STAR OCEAN Sanctions of God







第十一章








第六部










---エクス・トロキア周辺  α隊---




グガァアアアアアッ!!!


大地を滑るように飛んでいたが、やはり既に岩肌しか見えない大地では無理があった

カルナスノヴァと小型船はすぐさま魔物やアポトロディウスに見つかり、攻撃を受ける

カルナスノヴァ単体なら速度的にも攻撃的にも切り抜ける事は可能だが…

一番困難なのが小型船であった

「うわぁッ」

レオンが操作を担当するがあまりにも魔物の数が多く、攻撃を全て避けきれない

そして何より魔物一体一体がエクスペルと比にならないという事

「1年でなんでこんな魔物の巣窟みたいになってるのさー!」

プリシスが射撃担当ながら数の多さに飽き飽きしていた

「こうなったら…!」

プリシスが席を立ってレオンが叫ぶ

「ちょっと!攻撃しないとこの船もたないよ!?」

レオンが焦りを見せる中プリシスが無人君のあるハッチへ走っていった

「このままじゃらちがあかないよ!

本当にクロードとレナのお荷物になりかねないから!」

プリシスがやけになりながら無人君の操縦席に乗り込んだ

レオンが頷いて合図を出す

プリシスが首を横に振って手をクイクイとレオンを呼び寄せる

「この小型船は乗り捨てちゃお…!無人君の方が絶対生き残れるよ!」

レオンが自動操縦のマニュアル登録しながら汗をたらす

「一応資材とか武器とか食料全部ここに乗せてるんだよ!」

プリシスが迷いなく無人君から降りて食料庫や武器庫などをあさり始める

レオンがプリシスの様を見ながら苦笑いした

「本気な訳ね…」

レオンがマニュアルを作り終わると操縦をオートにし

指令局におおむねの状況を伝えて無人君の下へ駆けて行く

「一応四方八方に攻撃し続けながら帰りの分の燃料使ってバリアを張った

エクス・トロキアに突っ込んで大穴開かすから宜しく!」

プリシスがどこか楽しげに笑って頷く

「なんだか危なっかしいし…怖いけど…何故だかワクワクするんだなー…これが!」

プリシスは無人君に積荷を積むだけ積んで操縦席に乗り込んで色々な確認をし

渇いた唇を舌で濡らしレオンが乗ると共に一気に発進した

「ちょっとハッチ開いてないって…!」

レオンがプリシスに叫びながらプリシスはニヤリと笑う

「大丈夫!」

変な自信にレオンはため息をついて笑顔を見せる


ズガァアン!!!

小型船の床に大穴を開けた


「やっぱりねー…」

レオンが失笑し、プリシスが相変わらない表情でやっとこカルナスノヴァに追いつく

『やっぱりプリシスのする事は違うわねー…』

レナが褒めているのだろうが苦笑いしていた

『このままエクス・トロキアの入り口をどうしようかって思ってたんだ

助かるよ二人とも』

クロードの声と笑顔が不安と恐怖を取り除いてくれる

華麗に旋回するカルナスノヴァに劣らない動きで魔物達をすり抜け

小型船は先手を切ってエクス・トロキアへ突っ込んだ


ドゴォオオオオオンッッ!!!


凄まじい空気の振動と共にエクス・トロキアの中部辺りにわずかながらの穴を開ける事に成功した

「やっぱり文明崩壊が続く前からずっとここにあるだけあるね…

最大のバリア張って突っ込んだのにこれだけとは…」

レオンが関心しながらも素早くカルナスノヴァと無人君はエクス・トロキア内部へ























---β部隊---






「波動…虎刃ッ」

ズギャアアアンッッ!!!!


敵は気で固められた蒼い虎の群れに次々に切り裂かれていく

ヴァルティスは戦闘で先手を切って敵の奥深くに突っ込んでいた

周りにはバンデーンの精鋭部隊は見当たらない

そう、精鋭部隊は後退して戦闘をこなしている

一匹の魔物として油断できるものではないから…だがそれ以外にも理由があった

それは何故か…


ヴァルンティスの近くの領域は

消滅する他ないからである


力任せに譲り受けた力を使っている訳ではない

これでもヴァルンティスは相当力を抜いて魔物を蹴散らしている


ズギャアアアンッッ!!!!


