STAR OCEAN Sanctions of God







第七章 






第二部



クロードは行方不明、それを探しレナとアシュトンがローズを追いかける

ギョロウルはエクスペルへ

プリシス、レオン、リヴァル、ヴァンは任務を遂行すべくエディフィスへ








---ある酒場---



酒飲み達が大笑いしながらテーブルで騒ぐ

そんな中でレイアだけが隅っこのステージで踊っていた

華麗に舞う姿は誰も見る事無く終わる

「ありがとうございました!」

レイアが息を切らしながら舞台から降りて、見守っていたシャルの頭を撫でる

「お疲れ様おねえちゃん」

レイアはそのシャルの笑顔を見て疲れを吹き飛ばした



「先輩お疲れ様です!」

休憩所に戻るとやる気なさそうにする20代後半辺りの女性が煙草を吸いながら

横目でレイア達を見た後にまた煙草を吸い始めた

「あ、あの…ここは何か大きなショーとかはやらないんですか?」

レイアが恐る恐る聞いてみる

その女性は煙草を吹かし、壁を見つめる

「ここに来たのが運のつきだねお譲ちゃん達

ここじゃ、酒飲みに来る連中のただの動く風景みたいなもんだよ」

レイアは苦笑いしながらその女性に近寄る

「でも、きっと踊りを見て感動してくれる人はいると思います!」

女性はため息をついてレイアに向き直る

「私はこれでも10年間もやってきてるんだ

最初は踊り子として有名になってやるって思ってさ」

そしてまた煙草を吸い始める

「でも結局有名になるにはお金と権力がないとこの星じゃやっていけない」

レイアは未だに苦笑いを続ける

「レイアとシャルは踊りたいんだろう?有名になりたいんだろう?」

二人一緒に頷く、女性はにんまりと笑い机から何か文書のかかれたものを取り出す

「だったら金が必要だ…

ここにサインしな、そしたらお金がここの数十倍は貰える」

レイアは首を傾げて文章を見ようとするが女性は無理やりペンを持たせる

「いいからサインしな」

レイアは思うがままにサインして、その女性を見つめる

シャルがてこてこ歩いてきて女性に話しかけた

「シャルも書く」

女性が苦笑いしながら腰を低くする

「いいのかい?」

シャルは頷いてサインをした

「…ふふ」

女性は少しだけ笑うとサインされた文書を机にしまい、また煙草を吸い始めた





今日はいつもより客が多い

レイアは不思議に思いながらステージに上がっていた

そして何よりレイアの踊りをしっかりと見ている

嬉しくてたまらなくて笑顔で踊り続けた

シャルも出てきて踊りを頑張る


踊りが終わったと同時に客達は席を立ちレイアとシャルの元に近づいてきた

「なぁ、昨日契約のサインしちまったんだって?」

レイアは首を傾げるが、頷く

「可愛そうになぁ、絶対何も知らないでサインしたんだろうなぁ」

気が付いてみれば客は全て男

にじり寄って来る男達にレイアは目を見開いてシャルの手を握ってステージの裏に走り出した

「お姉ちゃん?」

シャルは不思議そうにレイアの顔を見た

強張った表情でシャルの手を引くレイア

「ほら、お金ならいくらでも出すんだぜー?」

レイアは後ろから聞こえる醜い声に唇を噛み締める

がしッ

「きゃぁあ!!」

レイアの手が大きな男の手で掴まれ、思いっきり引っ張られた

その瞬間シャルの手を離し、大声で叫んだ


「逃げてッ!!!」


シャルは恐る恐る駆け出し、出口へ向かって行く

レイアは幾数もの手に引っ張られ、店の中に引き戻され、群がる男達の中に埋もれていった




---次の日---


「買うものも買ったし、カルナスの修理も完璧!んじゃぁ行こうか!」

プリシスが元気にカルナスのメインルームで号令をかけるが

「あれ、ヴァンは?」

リヴァルが頷いて外を見る

「ちょっと心残りがあるみたいですよ?」

プリシスがにんまりしながら腕を組む

「あの娘かぁ〜

ヴァンもやっぱりリヴァルと一緒なんだね〜」

横目でリヴァルを見ると、リヴァルはレオン少し見つめた後にレオンに近寄って隣に立った

その様子にプリシスが頬を膨らます

「むぅ…」

