STAR OCEAN Sanctions of God







第一、二章 






〜番外編〜 ボーマン編




「こう平和すぎると本当何かあった時怖いよなぁー」

ボーマンが店先で呟き、澄み切った空を見上げる

「お父さーん!グラフトおじちゃんが呼んでるよー!」

ぽてぽてと走ってくる娘エリス

ボーマンはそのエリスの愛らしさに目が垂れ下り、にこにこでエリスを抱きかかえる

「あぁ〜!エリス、お前は本当可愛いなぁ〜!」

エリスは口を尖らせてもう一度同じ内容を言う

「ん、また変な実験台にされるのか…

プリシスがいないといつもいつも…」

愚痴をあれこれ言いながらもプリシス宅へ向かうボーマン

グラフトは変な機械を外に出してボーマンを待っていた

「で、今日はなんですか…

俺も暇じゃないんで早めにお願いしますよ?」

グラフトはエリスに挨拶をして、ボーマンの顔を覗き込む

「ほぉ…女の尻を追っかけてる暇があるのにか?」

ボーマンは苦笑いで返し、エリスはボーマンに問う

「お父さん女の人のお尻おっかけてるの?」

ボーマンはグラフトをジトーっと見つめた後にエリスに適当に誤魔化しておく

「お供します…」

グラフトはニコニコの笑顔で頷くと、目の前の機械を説明した

「これは高電圧プラズマエボリューション2460号なんじゃけど…」

また危なっかしい機械を作ったらしく、変に長いこだわりと、情熱を長々と話してくれる

ボーマンは頷いては目線を反らしてエリスを降ろす

「家に帰ってていいぞエリス」

元気に返事をするエリスをのへーっとした顔で見つめると、だるそうにグラフトの話を右から左に通していく

ボーマンはまた空を見上げる

「こんな日がいつまでも続くといいんだがなぁ…」



「で、結局なんでこれ作ったんですか?」

グラフトは頷いて答える

「暇だったんじゃ

今じゃモンスターが一匹もいないからな

つまらんわけだな…これが」

ボーマンも呆れて感心するほどの回答

グラフトは高らかに笑った






「それが、また今日も…

午前中の講座の時点でだるいってのに…

プリシスの親父さんが発明を見せびらかすんだ…」

今夜はシチュー

食卓を囲む4人

ボーマン、ニーネ、エリス、マリ

マリはまだ生後6ヶ月で、プリプリしている

ボーマンが言うに食べ頃らしい

ボーマンの愚痴にニーネはふみ笑いをしながらスプーンを置く

「グラフトさんもやっぱりプリシスちゃんがいないから寂しくて寂しくてしょうがないんですよ」

エリスのおかわりの言葉でニーネは立ち上がってシチューをよそる

気分は上々だ

「ねぇねぇーお母さん、今日ねグラフトおじちゃんが言ってたんだけど…

お父さんって女の人の…んぐッ」

「え、エリス〜後で好きな物買ってやるからなぁ〜」

エリスの口を押さえて耳元で呟くボーマン、焦りながらもエリスは承諾してくれた

「んふふ…なんなのかしら?あなた」

どこか奇妙な笑い方のニーネにボーマンは首をぶんぶんと振った

それを見てエリスは笑う

そんな平和な…日常






ズガァンッ!!!





「な、なんだ!?」

突然の地響きと大きな爆発音

ボーマンはとっさにカーテンを開けて外の状態を確認する

「嘘…だろ…」

夜だというのに眩い程に遠くで何かが燃え、爆発音を繰り返していた

「あっちは…ラクール…だよな…」

目を見開いて今の状況を考えるボーマン

ニーネは不安で部屋の隅で子供達と一緒に縮まっていた

「くッ!なんだってんだ!

ニーネ、そこでじっとしてろよ!」

階段を駆け下り、外へと出て行く

外に出ると共に辺りを見渡し、もう一度ラクール方面を見つめる

周りの家からも人が出てきては嘆きの言葉を発するしかなく

誰も今この状況を理解できるものはいなかった


グガァッ!!!


