STAR OCEAN Sanctions of God 〜神の制裁〜







第十五章








第三部





『ってぇ…!!動けないよ!!』


動けなければ何もできないというのに…スター・オーシャンは

鎖に縛られた状態で身動きが取れない状態に置かれていた

訳が分からない二人の頭にエレナの声が響く


『その鎖こそがこの世界とFD世界を繋ぐ”セキュリティー ”…

そういう形で拘束しているとは思いませんでしたけど…

それを断ち切る事で完全にあちらからの干渉をストップさせます…

そうすればFDのプログラムネットワーク内を自由に行き来できる…

今いる空間を抜け出せます』


分からない事だらけながらプリシスとアシュトンはまずは鎖を切ろうと全体に力を入れていくが…

『あれ…どんどん力が…抜けて…く?』

鎖を切ろうとしても確実に落ちていくスター・オーシャンの力…

低下する力の中で鎖はビクともしなくなっていた

突然エレナの声が意識上で響く


『ッ……すでに神の制裁によって着実に文明が滅ぼされ…

次々に世界を形どる星が…人の心が嘆き苦しみ…

世界と連動するスター・オーシャンの力は低下する他ありません…

鎖”セキュリティー ”の強度が想像よりも上をいっていたようです…!』


意識上でアシュトンが震える声でエレナに問い詰めた


『このまま世界の文明が滅びるまで手も足も出せないってこと?』


万事休す…

プリシスとアシュトンは諦めきれずに力を入れ続けるも、力の低下を感じずにはいられない…


ズォオオオオオオオオオオオオッ!!!!

ズズズズズズズズッ…!!!!

オォォォォォ……


「うわぁああああああ!!!」

「きゃあああああ!!!」


突然プリシスとアシュトンの意識を包む暗黒…

世界から消える希望…

まるで文明どころでなく、全てが消えたかのような…


世界の終焉


手も足も…出なかった…?

そんな…


『まだです…まだ終わりません!』


エレナの声が二人の意識に響く…

存在が相当不安定なのだろう、夢でも見ているかのような気分でエレナの声が脳裏に響く


『僕達は今どうなっちゃてるの…?

創造主は文明だけを滅ぼすつもりだったんじゃ?』


エレナが辛そうな表情でセフィラの間で壁に寄り掛かっているのが情景として映る…


『この世界にもあなた達と同じように世界を救おうとした者達がいました…

その者たちはこの神の制裁の元凶…創造主であるルシファーを倒しに向かった…

ですが、倒した可能性は低いです…

今この状態はルシファーだけに許された最終プログラム…


ラグナロク…

文明だけでなく…全てを消しさる…

抗う我々に恐れを感じたのでしょう…』


プリシスは何度かレナスから聞いたことがある…

ラグナロク、それは世界の終焉だと…

ということは…

向かった英雄たちは…


『先程言いました様にセフィラの間だけは世界のプログラムと分離させています

ですので、特殊な能力を持つ絶対的な三人の英雄の意識だけは…

あなた達同様にこちらに引っ張ってこれました…』


そう言った時にその3人の声がプリシスとアシュトンの意識に響く


『エレナが言ってたもう一つの最後の希望はこの二人なのね

私はマリア・トレイター』


どこか口調が大人びた少女”マリア”の声がどこからともなく聞こえる…


『えと、ソフィア・エスティードです…!

わ、私達の能力は質量がないと存在し得ないから…?えっと…

直接手は加えられないけど…よろしくお願いします!』


そしてもう一人、どこか可愛らしい声ながら強い心が感じられる少女”ソフィア”の声


『僕はフェイト・ラインゴット…

僕達は後一歩のところでルシファーを倒せなかった…

だけど、僕達はあなた達と協力すればこの世界を世界として確立させることができる…

そのために僕達に力を貸して下さい!』


強い意志を持つ少年”フェイト”の声が響いた時、エレナが口を開く


『彼らがこの世界の英雄で、それぞれ1つずつ…3つ合わさって初めて機能する…

FD世界でも存在できる能力を持っています』


プリシス、アシュトンが他の世界で存在する事を考えるが…もちろんよく分らない…


『ソフィアの繋ぐ力「コネクション」でタイムゲートを完全に機能させられる…

フェイトの破壊の力「ディストラクション」で他の世界の物理法則を適用させ…

マリアの改変の力「アルティネイション」で他の世界で物質として存在させる…

その能力をスター・オーシャンに組み込めば完全な存在となれるの

その為にはもう一度スター・オーシャンとなる必要がある…』


アシュトンもプリシスも自己確立が本当にできるているのかさえ分からない状況…

賢者の石だってもう存在しない…

何を定義に世界をもう一度取り込む事ができるのか…?

