STAR OCEAN Sanctions of God







第十三章






第一部









---グランド・ノット---






「まだ覚醒しても神の力はその程度…残念だわ…」

ヴァンが壁にめり込んだ状態でイセリア・クイーンに首を絞められていた…

「ぐッ…レザードでぶっ放しすぎたか…!」

イセリア・クイーンはクスクスと笑いながらヴァンから手を離す

ヴァンは体中が麻痺し…そのまま見逃される自分が悔しくて…

ひたすらに歯を食いしばる…

「あのエルフの子も凄い力だけど…幼すぎて守護神も上手く力を出せていない…

フレイの魂を持った子も力任せ過ぎよね…フフ…」

シャルとアーツは歌を奏でる前に一発で沈めらた…

レイアもイセリア・クイーンの速さに到底及ばずに地面に伏している…

イセリア・クイーンはゆっくり負傷したレザードの元へ向かう

「さて…私を…どうしますか?クククッ…」

レザードが薄気味悪い笑い方をしながらイセリア・クイーンを見上げた

「別にこの子達を倒すつもりはなかったのだけれど…

挑んできたのだから倒さないと可哀想…

それは私の宿命…

でも…あなたは許さないわ

この世界の秩序を奪った上に…

宇宙の文明を破壊しようなんて考えているんですから…」


レザードは小ばかにするような笑みを浮かべるとゆっくり立ち上がる

「あなたが開放されたという事は…

創造主はもう…何かをするつもりなのですね…?」

イセリア・クイーンが冷えた表情で答えた

「そうね…まず一番危険なあなたを消すように言われているわ…

創造主の監視とコントロールはこの世界では今のところ私を通してでないと出来ない…

オーパーツを解いたのね…

知らなくてもいい事いっぱい知れたでしょう?」

レザードは大きく高笑いし、大きく頷いた…

「そう…大変面白かったですよ…クククッ

すみませんねぇ…イセリア・クイーン…

FD人であるあなたの精神を封印していて…

さぞかし…FDでは大騒ぎだったのでは…?

いつになってもFDに意識が返ってこないってねぇ…!」

イセリア・クイーンは無表情でレザードの瞳を見つめている

「そこまで知っている者をこの世界に存在させた事に苛立ちを覚えるわ…

そろそろ消えてほしいのだけれど…すぐには死にたくないでしょう?

創造主から直接遺伝子書き換えてもらう?」

またしてもレザードが大いに笑ってイセリア・クイーンを侮辱した

「個人情報等…既に存在するモノは書き換えられなくしておきましたが…?」

イセリア・クイーンの表情が変わり…既に大きな月の鎌をレザードに向けている

「データのくせにハッカー風情な事してくるのね…」




「待ちなさい…」


レザードがどこか呆れた様子で息を付く

イセリア・クイーンがふり返ると…

そこにはレナ達が立っていた

「あら…?どこから来たのかしら?

この散々にやられた三人の仲間かしらね?」

レナが鋭い眼差しでオーマを抜き…構えて見せる


「私達はレザード・ヴァレスを倒さなくちゃいけないんです…!

そしてこの世界の創造主もッ!

邪魔をすればあなたも倒しますッ!」


イセリア・クイーンが関心しながらレナの元へ歩み寄った


「このレザードの文明崩壊を阻止しようとしてここまで来たのね?

それは簡単に成し遂げられる事じゃない…尊敬するわよ…

でも…創造主の名を出してしまったら…私はあなた達も排除しなくてはいけない…

それは創造主が一番恐れている事だから…」


レナは威圧を感じた後に目の前に迫るイセリア・クイーンの残像を見るのが精一杯だった

ガィンッ!!

「リヴァル…」

イセリア・クイーンの攻撃を片手剣で受け止めながらリヴァルは微笑んでいる…

「相手がイセリア・クイーンは強すぎます…

レナは負傷した三人の治療を…」

レナがオーマを握り締めながら首を横に振った

「私は戦いたいのッ!」

イセリア・クイーンがどこか含み笑いをしながら、リヴァルの片手剣から月の鎌を弾いて後ろに引く

「仲間割れしてるようじゃ話にはならないわよー?」

レナを守るようにリヴァルが片手剣を持って構えに入る


「レナ…焦っちゃいけません…

相手を見てください…

勇敢に戦うのと…

無謀は別です…見極めて下さい…

確かにクロードの意思を受け継いだかもしれませんが…

レナはレナです…絶対に今クロードの代わりに戦う必要なんてないんです」


レオンが頷きながら一仕事終えてレナの前に立つ


「レナの治癒の力はレナにしか使えないんだよ…?