木霊す鳴き声、今この星ではあんな声の動物はいないはずだった

「くそ!!」

ボーマンは見てしまう

町の入り口からぞろぞろとこちらへ向かってくるモンスター達を…


「皆!!武器を持て!モンスターが来てるぞ!!」

ボーマンが言った頃には目の前でまでモンスターは迫っていた


ガァッ!!!


狼のようなモンスターがボーマンに襲い掛かる


ズガンッ!!


襲い掛かる両腕を軽く避け、そのまま敵の顔面に右腕をめり込ませる

舌打ちとともに近所のおばさんに襲い掛かろうとするモンスターをまたも一撃で粉砕する

「まだ来るってのか!?」

またも襲い掛かってきた敵を足で顎ごと上空に吹っ飛ばす

だがきりがないほどぞろぞろと出てくるモンスター

人々はただただおびえた

「はっはっはッ!!やっと私の発明を披露する時がきたようだな!!」

グラフトが颯爽とあらわれ、肩にしょっているのは今日見せてもらった変な発明

ボーマンは不安でありながらもグラフトに話しかける

「それは強いのか!?」

グラフトはにっこりと言う



一発で軽く町は消えるだろう!!



「消す理由はなんだってんだ!」

ボーマンがさすがに切れる

グラフトが昼頃説明したように(聞いてはいなかった

調節がきかないらしいのだ

「ちぃッ…どうすりゃいいってんだ」

ニーネやエリス、マリの事が心配でならないボーマン

焦りを感じながらもどんどんと敵を倒していく



ズゴォオオオオッッ!!



物凄い炎の音とともに奥からどんどんとモンスターが焼き焦げていく

ボーマンは焦りの中で、より強い敵が現れたと思ったのだが…

そこにいたのはディアス・フラックであった

「な、なんでお前がいるんだ!?」

ボーマンはやっと安心に包まれた気がした

「お前がいるからだ」

ボーマンは含み笑いをし、ディアスに歩み寄って肩に手を置く

「ま、まぁ!ありがとな!一時はどうなるかと思ったぜ…」




ディアスが言うに敵を追っかけたらここに来たらしいのだった

「どうぞディアスさん…紅茶で大丈夫ですかね?」

ニーネがお盆の上に紅茶を乗っけて運んで来る

ディアスはお礼を言って一口、口にする

「ってことは…なんだ?このリンガになんか重要なもんがあるってことなのか?」

ディアスは無言で首を傾げ、ボーマンもつられて首を傾げる

エリスも首を傾げ、ボーマンはそれを見てにこにこでまたにへにへ言っている

マリが首を傾げないか見ていたが、すぐ様ディアスに向き直る

「まぁ…お前がいてくれれば大助かりだ…

もう少しここにいていいぞ」

ディアスは一応頭を下げるが、ポツリと呟く

「今日は泊めてもらえるのは助かるのだが、明日にはクロスへ向かおうと思っている」

ほーと言いながらボーマンはご苦労なこったと付け加える


すい…ません


ドアが開いたと思うと、そこにいたのはノエル、そしてチサトを背負っている

二人とも血まみれのようだが、怪我を負って血を流しているのはチサトのほうであった

「お、おぃ!どうしたんだよ!」

流石にボーマンは驚いて、ノエルからチサトを預かる

「そ、それが…」



「…ってことは…リヴァルは俺達を探して消すつもりか…」

そんな話をしている間、ニーネは子供達を連れ、ベッドへ向かう

ノエルの話が正しければ、ラクールの攻撃もリヴァルの攻撃であることは確かであった

「おびき出すついでに一緒に消す事もできる

最悪なやり方だな…」

きっとあの炎ではラクール城は完全に沈黙して潰れただろう

「チサトさんは…助かりますか?」

話そっちのけで聞いてくるノエルにボーマンは目を丸くする

「ん…まぁ、お前がある程度傷口塞いでくれたから、命に別状はないと思う

一週間ぐらい寝てればころっとよくなるだろう」

ノエルは大きく息を吐いて頭を下げた

「はぁ…ラクールが潰れたってことは…

レオンどう思うだろうな…

あの二人が無事でいてくれればいいんだが…」











「それじゃ、散歩行ってきますね」

お昼頃ニーネが子供二人を連れて散歩へ行ってしまう

ディアスはついさっき町を出たし、ノエルはチサトをしょって聖地に戻っていった

こんな時こそグラフトの説明を聞くべきなのだろうが、まだ講習へ出向いたほうがましだ

「つぁー面倒くせぇ…」

とその時…


殺せ!!殺せぇ!!!


