STAR OCEAN Sanctions of God 〜神の制裁〜







第十五章








第二部





---聖王国シーハーツ シランド城 最後の防衛戦城---








「どうして…?」

プリシスは疑問と共に嘆きかけるようにバンデーンに答えを求める

このバンデーンはなぜ私達を知っている…?


「代々受け継がれる波動は…

記憶を持っています…」


それ以上理由などいらない気がした

ここでどうこう言っている場合でもない

目の前に迫る圧倒的なエクスキューショナー


「我々はこの世界が終焉を迎えるその日まで…

この者達とともに生き延びます!」


行動の早さもディブル元帥に似ていて、その若々しいはつらつとしたオーラは全てのバンデーンを動かす

騒然としていた民衆達も荒々しくないバンデーンと背を向けて立ってくれている事に感動すら覚えていた

たたっ!

「ほっらー!時間マジないって!!!」

先陣を切ったウェルチが差し棒片手に駆けて行き、続いて隠密服のままのエレナは中々の身のこなしで駆けて行く

それを見ていたシーハーツ女王はくすくす笑いながら答えた

「さ、私からの命令です…私達を気にせず行ってください」

女王を護衛する使命感で少々躊躇しながらも、タイネーブとファリンも駆け出す

「クレアはどうしたいのですか?」

女王直属の隠密部隊"クリムゾン・ブレイド"の隊長を務めるクレア・ラーズバート…

部下のタイネーブ、ファリンが駆けて行く様子を見ながら首を横に振った

「私は直属の隠密護衛部隊の隊長です…

ネルにはネルのなすべき事があったように…

私には私のなすべきことがあります」

その一言に限るのだろう…

シーハーツ女王はもう何も言わなかった…

「がはははは!!!ほれ!!行くぞクレア!!」

クレアの父アドレーが盛大な雄たけびと共に突っ込んで行くのを見ながら二人でほほ笑む


「ちょっと…!皆!」

アシュトンを抱えて坂を降りて行くプリシス

さっきまでの不安などどこかにいってしまったかのよう…

先ほどのバンデーンがプリシス達の後ろ姿を見送りながら手を天にかざす


「全艦隊…発進ッ!!」


ゴオォオオオオオオ!!


轟音と共にバンデーン艦が10隻程現れ、駆けるプリシス達

巨大なエクスキューショナーを排除しながらバンデーン艦が守りにはいる

「ふふふ…」

ついアーリグリフ王も先を駆けて行く者達に心踊らした

一度瞳を閉じると揺らぐ闘志と共に瞳に力を込める


ばさっ

アーリグリフ王がマントを翻して皆に呼び掛けた


「救世主方は自らの力で進んで行った!

我々がすべきことは決まっている…!

我々の力を見せつけ!戦いに勝ち…生き残る事だ…!!

全軍…」


「「出撃!!」」

ドドドドドドドドドドッ!!!!


アーリグリフ王と共にシーハーツ女王も一斉に前方に手をかざす

黒き鎧を纏いしアーリグリフ、黒き装束と隠密…共にシーハーツ共に勇敢に生き残った精鋭達…

前力を込めてバンデーンと共にエクスキューショナーに向かっていった

民衆の歓声…

武器を持ち、生きる形を示す者達…

この世界の終焉の風がなびいた









「言ってませんでしたが…

セフィラの間で宇宙との融合を果たすまで…

アシュトンとプリシスは融合しないでください」


いざエクスキューショナーの間を駆け抜ける生死の狭間へ突入する時に…

エレナにそんな事を言われた二人はえぇぇええっの叫び声とともに全力で駆けだし始める

「大丈夫ですぅ…私達が命に代えてもお守りしますぅ!」

ファリンの間の抜けながらどこか強さのこもった声

タイネーブもその言葉におおいに頷いた

「もちろんです…!」

ファリンとタイネーブがダガーを軽やかに取り出し、駆けながら戦闘態勢に入る

タイネーブが詠唱を軽く呟くとダガーに雷を纏う


「封魔雷迅双風撃ッ!!」


ズギャアアアアンッ!!!


