STAR OCEAN Sanctions of God







第十一章








第五部










---コロニー内 牢獄---


緊急事態…

コロニーに精鋭部隊が戻ったと同時に臨時の精鋭部隊長を呼び戻した

「ヴァルンティス部隊長…」

永久追放の筈のヴァルンティスは精鋭部隊に敬礼されてその場にたたずんでいる

「罪人を使うのは…Sクラスの緊急事態だけだと思っていたが

人数が足りていない訳ではないだろう?」

精鋭部隊が次々に入ってくる情報に焦りを覚えながら口を開く

「元帥が敵との戦いに敗れました」

疼いた

笑いが込み上げてくる

「あの父様が何に敗れる?何かの未知の病原体か?」

精鋭部隊の副隊長が表現の仕様のないモニター越しの光景に…答えた


「神です」


ヴァルンティスは馬鹿にされている様で舌打ちをするが精鋭部隊に背を向ける

「父様も勝手なものだ…生存は確認出来ているのか?」

精鋭部隊は頷き状態報告などをした


両腕切断…絶対安静


元帥がそんな状態になりながらもバンデーン全体は落ち着いている

ある程度は穴埋めできるような臨機応変な行動

地球よりもより忠実に的確に…

部下達は今でも大忙しで処理におわれながらも一般民も隙間なく動く

「いいえ、指揮にあまり問題はありません…ただディブル元帥のお達しで

ヴァルンティス部隊長に再び戦場に赴いていただきたいのです」


呆れたが…悪い感じではなかった


あそこまで私を追い詰めたのに…試しているのか…?


「赴く前にディブル元帥からお話があるそうです」















「無様だな」

ヴァルンティスがあざ笑いながらディブル元帥を睨みつける

アクアから緊急で転送されてきたディブル元帥は絶対安静ながらも口は利けていて

一度色々な議論をしていた官僚達を下がらせた


「ヴァルンティス、お前は何を望む」


ヴァルンティスは答えずにディブル元帥をジッと睨みつける


「質問を変えよう

私を超える力を得るとしたら…どうする」


ヴァルンティスは少し身を引いて腕を組んで目を細める


人生最大の目標…父様の力を手に入れたら…

バンデーン全てを支配する…?