エレナが息を整えて答える


『世界は闇に覆われました…

スター・オーシャンは唯一存在確立する

セフィラの間というセキュリティー管理部分だけを取り込んでも…

先程の鎖を断ち切る程の力は発揮できません…

星が一つでも完全な状態で存在すれば違うのですが…』


まだ…まだ…できることがあるはず…

プリシスは薄れ始める意識の中呟く


『ねぇ…?本当に世界はもう何も存在しないの?』


涙が溢れていた…エリクール2号星の皆の勇士を思い出してしまう…

”消された”事に無性に憎悪も増していく…それでもエレナに最後の望みはないのかと嘆いた

『…』

エレナはラグナロク発動時からモニターで状態を伺ってはいるが”宇宙が無くなった”

その状態で存在できるものなどないと思っていたのだ…

そう…思っていた…

だがエレナはモニターに映る表示に目を疑う


『…??剣…?』


真っ白になった世界でなぜだかセフィラの間のように自ら確立した世界を持つ”剣”が漂っていた

その剣は本当に人が持つ事が出来る程の大きさ

『剣からメッセージ…?』

エレナは予想外の出来事に驚きを隠せなかった

突然その剣からセキュリティーを通じての謎の言葉がモニターに映し出される…


その言葉に対しての"Answer"が入力できるようになっていた


プリシスとアシュトンはその言葉を見て心を震わせた…

涙が溢れる程の嬉しさと喜び…

答えなど二人にとっては簡単…

プリシスとアシュトンは同時にその答えを叫んだ



















---400年前 エリクール2号星 名無き砂漠 後3時間---




「レオンッ!!」


リヴァルの泣き声混じりの声が響く

ずざざざざっ!!!!

勢いよく地面を転がっていくレオン

頭を岩に殴打して意識を飛ばす

皆不眠不休で今まで以上の力をぶつけてくるエクスキューショナーに着実に体も心も疲れ果てていた

それでもお構いなしに増えていくエクスキューショナー

無限の敵にレオンの拳は砕けかけていた

「レオンお兄ちゃんっ…!」

シャルが満身創痍な状態ながら叫び声をあげる

地面に伏すシャルを守る形でヴァルンティスがエクスキューショナーから総攻撃を受けた

「ぐっ…」

ウェルチとフロルは既に迷宮空間へとレザードによって転送されたが、

本人は未だ守られる形で詠唱を続けていた

レザードはこの世界の紋章術全てを詠唱など必要しないはずなのだが…

刻々と過ぎる時間の中で長い詠唱を続ける

さすがに20時間程強力な詠唱を続けているせいかレザードにも相当な疲れが見え始めた

「レザードまだですか…!?私達だけではもうそんなにはもちません…!!」

レオンを起き上がらせながらリヴァルはエクスキューショナーの猛攻を受けていく

「きゃああっ!!」

レオンは未だ意識が戻らず、リヴァルがレオンを抱えて長剣をエクスキューショナーへかざす


「私達は…これを乗り越えて…幸せになるんです!平和に暮らすんです!

絶対…あなた達になど…!!!」


ヴァルンティスがこちらの攻撃に手ごたえがなくなってきたのが分かった

シャルが舞いで皆の力を強め、相手の反物質並の攻撃を緩和していたのだが…

すでにシャルは限界で目をうっすら開けているだけで息が薄くなっている…

敵は後3時間どれほどの進化を遂げるか…

恐ろしくて考えたくもなかった


「プリシス達に格好いい事言いながら…リヴァルに守られてるようじゃ…駄目駄目だね」


レオンが瞳を開いた時、レオンは勢いをもったまま拳をかざすが、ぼろぼろの拳は使わずに

体の紋章を眩く光らせる


ズォオオオオオオオオッ!!!!