町の外から周りから、突然盗賊が町を襲ってきたのだった

世界の混乱に紛れてくる馬鹿共も困ったものだ、ボーマンは呆れる

剣を片手に町を駆ける盗賊、ボーマンもとっさの事に慌てながらも、迫る敵を秒殺していく

「つぇー…」


バゴンッ!


「生半可な盗賊が偉そうにするな」

次々に盗賊をなぎ倒していくボーマン

盗賊もさすがに焦りを感じたのか、ボーマン以外の人を襲い始めた

「ふざけてんじゃねぇ!!弱者にしか手出しできねぇのか!!」

逃げる盗賊の首根っこを掴んでは溝にパンチをくれるボーマンは少し怒りにふるえていた


「おい!てめぇ!!調子込んでんじゃねぇぞ!!この女がどうなってもいいのか!!!」


ニーネの髪を無理やりに引っ張ってボーマンの前に突き出す盗賊、子供達は泣きながら盗賊に押さえられていた

「くそ!!!ふざけんな!!放せ!!!」

目を見開いて拳を握り締めるボーマン、怒りが頂点になり損ねていた

「そんな口聞いてるとこいつと子供の首この場で切り落とすぞ!?」

ボーマンが歯軋りするほどに噛み締め、一歩下がる

「ど、どうすれば…!どうすれば放してくれるんだ…!!」

死ぬほどに必死なボーマンは荒い息を吐きながらも冷静になろうと頑張っている

「そうだなぁ…!!今から俺ら全員のリンチに耐えられたら…放してやるぜ」

ニーネは大粒の涙を流しながら首を横に振る

「駄目!!あなた!!殺されちゃう!!私達には構わないで!!!」

うるせぇんだよ!と言いながらニーネの頬にビンタをかます

ボーマンは怒りに震える体を保ちながら盗賊のリンチにあう


ドガッ!!ドガッ!!!


ズガッッ!!!


「さっきはよくもやってくれたじゃねぇかよ!?あぁ!?」


ドガッ!!バキッ!!ドスッ!バシッ!!!


ドガッッ!!!


「やめてぇ…!!死んじゃう…!!!やめてあげて!!!」

「お父さんをいじめないで!!やめてあげてよ!!」

ニーネ、エリスが盗賊の暴力にもめげずにリンチにあっているボーマンに叫ぶ




「よく耐えたもんだぜ…」

数時間の暴行の末、ボーマンは体中あざや傷だらけの体になり、意識が朦朧としていた

地面にぺっと血を吐き出すと、立ち上がってにやりと笑う


「妻と娘達の命がかかってんだ…お父さんが頑張らないで…どうするってんだ」


ニーネもエリス、マリも涙で目が赤くはれ上がっていた

「お父さん…!」

エリスが涙目でボーマンに呼びかける

ボーマンは笑顔で頷く

そんな家族愛を見せ付けられた盗賊も黙ってはいなかった

「おーおーお疲れ様なこった

さぁ…選択肢が増えたぜ?

この場でこいつらをぶっ殺して、お前もぶっ殺されるか…

こいつらを売買して、お前はぶっ殺されるかだ…!!がはは!!さぁ!選べよ!!!」

ボーマンの堪忍袋の緒が切れた

荒い息をいっきに吐き出しながら叫ぶ


「てめぇらのような下等な野郎共なんかに俺の家族を殺させてたまるかってんだよ!ばぁーかッ!!!