考えた事はあったが…どうもしっかりとした形で…言葉に表す事ができない


「お前はまだまだバンデーンを手中に治めるには未熟すぎる」

ヴァルンティスが首を傾げた

「どうすればいい」

ディブル元帥は答える

「お前に私を超える力を与えよう

だが…それはすなわちバンデーンを治める事が出来る訳ではない

それは分かるな?」

ヴァルンティスはコクリと頷いた

素直に頷いた事にディブル元帥は納得し、天井を見上げる

「先祖代々…我等バンデーンを治める者達は絶対的な力を受け継いできた

それが治める者の証でもあり、伝統…掟

他のバンデーンに劣る事のない圧倒的な力……

だが私はそれにこだわる必要はないと考えている

事実私は受け継ぐ前は策略を得意とする軍師であった

故に…今の平和なバンデーンが存在し…

私は力をそれ程に求めていない

戦闘として一流なお前がこの力を手にすれば

今の私など簡単に凌駕する事ができるだろうが…

この力はすぐにでもバンデーンを破滅へ追いやれる

連邦を負かす事も出来るかもしれない」

ヴァルンティスは何が言いたいのかいまいち分からないまま

突然簡単に力を与えると言われたヴァルンティスは苛立ちを隠せなかった

「今までの私の努力はなんだったのだ…」

ディブル元帥は一度息をついた後にどこか言い辛そうな面持ちで答える

「その努力を見越して…言っている

私が自らの本当の力のなさを知り、お前の成長ぶりに喜んでいるのだぞ?」

またしても…不意をつかれたヴァルンティスは胸が熱くなるのを感じた

今まで皆無と言っていいほど無かった…成長したという言葉

私の頑張りを…認めてくれた…認めて…くれたのだ…

ディブル元帥は体をゆっくり起こす


「私は元帥…及び統括者を辞めるつもりはない…

その代わり…ヴァルンティスには戦場に再び赴いてもらう

私の右腕としてな」


ディブル元帥に使われる事をあんなにも嫌っていたヴァルンティスだが…

成長を認めてくれたよいう充実感と…

ディブル元帥がを上回る力を支配する右腕として存在できる事を誇りに思えた

気が付けば忠実心が芽生え、世界が一変した気がして…ヴァルンティスはディブル元帥に敬礼する

ディブル元帥は体中を蒼く光らせ、オーラで部屋中を明るくした


「全ての者を敬い

サメのごとく揺ぎ無い圧倒的な力を持って…

民を守らん事を誓うか」


ヴァルンティスは頷き、ディブル元帥の前にひざまずく


「誓います」



オォオオオオオオオッ!!!!


まるでコロニーを揺るがすかの様な波動が周囲に広がり…

全てヴァルンティスが吸収していく

今まで自ら手探りで生きてきた…目標を持ってきたのだ…

誓いの命を志を与えられたヴァルンティスに今までの面影はなくなり

眩い光を放ち、白き鎧をまとった戦士となっていた






ヴァルンティスに一片の迷いもなく

ディブル元帥と語らずとも分かる言葉

ヴァルンティスはその場を立ち去った



























---バンデーンズコロニー---



---209831号病室---






プリシスはかすんだ目を擦りながらモニターを開いて、先日届いていたメールを見つめていた

そう、それは事実を知る前の…「変な私宛のメール」と言っていたもの

それがアシュトンからのプリシスへの最後のメールだった

ジーネが言うのには一度アシュトンが死を覚悟した際に短い時間でメールを送ったそうだ

アシュトンが限られた時間でメールを送った時間と

エクスペルの時間差を比べるとメールを受け取った時間帯と一致する…


プリシス


この一言だけ

何が言いたいのか見た時はよく分からなかったけど…

今はアシュトンの思いが伝わってくる

『最後はやっぱりプリシスだけど…えーと…んー

いっぱい言いたいことが…あり過ぎるな』

私だっていっぱい言いたいことがある

一晩で語れるものじゃない…

だけどアシュトンは『プリシス』という主語だけを送って…

文は二人で共有してきた時間が全てを教えてくれた


『プリシス』元気?

『プリシス』無理してない?

『プリシス』にいっぱい甘えたいな

『プリシス』大好きだよ?