ズオオオオオオッ!!!


風を斬る暗黒の雷が待ち構えるエクスキューショナーに直撃

それと同時にバンデーン艦の空を切るエネルギー波動が空のエクスキューショナーを一掃する

ゆっくり近づいてきていただけだったエクスキューショナーの目つきが変わったかと思うと…



”マッショウスル ”



一斉にエクスキューショナーも総攻撃に入った

「でぇいやぁっ!!」

天使型で人間と類似した姿の”代弁者 ”

様々な大きさと質量で迫る”執行者 ”

プリシスは軽々しい身のこなしで代弁者を勢いづけては蹴りつけ、踏み台にするようにより前へ進む

「おっとッ」

乗り越えた先に執行者が待ち構えるも…


「アイスクライシスッ!!!」

ピギィイイイインッ


アシュトンの紋章から生み出された絶対零度が前方のエクスキューショナーのみを一瞬で凍てつかせ、

地面に一気に叩きつけて粉々にしていく…

それでも延々と湧くエクスキューショナー…

「さっきより確実に増えてるよ!!」

おおおおおッ

「わッ」

プリシスが眉を潜めている間にエクスキューショナーの攻撃が油断したプリシスをとらえた

地面の呪縛紋章に足を取られて地面を転がる

「ちょっ…!!…え!?」

迫るエクスキューショナーにそこら中を擦りむきながらプリシスは目を細めた

「プリシスぅ!!!」

アシュトンの叫びと共にタイネーブがプリシスを抱えて走り出す

「あなた達は私達の希望なんです!!こんなところで…!!」

タイネーブは体中に負った傷の痛み、体力の限界が近づいているのか相当な汗を流して息をついていた

「タイネーブ!!無理しないでくださぁい!」

追いついてきたファリンが心配そうに周りのエクスキューショナーを怯ませる一撃を放つ


「炎天双列波ッ!桜乃太刀ッ!!」


ズギャアアアオォオオッ!!!


炎を纏うダガー二本を逆手のまま前方に投げつけると、超高温の桜吹雪が

エクスキューショナー達を燃やし尽す

エレナが心配そうにそんなタイネーブとファリンを後ろで駆けながら見つめた

「エクスキューショナーに全力の攻撃じゃないと倒せないって言っても…

もう限界なはず…それに…」

奥に行くにつれてエクスキューショナーの量も増えている…

「予想以上の多さにびっくりよっ!!」

ウェルチがなぜだか差し棒だけでここまで乗り切っているが…

エレナは既に外部に影響されないフィールドと共に拳程の大きさの球体の光と化していて外部に手を出せない

プリシスとアシュトンは失速しながら囲まれ始める現状に辺りを見渡し始めた


ズッガァアアアアンッ!!!


激戦を繰り返すバンデーン艦とエクスキューショナー…

それでもエクスキューショナーの零距離などからの滅茶苦茶な強さの攻撃の数々に…

次々にバンデーン艦が落とされていく

「また…またバンデーン艦が…!!」

400年前のエディフィスでの戦いを思い出した二人

このまま…終われるはずが…!!


ウェルチが唇をかみしめて決断した


「私がおとりになるから進んでッ!!!」


ウェルチは差し棒をブンブンと振り回しながら前方に飛び込むと差し棒を地面に突き立てる


オォオオオオッ!!


蒼き紋章が差し棒と共に展開

差し棒が轟音を立てながら月型神器へと変化

ウェルチの瞳が紅く染まり、金色の髪が長くなびいていき

漆黒のドレスを纏うと華麗に宙に舞い…天高く上がっていく

紅き羽がウェルチを包むとイセリア・クイーンへと姿を変えた

圧巻な光景にタイネーブとファリンが唖然とし、エレナが頷いて答える


「私がこの辺りの地上部のエクスキューショナーを相手にするから…!」


そう言って月型神器を振り回し、空を覆う紋章が展開、無数の眩い光がウェルチを覆う


「イセリアルゥッ!!!ブラスタァァアッ!!!!」


ズギャアアアアアアアアンッッ!!!!