今は身を引いて負傷した三人奥に置いてきたから…

治療してあげて欲しい…」


レナが唇を噛み締めながらじりじりと身を引いていく

皆の言葉がレナの迷いを…焦りを取り払ってくれた…

「ごめん…二人とも…ありがとう…」

オーマを鞘にしまってレナはヴァン達の元へ向かう

「さすがに倒す人数を増やされるのは困りますよ…?」

イセリア・クイーンの姿が目の前にくるまでレナは気付かずにいて…

振り下ろされる月の鎌

「あれ?どうしたの?ヴァン達を倒した割には…あぁ…

やっぱり疲れが出ちゃうよね?」

イセリア・クイーンの後ろでプリシスがフェイズガンを構えていた

「ッ」

その気配に気付いてとっさに後ろに鎌を振り回す

ガィィンッ

「おっわー…アシュトン双剣使い辛くない…?」

その鎌をアシュトン…小さい無人君らしきモノが双剣を持って弾き飛ばす

「な、なにこの生命体ッ!?」

イセリア・クイーンもびっくりする筈だった…

機械なのか生命体なのかよく分からない物体が目をパチクリしながら双剣を構えているのだから…



腕や足は関節がないのに粘土のように動き…機械のようには見えない…

「こんなモノが出来るほど世界は高度に…」

その間にレナはヴァン達の元へ…

もうイセリア・クイーンを逃がす事はない…

「まぁ…すぐにあなたちを倒せば済む話…なッ!?」

目の前ではプリシスの腕に装備されていなかった筈のプリシスをゆうに超える巨大な銃が突いていた

時間と物量法則的には無理なでかさの銃口をイセリア・クイーンにつきつけている

その後ろでは既にレオンが拳を唸らせていた

その一瞬がイセリア・クイーンの大きな隙となる


「その身に刻みなさいッ!!」


イセリア・クイーンが気が付く頃には後ろにレナス・ヴァルキュリャアが弓を放っていた


「神技ッ!!」


足元に矢が眩い光を放ちながら波動を生み、イセリア・クイーンは足元をすくわれて宙に浮いた途端…

イセリア・クイーンは蒼い光に包まれ…身動きが取れない状態へ…

「なッなに!?この技…!!こんなエネルギーこの世界には…!!」

その言葉にレナスが悲しみながらぽつりと呟く

「これでは、イセリア・クイーンの名が泣くわ…

あなたは…私の知りえるイセリア・クイーンではない…」

レナスは右手を高々と上に上げた


ゴゥンッ

ゴゥンッ

ズギャァンッ!!!


気高い三本の槍がイセリア・クイーンを貫き、完全拘束する


「なぜ!?私はイセリア・クイーンよ!?こんな…まさかッ」


レナスは鋭い目つきで息を整えた

「プリシス…」

プリシスが元気良く笑顔で答える


「おっけぇええッ!!」


手に装着した物理変形したアシュトンと共に銃口をイセリア・クイーンへ…


実際無人君はアシュトンのアンカース一族の魂が入ったことで機械よりも生命体に近くなった…

エナジーストーンによる元々アシュトンが持っていた紋章遺伝子の制御による…

紋章術の【紋章による自然摂理を捻じ曲げ、物質を変換する】効果を…

紋章が遺伝子に既に刻んであるアシュトンは自らの自然摂理を捻じ曲げ、体の物理分解を可能にした

他の物質と融合する際は物質に強い意志と意思理解があれば可能…



「故に一番理解し合い、心を共有するプリシスとならッ

アースホープにも変われるッ!

だから僕はアースホープを放つッ!」


プリシスがにんまりと笑って自分とアシュトンの意思の元…


「アースホープ発射ぁッ!!!」


ズゴォオオオオンッ!!!


「ぐあぁあああああああああッ!!」


緑色の閃光は天井を突いて宇宙空間まで伸びているというのに…

直撃を受けながらも未だ体と意識を保っているイセリア・クイーン

「ぐぅ…かは…この世界の攻撃じゃ…そうそう倒されないわよ…?」

だが、まだ蒼いオーラに拘束され…身動きが取れない…

プリシスが下がってレオンが速攻前に出た

「ちょっと卑怯臭いけど…この際だしね…

いくよ…クロード直伝ッ!!!」

レオンの拳が蒼白く燃え上がり、青き龍が渦巻くッ!


「青龍…激流撃ッ!!!!」

ズゥォオオオオッ!!!

ズァアアアアアアンッ!!!!


「がぁああああああッ!!!!」


巨大な青龍がイセリア・クイーンを突き抜けていく!

