STAR OCEAN Sanctions of God







第四章 






第七部



「…どうすれば…いいんだ」

アシュトンは落胆する

街に溢れかえった様々な魔物達

それは信念をも揺るがすおびただしい数

そう考える間にアポトロディウスからはドンドンと魔物が体中から溢れている

アポトロディウスは全く動きそうにない

だが…

アポトロディウスの所まで辿り着くのにどれだけの魔物を倒さなくてはならないか…分からない

それでもオペラは口元を緩める

「あいつを倒すまでのいいウォーミングアップだと思えばいいんじゃないかしら?」

アシュトンは苦笑いするしかない訳だが

目に強い眼差しが戻っていた

「行きましょう」

そう言うとアシュトンは構わずビルの屋上から飛び降りた

オペラはそんな真似は出来ずに、ビルほどまでの高さの魔物に飛び乗って頭の芯からコスモライフルをぶっ放した


ズガァァアン!!!


ぐがぁあああ!!!そう言いながら前のめりに倒れていく魔物

オペラはしっかりと掴まり、魔物が地面に転がる寸前で地面に降り立つ

「さぁて…いきますか」

周りを見渡したが、アシュトンは既に結構前に進んでいた

「道でも作るほかないわね」


ズガァァアン!!!


アシュトンのぎりぎり横を一直線に打ち抜くオペラ

アシュトンは振り返って文句を言っている

オペラは含み笑いをしてアシュトンと共に突き進んで行った






---地下19階格納庫---

「…プリシス……本当にいいのですか?」

モニターに向かってリヴァがプリシスに問う

「おっけーおっけー!外に漏らす訳にはいかないからね!」

リヴァは頷いてキーを素早く叩いていく

「これで…よし」

『コンプリート』

機械音が響いた後

何事もなかったようにリヴァは息を漏らす

リヴァが行ったプログラム

アポトロディウスに大穴を開けられたシールド

それの自動修復機能が時間を経過した上で行えるようになったのだった

今リヴァがモニターで街の様子を見る限り、魔物はまだシールドの穴から抜け出していない

それを見計らい、閉じ込めてしまおうという作戦

まず閉じ込めなければまずいことになるのは言うまでもなく、閉じ込めれば被害は閉じ込められた街にしか及ばないのだ

「後は…プリシスのオペレートを…」

『あぁー大丈夫大丈夫!自分自身で全部やれるから』

リヴァが頷くとともに後ろに誰かいるのを感じた

「リヴァル…」

「あなたもリヴァルですよ?」

後ろにいたのは右腕をなくしたリヴァル

リヴァはリヴァルを睨み返す

「生易しいお人に助けてもらったのですよ

せめて私はあなたを消さなくては気がすみません」

壊れた表情にんまりと笑うリヴァル

リヴァは沈黙したままリヴァルに歩み寄る

「私は…あなたと戦いたくありません」

リヴァルは狂ったように笑い出す

「ククク!!!ハハアアハハハハハハッハハハハハハッハハ!!!!