まるで魔物達がチリのようになっていき

あのアポトロディウスさえ直撃すれば再起不能に出来る

「とてつもない力…」

それは恐怖でもあった

事実…元の戦闘センスがディブル元帥を超えていた時点で…

受け継がれた力はあまりにもヴァルンティスに力を与えすぎてはいる

それでもヴァルンティスは少しでもβ部隊としての役割を果たすために戦う

だが魔物が減る気配はなかった…











---β部隊 医療施設---




医療班の設置した小型船及び医療施設の中でレイアとシャル、ジーネがそこに居た

「むー…」

シャルがアーツを抱えながら椅子に座り

痛がる様子はないが右足には包帯を巻いていて…

その隣でレイアが紅茶を一口

「あのー…」

不意にレイアが口を開くがジーネが腕を組んで目を閉じていた

「まだ戦っちゃ駄目ですか…?」

ジーネが口元をへの字に曲げる

「駄目だ…お前達の体が最優先だ」

レイアがあははと苦笑いしながらため息を一つ




1時間程前…



ジーネは数少ない上空戦で空を炎で支配していた

レイアとシャルは戦闘部隊の中でも強力な戦力で

レイアは持ち前の華麗な動き、そしてヴァンを受け継いだ強力な力の前に魔物も消し飛んでいった

「私の速さと華麗な動き…そしてヴァンさんの力を織り交ぜたこの技を喰らってください!」


「アクロバットッ!!ローカスッ!!」


ズガガガンッ!!ガガガガガガァンッ!!!!!


魔物の束を一気に衝撃波で上空に散らし

華麗に上空で舞いながら次々に強大な一打を魔物の束にぶつけていく

一気に魔物達が倒されていくのだが…すぐにレイアは体がもたなくなり…

「あぅ…」

ドサリ…

「お、お姉ちゃん!!」

シャルが叫んでレイアの元に駆け寄りレイアの体を揺する

「無理しないでお姉ちゃん…!」

気が付けば魔物達に囲まれていて…

アーツが二人をかばいながら少し目を細めながら喉を鳴らす


『ラァアアアアアアアアアアアア♪♪』


妖精の歌として聞いていたシャルはどこか心が温かくなりながら立ち上がり

胸に手を当ててアーツと共に共鳴した


『ラァァァ♪』


レイアはゆっくりと疲れが取れていき、瞳を開ける

シャルが歌いながらステップを踏み始めた

妖精の歌で緩んだ魔物達の動きに合わせて光の波動を発していく


『♪シャイニングダンス♪』


周りには音符が飛び交いながら圧縮した光の波動が周辺の魔物達を蹴散らす

その攻撃を超えてくる敵には…


『♪パパパ・スプラッシュ♪』


それでも一網打尽に出来るが、歌いながらステップを踏み、回転するのだからシャルも長くはもたない


『♪ドキューン・ブラスト♪』


アーツがシャルの上で舞いながらあまりの魔物を的確に狙って倒していく

その光景はまるでそこが舞台であるかのよう…

バンデーン兵の指揮に良くも悪くも影響したのは確かで…

レイアはその綺麗で美しい攻撃に見とれてしまっていた

「とわッ…!」

ぐきっ

シャルの体にも限界がきてしまったようで、シャルがその場で倒れこむ

すかさずアーツがシャルの元に駆け寄った

ザッ

ジーネが上空戦で魔鳥の状態から人型に戻ってレイア達の所へと下り立つ

「無理はするな」

なんとか疲れの取れたバンデーン兵達が巻き返して周りの魔物を倒していく

「「一斉攻撃ッ!!!」」

ジーネが心配しているのかどこかため息をついて二人の様子を見る

隙を見てバンデーン兵の誘導で医療施設へ




そして今に至るのだが…

「せめてジーネさんだけでも戻ってください…!