レオンの前に召喚されたのは一冊の古びた黒づくめの本、威圧を放ちながら本が開くとページが次々に開かれた


”デビル・タナトスッ!”


ゴォオオオオオオッ!!!!


圧倒的な暗黒に満ちたオーラが本から放出されると、触れたエクスキューショナーごと吸収して本へと取り込んだ


”ダーク・バスターッ!”


ズギャアアアアアアアアアアアアンッ!!!!


吸収した力を暗黒の力に変換、一気に放出してエクスキューショナーを次々に消し去っていく

それでも、無傷のエクスキューショナーも存在した…

「かはっ…けほ…」

レオンも唱え終わると膝を付いてドサリと倒れこむ…

瞳を開ける気力さえレオンには残っていない…

リヴァルも心身ともに疲れ果て、めまいで立っていられなくなっていた

迫りくるエクスキューショナー

これ以上は…



















---1000年前 エクスペル 名も無き大地---





しとしとと大地に降り注ぐ雨、轟く雷

レナは薄らと瞳を明けた…

体中が重く、だるく…相当雨にうたれていたらしい

岩盤に覆われた地面は雨を吸収せずにたまっていく

それが顔の半分に達した頃にレナは意識が遠くなるのを感じて起き上がる

「ぷは…けほっけほっ!!」

上半身を起こして虚ろな瞳で辺りを見渡した


”オメザメカナ?”


その不気味な声に体中の全細胞が危険を知らせたが、倒れこんだ状態のレナの回避は間に合わない


ズガァアッ!!


「きゃあああッ!!あぐ…」

断罪者の黒く収縮する長い腕でレナは張り倒されて地面を勢いよく転がった


”ズイブント オキナイカラ…コロシテ シマオウカ

マヨッテイタ トコナノダ”


レナは今の一撃で目を覚まし、腰からオーマを抜き取る

強く握るもレナの力は半分も入らない…

長い時間雨にうたれて体温と体力を相当奪われたらしく熱っぽく、ダルさが残る最悪の状態

それでもレナは凛々しく構えて見せた


”ホウ…

ソノ ユウキ ドコカラ ワクノダカ”


レナは何も答えずに状況把握のため、無言で辺りを見渡す

雨で視界がぼやけながらも辺りは良く見れば断罪者が数メートルおきに地平線まで立っていた

ざっと軽く万単位、断罪者一人でも相当な力を保有している事は分かっている

相当危機的な状況におかれながら冷静にレナが断罪者に問いかけた


「この星の人は…エクスペルの人は…どうしたの」


断罪者のエクスペルの人々を滅ぼすもくろみを断ち切り、未来に繋げること…

そう、それが1000年前のエクスペルに来た理由

未来の様々な運命の出会いと戦いのため…

守り抜かなくてはならないのに、辺りに民家すら見当たらない…

断罪者がけたけた笑いながら長い腕を雨が降る空に向けて広げた


”ワタシ イガイ ノ ワタシ ハ スベテ…

モトハ コノ ホシノモノ”


レナの前髪は雨で濡れ、滴り、目を覆う

歯を噛みしめ、震える手でオーマをギュッと握りしめる

既にこの星の人々は断罪者の手に落ち、漆黒の闇に染まった…


「許さない」


その怒りは助ける事ができなかった自らの不甲斐無さ

そしてこれを見せつけるためにレナを生かしていた断罪者…

漆黒の闇で包まれた星の人々にもちろん意識など存在しない

断罪者は愉快そうに不気味な声でレナへと語りかける


”ゲーム ヲ シヨウ

ルール ハ ムズカシク ナイ

ワタシ ヲ タオセ

ワタシ ハ タタカワ ナイ

ワタシ ハ ワタシ イガイノ

ワタシ ヲ タオサ ナイト タオセナイ”


愉快そうに断罪者は手を叩くと他の断罪者が動き出す

星の人々を皆殺しにしなければ断罪者本人を倒せないルールなど呑めるはずが…


”ソシテ オマエ 二 キョヒケン ハ ナイ”


辺り一帯にいる断罪者が断罪者本人の影などであるなら躊躇はしない…

だが…愛すべきエクスペルの人々にレナは刃を入れられるはずがない

何より、この中に確実に将来旅を共にする者の祖先はいる

そして一人一人が歴史を作る星の文明の中で誰一人でもかければ歴史がずれる…

断罪者本人は上空へと飛び去ると他の断罪者が一気に突っ込んできた


”キハハハハハハハハッ!!!”

