」

その通りと裁判長は答える

あまりにはっきりしている裁判長にヴァンは呆気に取られている

「結局その者達はお前にお金を払ってもらっても、死んでもらってもほとんど意味がない

心に深い傷を残した者達はその悲しみを一生抱え続ける、その悲しみを抱える人生を少しでも楽にしてやる

だから家族によっては高額なお金を支払わなくてはならない」

ヴァンは頭が痛くなりはじめていた

だが裁判長はどこか笑っている

「でもその方々もお前を恐れてか、哀れんでか、ヴァンとはもう一切関わりを持ちたくないと言っているんだ」

ヴァンはどこか納得のいかない話に首を傾げるが裁判長はヴァンの肩を叩く

「お前の恐ろしさはこの一帯じゃ知れ渡っているんだよ

高額の請求をしたら、牢屋をぶっ壊してでも殺しに来るんじゃないかとか…

人によってはレイアの件について同情してくれる人もいる」

ヴァンはなんだか少し申し訳ないような気持ちになって天井に息を吐く

「だが、罪滅ぼしの心を忘れてはいけない

命の尊さを覚えておかなくてはいけないし、物の大切さを知っておかなければならない

一応あの辺の土地の整備やら家の建て直しの保障はお金ではなく懲役約20年ということになってはいる

だが、お前は人を殺した事には変わりはない

だからお前は賠償金などを払わない変わりに終身刑ということになる

まぁ、損害賠償とか差し引いても人の被害を考えるとどっちみち終身刑だがね」

結局は終身刑で永遠の牢獄生活を楽しめって事

ヴァンは苦笑いしかできなかった

「お前の場合その有余が無限にあり続けるというのは酷な事

だから…だ

お前は元々レイアという少女の幸せを願っていた

レイアが不幸になったとともにお前は周りを不幸にしたのなら…

レイアを幸せにすることが大事なのではないのか?」

ヴァンはレイアという言葉を聞いてどこかまだ抑えきれない怒りで歯を食いしばる

「いいのか…

大勢の人が死んだのと一人の幸せを比べて…」

裁判長は構わないとはっきりと断言した

「あの場では言いたくなかったのだが、お前が殺した大半は何かにつけ犯罪を起こしては無罪を主張をするものたちでな…

こちらが助かったというのは事実だ

その殺された少数は親族などがいなくてただただ彷徨ってた者達だ

だから死んでもいい訳ではないが、少し絶望を感じていたんだよ…この星に

それに口コミでお前が本当は死神で、この星の悪を殺しにきたんだと

そそくさと星を経つ者が出てきたらしい、本当呆れた話だよ

だから、少しお前にはお礼も兼ねて…な」

ヴァンは少し呆れるが、安堵の息も兼ね肩の力を抜いた

「お前がレイアを100年経っても本当に幸せに出来ないのなら、それはそれで構わない

レイアを本当に幸せにすることがお前の罪滅ぼしだ

絶望のふちに立った少女から笑顔を取り戻せたならお前は上出来だ

そうすれば人身的な被害は打ち消しとし、懲役20年程度で留めて許してやる」

勝手なんだか優しいんだか…ヴァンは笑ってしまった






「だから…俺の目標はレイアを幸せにすることだ」



「ヴァンからその言葉を聞くことになるとは思わなかったー…」

プリシスが眉間にしわを寄せながら腕を組む

「というか、この星が緩くて助かったよ…

地球だったらところかまわず…

…殺す寸前でやめてそれを永遠に続ける事刑になってたと思うよ」

ヴァンは少し苦笑いして、心の中で裁判長にお礼を言った

プリシスがしみじみと呟く

「まぁ…短い間だったけど…

ヴァンも本当に変わったね…

一人の少女の為に一生かけるなんて

格好良いとおもうよ!

あ、もし早めに牢を出られたら地球に遊びに来てね!それじゃ!!またね!」

プリシスがこれからの不安を打ち消す感じで手を振った

「後は僕たちに任せて、そのレイアを幸せにしてあげてよ?

それで、裁判長でも丸め込んでエディフィスに応戦しにきてくれると助かるよ!」

勝手な発言だがレオンも手を振りながら短直に礼を言って笑顔を見せる

リヴァルが嬉しそうに笑った

「エディフィスを倒すより素晴らしい目標ですよ

ヴァンなら幸せに出来ると思いますが…」

少し前に乗り出し、ヴァンの耳元で色々と呟く事5分程

レオンがどこか機嫌を悪くしながら手を振った

「お兄ちゃん…その…お姉ちゃんを宜しくね…」

シャルの切なる想い

ヴァンはしかと受け止めた!と大声で叫んだ

リヴァルがシャルの手を引いていく

ヴァンはFカルナスに乗り込んだ仲間達に言い放った


「いいなッ!!お前らはお前らの道を行けッ!!!!

俺は俺の道を行くッ!!!!!」







ずぅうううん…


「いっちまったか…」

ヴァンはどこか重い足取りでそのまま向かった

罪滅ぼしをするために…レイアの元へ…





*こめんと*



裁判とか色々ろ…日本のはあまり把握していませんが、星が違うということで法があまかった!

というか裁判長があまかった!

やはり罪は人それぞれで難しい議題でした…

よりいっそうの星のご発展を願いたいものです!

そしてシャルが新しく加わったわけですが…

10歳足らずの子が何をするんでしょうか?

それは今後のお楽しみです

この次でこの章は終わりになります

ヴァンがレイアを幸せにすることができるか…?

人を殺すより幸せにするほうが何億倍も難しい

それは確かですが、ヴァンのレイアへの幸せのスタートは最初からではありません

頑張れヴァン!!

それではでは〜



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