無数の光一つ一つがイセリアルブラストを上回る威力…

無数のエクスキューショナーを光へと変えていった

その強さはまさにイセリア・クイーン

倒した倍のエクスキューショナーが再び数秒で現れる

それでも表情変わらずに月型神器を大きく振った

もう…プリシス達に顔を向けることは無い…

圧倒的な力を排除しようとプリシス達付近のエクスキューショナーの視線がウェルチへと向けられる

執行者が放つ光の輪…ジーネを一瞬で光に変えた輪がウェルチを球体を描くかのように無数に囲った


ゴォオオオオオオッッ!!!!


一斉にウェルチを一瞬で包むように輪が縮まるも、ウェルチは無言で粉砕

ウェルチは一瞬…哀しみ混じりの表情で、駆けだすプリシス達の背中を見つめた


「こんなのでこの世界を粛正しようとした罪滅ぼしだなんて…

甘いかもしれないけど…

これが私の最後の…技!

いっくわよぉお!」


汗を滴るのを腕で拭きながらウェルチは笑顔で月型神器を天に振りかざした


「イセリアル・ビッグバンッ」


チュドォオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!


ウェルチを中心に次元を歪ませる未知数の質量球体波動が辺りを覆う

エクスキューショナーさえ存在を保てない次元フィールドは無限再生を不能にした

「うぁあああああああああッ!!」

そこの次元フィールドの中心でウェルチは発狂しながらこの空間を保ち続ける…

「どうかっ…どうか…この世界がっ平和で…ありますようにっ…」





今のウェルチのイセリア・クイーンの力など復元した一部…

エレナはぐっと唇を噛みながら振り返らずにプリシス達を追いかける





---聖殿カナン 隠し道---



「この奥にセフィラの間があります!!」

タイネーブが天井から華麗に着地すると次々に降りるプリシス達と共に再び走り出した

すでに聖殿と言われる風貌はなく、天井が今にも崩れそうな状態…

遠くにセフィラが輝く空間が見えて皆が一息つくも油断できない

後ろから小型のエクスキューショナーが次々に押し寄せてきていた

「とにかく走って!!」

エレナの声とともにタイネーブとファリンが後ろの相手をしながら隙を作っていく

後ろは見ずにプリシスはアシュトンを抱え…肺が焼けるかのような息切れをしながらも…

足がガタガタでこけそうになりながらも走る…

直前まで迫るエクスキューショナー

このままセフィラの間まで…もたない…?


「ファリン…秘奥義いくよ」


タイネーブの一瞬の判断でファリンも一瞬の構えに入る

体に刻まれたタイネーブとファリンの紋章が輝く

エレナがその構えにボソリと呟いた

「隠密としての究極奥義…」

ざあぁあああああッ…


ざぁああ………


風が一瞬吹き荒れるとピタッと止まる…

タイネーブとファリンがゆらりと動くと残像を残しながら影のように黒くなり消えた

………………

「あれ?二人は…?」

アシュトンの声…無音の空間に広がる違和感

………………

もう一度瞬きをする頃には止まったままのエクスキューショナー達の奥に

黒い霧を纏いながらタイネーブとファリンがダガーを両手に背を向けて立っていた


「「幻影黒天疾風迅」」


その二人の声は耳からでなくどこからともなく空間に響く


”がぁああああああああああああ!!! ”


