STAR OCEAN Sanctions of God







第七章 






第一部





「このままエディフィスに向かってくのか?」

ヴァンが椅子にもたれながらレオンに問いかける

「カルナスの修理完全じゃなかったから、一番近くの星で修理をしてもらおうかと思ってる」

突然の襲撃のうえ、ハイダホテルの崩壊による一部損傷

援護に来た戦艦は緊急で来た戦艦のため、カルナスをずっと収容しているわけにもいかずで

レオンとプリシスの応急処置で今はその星へ向かっていた





---惑星ストロン スペースベース---


ムーンベースなどと比べ、娯楽施設が充実し

商店街が立ち並ぶ大きなアミューズメントパークとして有名であり

他に機械的な技術が高く、ここで戦艦を売買を行っている程の「なんでも屋」というわけである


「えっとー…最初は…」

リヴァルは手提げバッグを持ってヴァンの横を歩く

ヴァンは手を軽く振ると伸びをした

レオンとプリシスは修理代を賄う為にF・カルナスの修理に加わっている

そのためヴァンとリヴァルは足りない部品とハイダで変えなかった食料などを買い込みに向かっていた

「なんか地球と違うな」

リヴァルは首を傾げている

「いや、地球はただ高いビルが建ってて、機械化が進んでいた

だが、ここは機械的な技術が高いのに小さい店がいくつもならんで品物を売っているし

人がいきいきしている、変じゃないか?」

リヴァルは少し考えると苦笑いする

「地球も昔はこのような人々の交流を第一に考えていた時代もあったみたいで

といってもここ数百年前のことらしいのですが

今は店という店、会社が統合されてビルに詰め込まれて、空へと敷地を広めています」

ヴァンは腕を組んで回りを見渡す

「ここも…いずれ地球みたいになっちまうんだな…

文明ってのは…本当に良い方向に向かってるのか…」

二人は少しの間そこで立ち尽くしていた






ある程度買い物を済ませた二人はある公園で休憩

遠くでは…


「続いてはロセッティ一座の看板娘!レイア・ロセッティ!」

そこにはロセッティ一座がいた

だが…客は全くおらず、時々通る人は首を傾げて通っていく

「あれ…あの娘はハイダにいた娘じゃ?」

リヴァルが最初に気付き、ヴァンが顔を上げる

「…みたいだな」

特に嫌そうな表情ではなく、どこか沈んだ感じの表情をして立ち上がる

ロセッティ一座の旗は『ロセッティ一座解散イベント』と書かれ

衣装もどこか華やかなレイア

そして後ろで踊る団員達

作り笑いにしか見えなかった

ずっと夜の静かな公園で客が一人もいないにも関わらず、レイアは笑っていた

レイアの踊りは前にもまして華麗で、美しくも見える

少し右腕をかばっているが完璧だと思うヴァン

踊り終えると団員全員とレイアで頭を下げた


「今までありがとうございました!!!」


聞こえるのはヴァンとリヴァルの拍手だけ

そして団員達のすすり泣き

その場で崩れる団員達、レイアはヴァンをひとしきり見ると後ろに戻って行った

ヴァンは何も言わずに近くのベンチに腰をかける

すると着替えていない状態のレイアがヴァンのところへちょこちょこと歩いて来た

「……見て…くれていたんですか?」

ヴァンは無言で頷き、星が瞬く空を見つめる

リヴァルは察してヴァンに少し相槌を打ってその場を後にした

「今の…彼女…さんですか?」

ヴァンは首を横に振る

「あいつには恋人がいる」

レイアは少しだけ穏やかな表情になると元気な素振りを見せてヴァンに顔を近づける

「どうでしたか?最後のロセッティ一座のパフォーマンスは!」

ヴァンは空を見上げたままの態勢で何一つ変えず口だけを動かす

「綺麗だった、この世のもんじゃないと思った」

それは本音で、ヴァンは笑みを浮かべている

レイアは恥ずかしそうにうつむいてクスッと笑った

だがヴァンはあーっと言った後に顔を下げる

「腕…完治してないのに踊ってただろう」

レイアは苦笑いで誤魔化す

ヴァンはレイアの頭に一発のチョップをHITさせる

笑いながらレイアは答える

「私、さっきヴァンさんがいたから踊れたと思います」

ヴァンは何も答えずにレイアの顔をジッと見つめた

思わず目を反らすレイア

ヴァンは目を細める

「なんで解散なんだ?」

あまり言いたくなかったのかヴァンは少し苦笑いしている

レイアはうつむいて唇を噛み締めていた

「座長が…ロウズに襲われた時に大怪我しちゃって…

それが原因で……死んじゃいました

座長が…全てを支えていたんです…

だから…だから…ひっ…ぅ…」

ヴァンは眉を歪め、レイアの肩に手を置く

レイアはビクンと震え、ヴァンの手を両手で握った

「世の中って…なんでこんな辛くできてるんですかね…?」

ヴァンは答えられない

世の中を感じた事がないから…

レイアは失礼しますと言うとそっとヴァンの胸に収まった

「私は生まれて間もない頃に道端で拾われたんです

今のロセッティ一座の座長さんが育ての親で…

1年ぐらい前なんです、ロセッティ一座が出来たのは…」

ヴァンは少し難しい表情をするが、空をまた見上げた

「私はロセッティの名を誇りに思っています

養女にも関わらずロセッティの看板にまでしてもらって…

規模は小さかったんですが、座長が凄い仕事人で…

そのおかげでここまでこれました…

でも…座長が…いなくなった今…

解散するという方法しかないんです…」

ヴァンは首を傾ける

「それしか方法はない…のか?」

レイアは頷く

「これ以上続けると全員が不利な状況で財政的にも辛いんです…

だから…私はこの後この辺りで私を踊らせてくれるってところがあるので…」

そう話しているとちょこちょこと小さい女の子がレイアの裾を引っ張った

「ご、ごめんねシャル!」

レイアは顔を赤くしながらヴァンから離れ、シャルの頭を撫でた

「この娘も私の後に拾われて、同じく座長に育てられたんです…

だから本当の妹だと思ってます

でも、これでも私の後を行く踊り子なんですよ?