”キヒヒヒヒヒヒッッ!!!”



ギィン!!

ガキャァン!!

「くぁッ…!!」

一斉にレナを円状に囲って、長い腕と共に攻撃をしかけてくる断罪者の攻撃をオーマで数撃受け止め

その都度、断罪者の急所を突こうと体を動かすも躊躇して反応が鈍り…そして何より敵の量があまりにも多すぎた

十数秒で防ぐどころの問題ではなく零距離からの密集無差別攻撃にレナはなすすべもなく敗北



どが!ずがぁっ!!ズンッ!!

「がはっ!!かはっ!!!あぁぁあ!!!」

どしゃぶりの雨が降る中、空にはレナの悲痛の声が絶え間なく響き

レナの周りを断罪者が間近で円を囲み、断罪者本人だけがレナを攻撃し続けていた

ゲームのルールにレナの敗北は含まれていない…


”ツマラナイ ホラ ゲーム ハ 

ワタシ ヲ タオシテ オワリナンダ カラ

テイコウ シテ ミセロヨ

ニンゲン ノ ミニクイ スガタ ガ ミタインダ”


レナの瞳は既に光を失い…

「あぁ…」

一瞬の攻撃が止んだ時には痛みに涙を零していたが、すぐに痛みの連鎖が訪れる

唯一右手に掴んでいるオーマだけが…


”ナンダ? コノ ナマクラ ノ ケン ガ ダイジ ナノカ?”

ガキンッガキンッ!!


「やめ…て…おね…がい…!」


意識がほとんどないレナがこの時ばかりは体中を痙攣させながらもオーマへと手を伸ばす

断罪者の攻撃を幾多も浴びせる内にさすがのオーマも…


ガキィンッ!!!


レナの右手から抜けたオーマは刃が砕け散る

その様を見ながらレナは大粒の涙を流し…

意識が遠くになるにつれ、レナは周りで自分を見ている断罪者から涙が流れているように見えた

断罪者本人に闇に染められた星の民は断罪者の姿のままでも…


助けを求めている…


あぁ…


結局、未来で必死に頑張っているプリシス達を守ると…

未来に待つ運命を…壊させはしないって…

その為に来たと言うのに…

助けを求める星の人々に刃を向けられず…

どちらも守れない…


すぐに雨に流される涙、体中が痛みを通り越して麻痺し…

後は瞳を閉じれば地面に溶けれる気がして…ゆっくり瞳を…







ォオオオオオッ!!!


その時かすかな意識が大きな轟音、光を感じ取った


ずざぁあああ!!


断罪者本人が地面を転がっていくのをレナの瞳が捉える…







その時雨が止んだ














この地エクスペル…脅威に襲われ

民苦しむ時

異国の服をまといし勇者現れん

彼の者

光の剣を構え































*こめんと*



毎度亀更新で申し訳ないです

ということで…!!

皆さん普通だったらおかしくなるような精神状況で限界の戦いをしてもらいました…

フェイトとかの名前は最初ださないかなぁと思ったんですが

もうネタばれ前提なこの小説は構わず突っ込みます

フェイソフィマリの圧倒的な力をスターオーシャンへ…

デリートされた世界に漂う剣…

最後に繋がった最後の希望達!

まさか、クロレナらぶな私がクロードを他世界に送ったままにしませんよ?

最初小説を書き始めていた時、このクロードの登場だけは最後として決めていました…

だって皆の希望だもの!!


クロードが来た事によって三つの世界がどう繋がるのか…

世界が消えた星々の大海で…

自らの存在意義を見出す…!



次回…最終話



こうご期待!!!


2009/10/12  蒼衣翼 




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