大きさや威力はクロードには及ばないものの…

イセリア・クイーンの命を削るには十分な威力だった

それを見ているレザードはただひたすらに高笑いしている

「さすが幻想世界までも抜け出した勇士だけありますね…

この世界の次元を超えている…

クックック…アッハッハッハッ!!!!」

レザード付近まで吹き飛ばされたイセリア・クイーン、体を震わせながら起き上がった

「ぐッ…この人間の…データの分際でッ!!がはッ!!」

そう言う前に再びレナスの矢で宙に打ち上げられ…高貴な槍に体を突かれる


ゴゥンッ

ゴゥンッ

ズギャァンッ!!!


「ぐぅ…こざかしいッ…!」


ヨタヨタ…

少しよろけ気味ながらレナに速攻治癒してもらったレイアがレナスの横に立った

「一緒に…いいですか…?私の中のフレイさんが疼くそうです…」

レナスは無言で頷いて息を整える

「ふッ」

高らかに飛び上がるレナスは蒼く辺りを照らす光の羽を自ら舞い上げ…

「たッ」

レナスと同等の高さに舞い上がるレイア…既に表情が大人びて…目つきが変わっていた

「レナスッ!」

ヴァンの声と共にどこからともなく飛んでくる槍にレナスはとっさに手に取る

それはグングニル…レナスはフッと笑ってグングニルを構えた

グングニルは蒼きオーラを放ち…燃え上がる…

ゴォォオウッ!!


二ーべルン・ヴァレスティッ!!


レイアの大きな構え…

両手に大きな光達が集まっていく

グゥォォォォオオオオッ!!


エーテルストライクッ!!


ズギャァアンッ!!!!

ズゴォオオオオオンッ!!!!


「きゃあああああああああッッ!!」


とてつもない威力の攻撃にイセリア・クイーンの一瞬意識が吹っ飛んだ…

だが、そのグングニルがイセリア・クイーンを貫くと共に

イセリア・クイーンを覆っていた眩い光のオーラが圧縮されていき…


ブゥゥォオオオンッ


ズッガァアアアンッ!!!!


眩い蒼い光の爆発と共にイセリアクイーンは上空を舞って地面を転がった…

それでもイセリア・クイーンはフラフラと立ち上がって見せる

プリシス達が再び構えるがイセリア・クイーンが首を横に振った


「封印から解かれたばかりの私は…ここで死ぬ訳にはいかないの…

ただ私が授かったのはレザード・ヴァレスを可能なら裁く事…

貴方達がどうにかしてくれるのかしらね?

まぁ…無理そうだったら創造主が違う処置をするまでだと思うけど…

だから私はここでこの世界から一旦失礼させてもらうわ…

久しぶりに強い人間と戦えたのは光栄だけど…

くふ……フフフフ…」

そう言うとイセリア・クイーンは背を向けてゆっくりと光になって消え始める

「ちょっと…!待ちなさいよ!」

プリシスが納得いかない様子でイセリア・クイーンの後姿を睨みつけた

そしてイセリア・クイーンは徐に振り返る


「そうそう…あなた達もレザードに等しく十分に危険ね…

だってそのレザードをここまで追い詰めて…

私をここまで追い詰めた…

だから…あなた達も…創造主に消される対象になる筈よ…?

フフフ…アハハハ…」


しかめっ面でプリシスはイセリア・クイーンを最後まで睨んでいた

アシュトンがハッとしてレザードを探す

先程までいた場所にレザードはい続けており…逃げるつもりはないながら

表情は未だ薄ら笑っている

「クックック…あなた…確かアシュトン・アンカースですね?

なんて哀れな姿だ…私の下僕の方が良かったのでは…?」

ちょこんとプリシスの前に立つアシュトン

その目は可愛らしくも威圧感でいっぱいであった

「僕はエクスペルで魔族と人との…架橋になれた…

連邦との戦いで悔いのない死に様をしたッ…

そしてディアスも仲間を守る事でこれからの己を犠牲にしてくれたッ

なのにッ!!お前は僕達の魂を呼び起こしッ!

人としての気持ちをッ!プライドをもてあそばれたッ!

その罪は重い…覚悟しろッ!」


その威圧と気持ちの熱さにプリシスは唇を噛み締めて素手で構えてみせる

それでもレザードは表情一つ変えずに笑う

「クク…私の知ったことではありませんねぇ…

それにどうです…?幻想世界を脱出したという事は…

仲間を二人犠牲にした…」

プリシスが前に乗り出し始め…拳に力を入れ始めていた

「もしもで考えてはいたのですが…まさか抜け出すとは…

一応…犠牲者が一人ではそれが強いなら良いのですが雑魚ではしょうもないので…

もう一人犠牲にしてもらう構造にしました…

ですが…まさか中の私が犠牲になるとは…満足いただけましたかねぇ?クックック…」

アシュトンとプリシスが振るえながら我慢していたが…ついにプリシスがきれる


「ふざけないでッ!!