じゃあ死んでくださいッ!!!」

そう言うと同時に剣を抜き、リヴァルはリヴァの腹めがけて付きたてた

グサ

「なんで避けないんですか?馬鹿ですね」

リヴァは一つも表情を崩さずにリヴァルの肩を抱く

「何に怯えているのですか?」

リヴァルはより笑う、そして深く剣を刺していく

「あなたが怯えてるんじゃないんですか!?アハハハハハハハッハハハ!!!」

リヴァは何も答えずに思いっきり抱きしめた

「ぅ………」

リヴァルは少し怖気づいたように剣を握っていた手を放し、震える

「あなたは元々私…

あなたが何を感じ、何を思っているか分かります」

リヴァは黙ったままうつむいている

「あなたは…今何を信じていいのか分からない

そろそろマザーに疑問を抱き始めたのではないですか?」

リヴァルは黙ったままで、そのままリヴァから離れる

「その通りです」

リヴァは頷き、刺さっている剣を抜く

ビュ

吹き出る血を見つめ、手に塗りたくる

顔は痛さで歪んでいる

「私はちゃんと痛いって分かりますし、こうして血もでます

ここ地球で住んでいる皆さんと何も変わらないんです

あなたは別にマザーに従う必要なんてないんですよ

私みたいに年頃の女の子として生きればいいんです」

リヴァルは首を横に振る

「あなたは殺さない限り死なない

私も年を取ることはない

それでも人間と一緒に共存できると思っているんですか?」

リヴァは頷く

「いいんですよ

私はレオンが老いて死ぬまで一緒に居続けて、そして一緒に死ぬんです」

リヴァルは苦笑いする

「私には理解できないですね」

リヴァは手を差し出す

「マザーの命令なんて無視して…

今のあなたを捨てて、一緒に生きませんか?」

リヴァルは半歩下がり、剣を拾う

表情は穏やかで、笑みを浮かべている

「面白そうですね、でも…あなたと少し違う部分があります」

ドス

鈍い音とともに剣をリヴァルは自分の胸に突き刺した

「り、リヴァル!?」

リヴァは慌てて止めるが、リヴァルは確実に急所を突いていた

「私は作られる際、あなたのように裏切らぬ様、相当な忠実心を植えつけられたのです

だから…あなたのようには…生きられない」

リヴァルは意識が遠のき、リヴァに倒れ掛かった

それをリヴァは支え、哀れみの表情で見つめる

「定め…なのですね」

リヴァルは頷き、瞳を閉じて口元を緩める

「私も…あなたになりたかった」

リヴァはにっこりと微笑んで、涙を零した

「大丈夫、あなたはずっと私の中にいる

ゆっくりおやすみなさい」

リヴァルは笑みを零し、ゆっくり息を引き取った

そしてリヴァルは無数の光となってリヴァに流れ込む

「温かい…」

リヴァの傷は癒え、力が溢れるような気がした

そして心が落ち着き、優しさに包まれる

「懐かしい…力

やっぱりあなたは『私』だったんですね」








「つぇーよ…クロード

ずっとやっていたいんだが、そろそろ俺も傷が開きだしたし、周りの魔物も邪魔になってきた

決着つけようぜ?」

ヴァンもクロードも息が切れ、拳も熱く、腫れ上がっていた

「いくぜ!!!」

「あぁ!!!」


ズゴォオオオオオオオオオンッッ!!!!!


周りの魔物が唸り声を上げながら二人に襲い掛かるが、二人の本気のぶつかり合いに吹っ飛んでいった

周りのビルや建物が反動で崩れていき、空気が振るえ、風が吹き飛んだ


「最高だ…

つぇえよ、クロード

お前の背負ってる物、気迫、俺なんか相手になんねぇよ」

ヴァンは体中から血を噴出し、倒れ込んでいた

クロードは右手を押さえ、荒い息を吐き、その場で膝をつく

「ヴァンも…十分強かった」

ヴァンは空を見上げていた

「実際、俺はマザーの命令なんてどうでもいいんだ

ただ…

強い奴と戦いたかった

まぁ…喧嘩屋だったんだな」

クロードは集まりだしている魔物を横目で見て、ヴァンの元へ足を引きずりながら歩み寄る

「ここで、生きたいとは思わないか?」

ヴァンは首を横に振り、苦笑いする

「俺は喧嘩屋だ…

また普通に住むなんてうんざりする」

クロードは首を傾げる

「ヴァンは…今までに普通に生活していたことがあったのかい?」

ヴァンは笑う

そして首元を見せる

そこには3本の線

「俺は元々未開惑星の住民だ

戦闘種族…とでも言うのか?

まぁ、この線は俺らの特徴とでも言えるわけだ

俺の星の奴らが何て呼ばれているのかは分からないが…

俺は普通に働いて生活していた

おっと……

なんだか昔の話は好きじゃないんだがな…」

口をつむぐヴァン

クロードは頷きながら、座り込む

「僕はもっとヴァンの事を知りたい」

ヴァンは一度クロードの顔をいぶかしそうに見ると、笑った

「いつの日かつまらなくなってな

旅に出たんだが…俺は死んだ

理由は覚えてない

起きたらマザーがいたんだ

それで戦うように言われ

そして色々な星で人を殺してきた」

ぽつりぽつりと呟くヴァン

瞳を閉じて、拳を握り締める

クロードは黙っている

「俺にもう悔いはない

最後だ、クロード

とどめをさしてくれ」

クロードは首を横に振る

「君はまだ死ねない」

ヴァンは含み笑いをすると瞳を開ける

「止めるのか?」

クロードは頷く

そしてヴァンを担いだ

「君には罪滅ぼしをしてもらう必要がある

殺した人の分生きる義務がある」

ヴァンは残念そうに笑う

「へいへい、何をすればいいわけだ?」

クロードは笑みを浮かべる

「僕らと一緒にエディフィスへ行って、マザーを止めてもらう

それが、君の責任だ」

ヴァンは大声で笑う

「アハハハハ!!!いいだろう!クロード!さっきまでの俺は死んだ!

今の俺はお前の下部だ!

お前に付いて行ってやる!

元々あのエディフィスは気に入らなかったんだ!」

ヴァンはよろめきながらも笑っていた



*こめんと*


アポトロディウスという脅威

オペラとアシュトンは魔物を蹴散らしながら立ち向かい

リヴァルとリヴァルは分かち合い

全てを受け入れる

ヴァンは戦うという種族の本能のまま生き、死にたいと願うが

クロードはそんなヴァンを仲間に加える

はてさて

そろそろ終盤になってきました

次でこの章も終わると思います

後残るはプリシスのみ!さて!どう決着をつけてくれるのか!

次回をお楽しみに!(無責任←ムリヤリ


back