ほら、挨拶」

年齢的にはまだ10歳ほどで小さい動物の人形を抱えながら頭を下げた

「こんにちは」

ヴァンはニカっと笑ってシャルの頭を大きな手で撫で回す

少し身を退くが、シャルは笑みを浮かべる

「おう!」

レイアは空を見上げた

「私とシャルはこれから…この宇宙を見上げる事しかできませんけど…

その分ヴァンさんが宇宙をいっぱい旅してください」

シャルはレイアの手を握り、ヴァンを見つめる

レイアは寂しそうに頭を下げる

そして背を向けた

ヴァンは少しの間レイアとシャルの背中を見つめ、目を細めた

「またな」

ヴァンはそう行って同様に背を向けた





「いいのかい…レイアちゃん、いっちゃうよ?」

団員達が見計らって出てきてレイアに呼びかける

「いいんだよ?レイアちゃん、この機会逃したらもう会えないかもしれないよ?」

レイアはうつむいた後ににっこり笑う

「私はロセッティ一座を再建させるためにシャルと踊り続けます…

ヴァンさんは…もっと大きな事をする人だと思います

だから…私は私で夢を追い続けます」

そう言うとレイアは皆に頭を下げて身を引く

「では、私はこれで…

行こうシャル」

シャルはたたっとレイアの手を掴んで歩き出す

「私たちでさえ…諦めてしまう程辛い世の中で…

あの子達は…踊り続ける…

何も出来ない私たちが情けないですよ…」

「団長があまりにも大きい人だった事がよく分かった…」

団員達は思い思いに感謝の言葉、応援の言葉言うと散り散りになっていった

ロセッティ一座という『居場所』を無くし

ある者は違う才能を生かして職を探しに、ある者は行く所も無く放浪

やるせない気持ちを抱える者が数多くいながら、レイアとシャルはもう一度やり直すために踊り続ける







---ララルビジネスホテル---


レオン達が寝泊りする部屋でレオンとプリシスの帰りを待つ二人はぼーっとしていた

リヴァルは窓の外を見ながらレオンの顔を思い出してにこにこしている

ヴァンは眠そうにベッドで横になっていた

「俺らは世界の平和を守るために旅してるんだろう?

なんでこんなちんけな宿なんだ?」

リヴァルはため息をついてヴァンを見てうつむく

「一応地球追放されて無理なミッションこなしてこいって言われてここまで来たんです

カルナスの往復考えるとちょっと無理があるんですよ…

まずこの任務の原因は私達の主ですからね」

ヴァンが上半身だけを起こして自分の拳を見つめる

「俺は元々エディフィスの野郎にただお前らを消してこいとだけ言われて

俺はただ何も考えずに地球を襲った

戦えればいいと思ってとにかくがむしゃらにクロード達と暴れた時

こいつらを倒して何になるのだろうかと、そう思った

拳で語って、あいつらの仲間意識の強さに完敗した俺は今ここにいる

なぁ…リヴァル…俺はなんなんだろうな?」

リヴァルは瞳を閉じて呟く

「たくましくて、男気に溢れてて…無茶をする変な人じゃないんですか?」

ヴァンはリヴァルの顔を見つめて歯をむき出して笑う

「ハハハッ!そうか…俺は…変な奴だったな!」

ヴァンはベッドから体を起こし、窓越しの空を見つめる

「リヴァル、前に仲間達を傷つけた俺は嫌いか?」

リヴァルは苦笑して首を横に振る

「多分皆あなたを受け入れていますよ

あなたは強くて男らしいから…頼られてもいるんじゃないんですか?」

ヴァンは生き生きとした表情で拳と拳をぶつける


「よし!これで旅をする理由が出来たぜ!!

俺が俺であるためにエディフィスのマザーの野郎をぶっつぶす!」


リヴァルは嬉しそうにヴァンを見つめる

ヴァンは少し気持ちを落ち着けるとリヴァルに問う

「確かクロードが言ってたな?自分だけを守る奴より誰かを守る奴になれって

俺はクロードやレナ、プリシスにアシュトン、レオン、ギョロウルもリヴァルもなんだが…

こんな俺でも…仲間を守りきる自身がないんだ…どうすればいい?」

リヴァルはふとディアスの事を思い出し、顔をゆがめるが

笑顔で答える

「その心が大事だと思います…

仲間を信頼して、背中を任せられる…命を預けられる…

ヴァンがしたいようにすればいいと思いますよ?」

ヴァンは一瞬レイアの事を思い出すが…

空を見上げて心の中で呟いた


「お前の分までこの宇宙を舞ってきてやるからな…!」





*こめんと*

まったり気まぐれなのにこの小説をここまで読んでくださってる皆さん本当に感謝です!

カウンターを見てまだこのHPを見てくれる人がいるのだな…

そう思う力がこのHPを支えています!

なんだかんだで6年経った私のSOHP歴も本当にお疲れ様な時期かと思い始めています

この小説をおわすと同時に多分凍結してしまうかもしれませんが、皆さん

それまでどうか温かい目で見守ってください


なんと!ロセッティ一座は解散、諦めずに踊り続けるレイア

レイアの分まで大暴れするつもりのヴァン

旅の理由も心に刻み、ヴァンは歩き始める!!!





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