上空の魔物がまた増えてきたそうですし!」

レイアが少々疲れの見える笑顔でジーネに呼びかける

ジーネは首を横に振った

「疲れているお前達を置いて行く訳にもいかん

それにここの施設を守る指令を先程受けたのだ…

怪我人も増えてきたからな…

このままの持久戦ではゆっくりとこちらの数が減らされる…

疲労回復などをこまめに行わなくてはならない」

自分達の戦闘に慣れてない様をまじまじと感じるレイアとシャルはどこかため息をついていた











その時であった…作戦が…『失敗』という形になったのは…


ドォオオオオオオオオオンッ!!!


目に映る光景を誰も信じたくは無かった

バンデーン艦が次々に堕ちていく…

そう…全てのバンデーン艦が火を噴きながらエディフィスに落下していく


「ど、どういう事だ!!一瞬で5艦隊が…やられた…だと」

「本部はどうなった!!?」

「おい!任務失敗なのか!?」

医療施設の中も相当な騒ぎになりレイアとシャルが不安な面持ちでジーネを見つめる

アーツが窓の外をジッと見ていた

「甘く見すぎていた…という事か…

…このエディフィスにはどれだけ強大な敵がいるというのだ…」

そう言って立ち上がるとレイアとシャルの手を引いて外へ出た

外へ出るととてつもない風が吹き荒れ、空が火と煙が覆っている

バンデーンが慌しく動きながら魔物との戦闘に遅れをとっていた

「全部…お船が…落ちちゃった…」

シャルが唇を噛み締めて、ジーネとレイアの服の裾を引っ張った

「失敗…という事になるのか…」

ジーネが次々に落ちて来るバンデーン艦に絶望を感じるのに時間がかからなかった




ゴォオオオオ!!

「お逃げ下さい!!ここに船が落下してきますッ!!

早く安全な場所へ!!!」


そう警告するバンデーン兵の体は震え続けていた

もう…どこに逃げても間に合わないのだ

逃げ切れても魔物がひしめき合うこの星では…


生き残れない


シャルが泣き出してしまい、アーツが地面を殴りつける

「なんで…こんな…こんな運命なんて…!」

レイアが医療施設の上空を見つめた

煙に覆われた空から赤い隕石がまるで落ちてくるかの様な気分

ジーネさえ眉を歪め、空を見つめ続ける

「これが…絶対的な…敗北というのか…」


ズガァアアアアンッ!!!


ズゴォオオオオオンッ!!!


バンデーン艦がエディフィスの大地に次々に落ちていく

その衝撃は凄まじいもので…

目の前が真っ白になるほどの爆発を繰り返しながら地面を吹き飛ばす

主力戦艦は数十キロのクレーターを作り出しながらマグマかのような熱を持ち…

燃え盛っていた

その戦艦がここに落下してくる…

作戦失敗を考えている場合でもないが…

ジーネはただ最後のかけを考えていた

まるでエクスペルでの連邦との戦いの様で…

どうしようもない物が空から落下してくる…

もう一度経験するとは思わなかったが…

ジーネは覚悟を決めていた


「私が魔族の姿に戻る…お前達を背中に乗せて逃げる時間もない…

私に残されているのは…お前達を…クロード達を守るために…

特攻するということだ」


その時レイアが首を横に大きく振ってジーネにしがみついた

「嫌です…!私達だけ…残されても…!…ぅ…!」

急にレイアは胸を押さえ…様子がおかしくなり…

ゆっくり立ち上がった

その腕には黒いガントレット…

レイアの目つきが変わり…口調が変わる


「本当レイアをこんな危ない目にばっかあわせやがってよ…

下がってろジーネ」


ジーネは話に聞いていた男をしっかりと確認できた

レイアと重なって見える…ヴァン

シャルが首を傾げながらレイアを心配そうに見つめた

「お姉ちゃん…?」

アーツやシャルでさえ、レイア本人ではない事は確認できる

そんなレイアが少し医療施設から離れ上空を見た



「ふぅ…こんな軟な体で…無理させたなくないんだが…

死んじまったらどうしようもねぇからな…

いくぜ…?レイア」


ズゴォオオオオッ!!!