アシュトンの事を思い出すと胸が締め付けられる気持ちになるが、プリシスはソファーに座り込む

「ヴァン来るまで休憩〜」

レオンとリヴァルは下に降りてメンテの調整を始める

プリシスは天井を見ながら自分をギュッと抱きしめてみた

「温もりが欲しいよ…」





「……」

頑張って踊って働いているレイアを邪魔するつもりではないのだが

なぜか足が勝手に進んでいた

「あれで最後にしようと思ったんだがな…」

大きな広場の中央に見覚えのある女の子がぽつんと座っていた

「確か…レイアの妹…か…?」

顔は闇にでも埋もれた様な表情で、微動だにしていなかった

その状態から一瞬嫌な予感がしてシャルにかけよる

「お前…レイアはどうした」

シャルは顔をゆっくり上げるとヴァンの顔を見て脅えた様子だったが、立ち上がる

ふら付きながらシャルは人形をギュッと抱きしめて呟く

「お姉ちゃんを助けて」

それでヴァンは察した

レイアが危ない事になっていることを…

「お姉ちゃん、大勢の人にいじめられちゃうの…」

ヴァンは一瞬血管が切れた様な感覚に襲われる

世界を知らないヴァンでもそれは理解出来た

「どこだ…どこにいる」

シャルは手を引いて連れて行こうとするがヴァンは首を横に振る

「場所だけ教えてくれ」




シャルはカルナスで保護してもらい、ヴァンだけがその酒場へ

ただの変哲のない酒場

数人が酒飲みをしているだけのバー

「ここで…踊って…何になるんだ…」

そう思えるほどのステージ

定員にヴァンは問う

「ここの責任者はどこだ」

すぐに案内され、その部屋へと連れてこられる

そこには20代後半の女性が煙草を吸いながら新聞を見ていた

「なんだい?見覚えの無い顔だけど」

ヴァンはズンと一歩進む

女性は一歩退くと、目を反らしながらため息をつく

「レイア・ロセッティってのはここで働いてなかったか?」

女性は何気ない顔で首を横に振る

「知らないねぇ」

ヴァンは無表情のままその女性の首根っこを掴んで宙に浮かせた

「俺としてはお前の命日が今日でもかまわないんだが」

女性は苦笑いしながら首を横に振る

ヴァンは女性を下に降ろし、にらみつける

「あの娘の彼氏か旦那かい?」

ヴァンは一言で否定する

「…まぁ、なら別に気にすることじゃないさ」

ヴァンは女性の頭を大きな手で掴んで力を入れる

「かはッ…くぅ…売った」

ヴァンは一瞬女性を殺す事を考えたが、事情を聞くために壁に叩きつける

そうヴァンはエディフィスに人間の悪を教え込まれた

クロード達には正義を教わったが…

その悪をまじまじと感じたのは初めてで、ヴァンは気が狂いそうな程に憎悪を感じていた

「どいつにだ…」

女性はもう投げやりで微笑しながら語る

「昨日は面白いパーティーがあってね

そのパーティーの後その娘を欲しがる人が大勢いてね

一番高い値段の奴に売ってやったよ!あははははッ!!!!」

ヴァンは…

壊れた



ズギャァァアアアアンッッ!!!!!



一人を消す程の破壊力どころではなく、その辺一帯を吹き飛ばした


頑張る人が全員報いる世界

そんな世界は存在しない

どんなに踊りで人を楽しませ、感動させようとする人でも

悲しい現実さえもある

それがただレイアにまわってきてしまっただけ

だけ?

悲しむ人が少ないから不幸になっても別にいいだろう?

ふざけるな…俺はこんなにも怒っている…


怒っているんだよ

あの頑張る姿は誰よりも魅力的だった


でも


なんでこんなに俺は怒っているんだ?

なんでこんなに憎しみがあるんだ?




分からない





俺は不器用だから





ズガァァアアアアンッッ!!!!!










*こめんと*


純粋なレイアという一人の少女を気に留めていただけのヴァンの気持ちが爆発

暴走


どうなってしまう…?


はてさて…悪いのは世の中か、人間か…

なんだかかんだでこの章はヴァンのお話になります



いやぁー、この小説も半分を切った感じですねー!

これからもなんとか頑張っていきます!




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