一人の仲間を失うのに…どれだけ仲間が悲しんだか…!

それに犠牲になんかしてない…

クロードは私たちの背中を押してくれてるのッ!!」


その言葉にレザードは小ばかにした様な表情で口元をにやつかせた事で…

アシュトンもきれた


「ふざけるなぁッ!!!」

ガキィンッ!!


自らの腕を双剣に変えてレザードに切りかかるもリヴァルに止められる

「リヴァル…僕は本気で…!」

リヴァルは首を横に振った

「アシュトンも熱くなってはいけません…

ここでレザードを殺したところでレザードは後悔の念を抱いていません…無駄です…

…レナスお願いします…」

リヴァルがフッと意識を飛ばすと目つきが変わり、レザードへの目線が変わる

「相変わらずね…レザード…」

レザードは少々微笑むと目を閉じて頷く

「神として存在しないヴァルキュリア…

より私の焦がれる存在であるにしても…

やはり人形のようなアナタより…

目の前にいる活き活きとしたヴァルキュリアには敵わない…



そんなアナタを手に入れるのはどうすれば良いのでしょうかね…」

レナスは哀れみの瞳でレザードを見つめた

「私の意識はもう…二度の人生を生きた…もう…私も永遠の眠りにつきたい…

レザード…あなたが罪滅ぼしをしてくれるというのなら…

私はあなたを救う事を約束する…だから…」


「嫌だと言ったらどうします?」


レナスは表情を変えずに片手剣を抜いて地面に突き立てる


「私は昔のあなたに感謝しているの…

あなたがいたから進めた道もあった…

”仲間 ”として救いたいの…」


レザードは首を横に振りながら立ち上がった…


「そんな心はとうに幻想世界に閉じ込めてしまった…

申し訳ないが…ヴァルキュリア…

私は罪など償うなど不可能な程に過ちを犯した…

ただ私は目の前の強き勇ましい者達の悪を最後まで演じきりたい…」


そうレザードが言うとフラフラとした足取りで後ろに下がっていく

「これが…私の最後の…混沌…」

下がりながら元いた場所に大きな紋章を描く


グォォオオオオオオオオッ!!!


その紋章からとてつもない黒いオーラが吹き出て、グランド・ノットを包んでいく

威圧感のある黒い光…

「何…!?アイツ最後に何を…ッ!?」

プリシスがアシュトンを抱えた状態で後ろに引いていった

アシュトンがその気配を感じ取る

「僕がレザードに操られていた時のオーラと同じ…」

レナスは哀れみの表情を見せてリヴァルに意識を戻して後退

「皆…気を付けて…この感じ…覚えがある…」

後ろに下がっていたレナがオーマを構えた状態でプリシス達と合流

「まさかとは思うんだけど…いや…」

手伝いをしていたレオンも拳を唸らせる

「俺は知らねぇ感じだが…なんだってんだ…」

ヴァンが治療を受けてレオンの横で肩をブンブンと振り回す

「お姉ちゃん!いなくて心配したよぉ!」

シャルが引いてきたレイアに抱きつく、レイアはそのオーラの元を見つめる

未だシャルの周りを回る球体なアーツは声を響かせた

「なんでプか…?まさかこの狭い所でアポトロディウス…?」


コツコツと歩く音が多数響きながら黒いオーラを初めに抜ける人物…

レナがその人物を見つめて…首を横に振ってその現実を否定しようとする

その人物を先頭に次々と姿を見せる…者達…












「十賢者ッ…!」











*こめんと*


ついに幻想世界を抜けたレナ達…

そこに待ち受けていたのはイセリア・クイーン

レナスの連携で酷い事になっていました…!

でも皆一気に攻撃しかけられて気分が良かったでしょう…!

それでもさすがはイセリア・クイーン

まだ立ち上がって予言だけして消えていった…

レザードの罪を救おうとレナスは語りかけるも…

長い倦怠の海に沈んだレザードは悪を演じきるために…

アシュトンやディアスと同じやり方で…

十賢者を召還した…


十賢者の皆さん久々に描いて闇で誤魔化しましたが…

なんだか本当にダークな仕上がりに…

果たして十賢者との行方…

そして…この13章の題名「序曲」

終わったと思っていた方…!

これからが…本当の神の制裁です…

色々な急展開、絶望をご用意しております!


こうご期待!!!


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