迫る燃え盛る戦艦…

レイアの周りが光を発し、そして大きく空気を揺るがす

オォオオオオ…

大きく両手を前に突き出す

「喰らいやがれ…」



「マックスゥッ!!

エクステンションッ!!!」






ズギャアアアアアアアアアンッ!!!!


とてつもない強大な気の波動が砲弾の様に加速しながら戦艦に直撃した

「ぐぅうう…!!」

レイアは両腕を前に突き出した状態で衝撃に耐え、強大な波動を空へ空へと押し出していく


「うぁああああ!!!」


ズギャアアアアアアアアアンッ!!!!


波動は戦艦を押し出しながら貫通し、上空で数度にわたり爆発を繰り返した

木っ端微塵になって上空で爆発したおかげで戦艦自体の落下は免れたが…



目の前に広がるのは…絶望という二文字…

「どうしてここまで…俺らを排除しようってんだかな…ちくしょうが…」

レイアはそう言うとフッと意識が飛び、膝をついてその場で倒れこんだ

ジーネが魔鳥の姿でシャルとアーツを守っていたのだが

シャルがレイアを見つけるなり駆け足でレイアに泣きつく

「お姉ちゃん!!」

アーツがシャルの横で体を振るわせながら泣き崩れる

「レイア嬢…」

ジーネがそんな三人を見つめながら、他のバンデーン達が避難してくるのを確認した

バンデーンの戦地へまともに戦艦が落ちていないのはここぐらいで…

相当な数の死傷者や怪我人が運ばれてくる

「本当に助かりました…!ありがとうございます…!」

医療施設長と職員が頭を下げてジーネに礼を言ってくるが…

「すまないが今の危機を食い止めたのはそこに倒れてる者だ…

治療を大至急頼む…」

レイアを心配そうにシャルは運ばれるレイアに着いて行った

「またレイアに助けられたのか…

アーツ」

アーツはジーネに呼ばれて飛んでくる

「どうしたんでプか…?」

ジーネは空を見上げた

「どう思う」

アーツは首を傾げる

「どうと言うと…?」

ジーネは目を細めた

「この状況だ…」

アーツは答えるのに躊躇する


「任務失敗でプね」


この任務の管理、指示を行う拠点が全て落とされてしまったのだから…

後は各自判断で行動

つまり…この星から抜け出す方法が無くなった…という事

なんとか数と戦力で押さえてきたこの戦況

急激なバンデーン兵の消失は…失敗と共に…敗北を意味する

再び魔物が溢れかえるのが遠くから見ても分かる…

「………笑えんな」

バンデーン兵のほとんどが失意のままに崩れ落ちる

それでもなお、ジーネは同じ場所をひたすらジッと見ていた

怒りと焦りが同時に押し寄せる


「そしてアレは…絶対にクロード達の所へ行かせる訳にはいかない」


クレーターのど真ん中の固まった溶岩石の上でヴァルンティスも空を見上げている

「文明崩壊を食い止める者には容赦しないつもりなのですね…」



ズォオオオオオオオン



そう…5艦隊全てを落とした者…

飛来したのは…赤い光を纏い異形の悪魔の様な…


邪竜









「ブラッド・ヴェイン…」

ジーネはそう呟いた















*こめんと*


クロード達は無事エクス・トロキアへ

ヴァルンティスやレイア、シャル、ジーネ達が戦う中…

歓喜と喜びはいつまでも続かなかった…

突然5艦隊が落とされ…『任務失敗』という…再びの絶望

レイアとヴァンでなんとか医療施設は守りきったものの…

絶望の連鎖はまだ止まらない…

黒き双頭竜が…敵として現われた…


本当戦闘するところを書くのは楽しいですね!

順調に行くにはやはりあちらの方が数枚も上手で…

足場を一気に崩されてしまいました

本当の目的であるクロード達の行方は…?

艦隊全てを落とした黒き竜とは…

全宇宙の文明崩壊を食い止められるのか…!


こうご期待!!!





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