ふざけんのもいい加減にしろ!!!」


盗賊は躊躇わず笑顔でニーネの首に剣を付き立てる

「んな、お説教うけたところで意味ねぇんだよ!!勝手にほざいてろ」

ボーマンはその言葉に絶望すら感じた

息を切らしながらもうつむいて拳を握り締める

愛する者達がいなくなる…最悪の心地であった

盗賊は薄ら笑うように昔の話をし始める

「確か…昔殺した家族もそんな温かいまぬけな野郎達だったなぁ!!

親二人に兄と妹!!殺しがいがあったぜ!!泣き叫ぶ姿とか最高でよ!!!

後々兄だけ助かったらしいけどな!!」

ボーマンはうっすらと死んどけと呟く

「あなた!!あなただけでも助かって!!こんな人たちあなただけで十分倒せるわ!!!」

ニーネは本気だった

愛する人に死んでもらいたくない…誰かが生き残る方法としてはそれしかないのだった

その言葉にボーマンは首を振り、叫ぶ



「俺だけじゃ駄目なんだよ!!!


ニーネ!エリス!マリ!お前らがいない世界なんて俺の存在価値はない!!!!


ここで死んだら!!星が消滅した時に死んだニーネに顔合わせできねぇんだッ!!!!


ネーデの時のような…俺は…俺はもう…あんな思いはしたくない!!!


二度と…二度とニーネを失いたくないんだよッ!!!!


ニーネや子供達に手を出してみろッ!!!ただじゃ殺さねぇぞッッ!!!!」
盗賊達は首を傾げてにたりと笑ってニーネの首に向かって剣を振り下ろした ズバァ!!! 「ぐ、ぐぁあ!!!」 ニーネを押さえていた盗賊は首から血を噴出しぶっ倒れた 気が付けば子供達を押さえていた盗賊も倒されている 「ボーマン!後は任せろ!」 そこにいたのはまたしてもディアス ボーマンはこれほど落ち着いた気持ちはないと言うほどに舞った 「ありながとな!ディアス!」 にたりと笑うボーマン、盗賊はほんの数分で全滅させられた 「あなたぁッ!!!」 おかしくなるほどにボーマンとニーネは抱きしめあい、エリスも加わる 「お父さぁん!!!」 恐怖におびえながらも、ボーマン一家は笑顔であった 「本当…すまねぇな…この借りはいつか返すからな!!!」 ディアスを今度こそ見送ろうと町の出口でディアスに頭を下げる 「よかったな… 大切な奴等を守れて」 ボーマンは首を横に振り、ディアスのおかげと称える 「助けたのはお前の思いだ…」 台詞がくせぇよとボーマンはにんまりと笑う 「これからクロスだっけか?」 ディアスは頷き、草原の向こう側を見つめる 「暇できたら俺も向かうわ」 「あぁ…じゃぁ…元気でな」 ---アーリア--- --神護の森-- 「死んだら…かり…返せねぇな…全くよ…」 神護の森での自棄酒 ボーマンはディアス一家の墓の前にいた プリシス達を見送り、この場所へ来ていた 「お前の分まで幸せになってやるよ まぁ…お前の場合はやっと家族と一緒になれたんだもんな…」 ボーマンが気が付いたように空を見上げる 「ぁー…すると…ニーネも天国で一人ってことになるんかな まぁ… 俺が幸せなら… 納得してくれるだろう な?ニーネ」 澄み切った空 風はどこか笑っていた *こめんと* 平和で平和… 何気なーい日常 やはりそれはリヴァルによって破壊された モンスターが群がり、町を襲う ボーマンさん!やっぱかっこええ!!!!! 今回ディあっさん大活躍!! ってことは第一章第五部の前の話って事です それと関連してチサトとノエルもやってきて、なんとか話が繋がった感じですね ボーマンの切れて、「もう二度とあんな悲しい思いはしたくない!!」 この言葉を並べて私も叫んでみたんです… 泣けました;; 二度も失ってたまるかぁーーー!!!よく分かります… 最後は第二章の最後の話の後って事で… いや!!なんか書いてて泣けました!!! 皆頑張って!(無責任 back