その瞬間に止まっていたエクスキューショナー達が叫び声をあげながら一瞬で消滅した

アシュトンのリーフスラッシュ以上の無…暗黒…

「はぁ…はぁ…一瞬で…」

プリシスは走り続けた肺に大きく酸素を取り込み…足を止めて大きく息を付く


「行ってくださぁい!!!」


ファリンのおっとりしながらも木霊す声、背を向け震える右手を抑えながらダガーを持ち替えた

タイネーブとファリンの目の前には再びエクスキューショナー達が迫る


「私達は私達にできることを尽くします…

だから…!!行ってください!!!」


タイネーブがそう叫んだ時には迷わずプリシスとアシュトンは走った

「私達の…やるべきこと…!!」








---聖殿カナン セフィラの間---



セフィラの間だけは全くダメージを受けておらず…

神聖な場所としての面影を残していた

400年前と変わらないセフィラの輝き…

それを手に取り、そっとポシェットから賢者の石を取り出すプリシス


「準備はいいですか?」


エレナがそう言うと二人は大きく頷く


「すでにセフィラは全宇宙のマザープログラムと繋ぎました…

後はアシュトンの融合定義…宇宙の理は賢者の石が全て補ってくれます…

指示は私がこの独立したプログラムで作成したセフィラの間で行いますね」


エレナがセフィラのリミッターを解除


「簡単に説明しておきます…

この世界はFD世界にとって作り出したプログラムの中の世界に過ぎない…

ですが…この世界はすでにFDが手に負える領域にない…

創造主…ルシファーもこの仮想世界への制裁を強めている…

ですから…このプログラムの世界から抜け出してもらいます

あなたたちにはあたなたちの世界を…

目を閉じて…全てを感じ取ってください…目を開けたときには…

あなた達は…この”世界 ”となります」


息を少し付くと二人は呼吸を合わせた

賢者の石をアシュトンが取り込み、セフィラにプリシスとアシュトンが触れる


オォォォォォォオオオオオッ!!!!!


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッ!!!!


眩い光と共に全てが一体となるのを感じた…



宇宙創生の原理…

星…

大地…

海…

風…

そして人の…想い…

今は神の制裁によって人々の苦しみ…悲しみが世界を埋め尽くしている…


『プログラムで造られた世界だとしても…

僕達は今こうして生きている…

いこう…

神の制裁から星々の大海(スターオーシャン)を救うために…』




オオオオオオオッ!!!




『人の希望をッ!星の想いを…!

銀河すら飲み込んでッ!!


宇宙融合ッ!!スター・オーシャンッ!!』


   

ズォオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!



目を開けた時…プリシスとアシュトンは世界を取り込んだ一個体の姿へと変わっていた…

辺りは真っ白でほとんど何もないプログラムの世界…

そこで漂うかのように存在するスター・オーシャン(プリシス・アシュトンと世界の融合の総称)

FD世界から見れば仮想世界が個体化したということ…それは脅威でしかない…



そして終焉の鐘が鳴った…














*こめんと*



ついにスター・オーシャンとなりました…(なんだかデザインは凝ったら酷い状態になりそうなのでこのぐらいで止めました☆

無言で融合してもらうのがいいかと思いきやなんだか熱い

●スター・オーシャン説明

FD世界のプログラム空間(電脳世界?)の中で通常はプログラムの0と1の情報体なのだが

0と1の情報体のままプログラム世界で個体として存在を1とした世界そのもの


分り辛い部分もあると思いますので、現状態をおさらいです!

●1400年前(2から1000年前のエクスペル)

レナが断罪者を追う(断罪者は全ての始まりを過去から断とうとしている)


●400年前(2の時間軸)

レオン、リヴァル、ヴァルンティス、シャル、レザードの五人で

24時間のエクスキューショナー戦(この戦いの勝ち負けは400年後には影響ないが…)


●現時間軸(3の時間軸)

神の制裁が始まり、様々な星が、文明が崩壊

その中で自らの世界の自己確立をするため、世界を意思のある一個体(スター・オーシャン)へ


このお話も数える程となってきました…

これもみなさんの応援あってこそです!

ありがとうございます!!



全ての時間は終局へ…!




こうご期待!!!


2009/08/8  蒼衣翼 




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