『プリシス』今までごめんね


『プリシス』今までありがとう


本当にアシュトンがそう言っている様に聞こえる

『プリシス』と呼ぶ声

それは色々な思い出を呼び起こしてくれた

ホロリと落ちる涙は…どこか暖かい…

思い出は…平和で…どこか笑えてくる

その場に居合わせなくて正解だったのかもしれない

残ったのは…綺麗な思い出達だけだから…


だから…また立ち上がれた



プシュー

プリシスが振り返るとそこには苦笑いをしているレオンが立っていた

「レオン…」

涙で真っ赤に膨れ上がった目、レオンはそれを見てため息をつく

「わんわん泣いてるから入るタイミング掴み辛かったんだけど…

なんとか落ち着いたかな?」

その言葉にプリシスが頬を赤くした

恥ずかしそうに顔を隠してうつむく

「レオンはさ…悲しいでしょ…リヴァルがいなくなって…」

聞いちゃいけない気がしたけど…

聞きたかった


「悲しいよ

もうずっと泣いていたいぐらいにさ」


プリシスは申し訳なさそうにしながらレオンを見つめる

もう、プリシスは戦う決心はしていた

でも確かめたかった…

悲しんでいるのは私だけじゃないんだと…



「だよね…ごめん…本当…ありがとう!」

レオンは表情を和らげるとプリシスに背を向けた

「戦う事決めたならしっかり任務確認してから来てね

プリシスに任務内容メールで送っといたから」

プリシスは笑顔で大きく返事する


「うんッ!!」























作戦の内容(レオン略


『世界の文明の崩壊を望むエディフィスの敵の親玉の殲滅が目的であり

敵の親玉は一人でこの計画を進めている可能性が高い

敵の親玉は一人だが、星を壊滅へ追い込む、意思をほとんど持たない魔物、戦士を携え

その魔物達の展開力は凄まじいもので、時空転移も可能としている事が分かっている

まずはエディフィスの文明崩壊循環を邪魔した12人の抹殺が最初の目的であるが

今一番エディフィスに接近し、戦闘を行ったバンデーンに対しての警告が出ているのは明らかと言える

バンデーンはクロード率いる仲間達の元、殲滅部隊を展開

コロニーは時空間で転移しながら母星へ

そして連邦との手を組む段取りをつける

その間この作戦に関しての最高機関及び指令局をバンデーン艦に移すこととし

他バンデーン艦を四艦隊配備

殲滅隊メンバー

α隊:クロードを中心にクロードの仲間達の少人数で行動

カルナスノヴァにクロード、レナ機乗 他は小型宇宙船に機乗

○出来るだけ敵に気付かれるのを防ぎながら、このα隊が敵の親玉を殲滅する隊となる

敵の親玉はエクス・トロキア上部のコロニー又はグランド・ノットに存在し、外界からの侵入は不可能

その為、エクス・トロキアの入り口だけが侵入口となる

β部隊:ヴァルンティス精鋭部隊長を中心に精鋭部隊、戦闘部隊での戦闘

○全ての部隊をα隊の囮及び、エディフィス内の敵の殲滅とする

緊急の際は最高機関で強制転送を行う優先はα隊とし、最高機関がなくなった場合

この作戦は中止とし、大気圏内にバンデーン艦が存在する場合は転送を行うが

そのバンデーン艦が堕ちる可能性がある場合はバンデーン艦の維持を最優先

全てのバンデーン艦が堕ちた、破壊された場合、失敗とし

失敗した際は各自判断に委ねる

以上』


「ん…まぁ…簡単に言うと私らはバンデーンの人たちに守ってもらいながら…

なんとか侵入して親玉を倒せって事だよね!」

簡単に言ってみたものの少し考えてみるプリシス

「敵はどんな奴かも分からない…今の私に出来る事はー…」

プリシスは迷わず助けれくれた無人君がいる場所へ駆けて行った












---バンデーン艦---



「ごめんね…二人とも…連れて行けなくて…」

レナがカルナスノヴァの最終確認をしながらレイアとシャルの頭を撫でていた

「無理しないでね…レナお姉ちゃん」

レナは元気に頷き、レイアが満天笑顔で答える

「私達は足手まといになってしまうのは分かっていますし…

私達は出来る限りの事をするまでです!

私たちβ隊で頑張ります…!レナさん達も頑張ってください!」

レナは笑顔を見せるとレイア達の横にいるジーネに目線で語った

「分かっている…こやつらの事は任せておけ…安心して行ってくるがいい」

レナはジーネには絶対的な安心を感じている…

それは強敵であった頃よりの名残

「アーツも言われないまでもないかな…?」

アーツが自慢げに胸を張った


「当たり前だプ!シャル嬢をお守りするのが我輩の役目!


レイア嬢も無理なく守るプ!」

レナやシャル、レイアにジーネまでもが笑った





「レオンなんとかなりそうかい…?」

レオンがカルナスノヴァ内で外部パーツをごじゃごじゃといじくっている

その表情は険しいながらも笑みを浮かべるできばえのようだった

「プリシスがいないからちょっと不安だったけど…僕でも言えるよ

完璧になったよカルナスノヴァは」

クロードは腰に下がる剣を見つめ、荒れ果てたエディフィスを見やる


「絶対に…僕らの明日を…

掴み取るんだ…!」








ゴォオオオオオオオオッ!!!









---エディフィス β部隊---


バンデーンの精鋭部隊と戦闘部隊が全てエディフィスへと降り立ち…

魔物の群れをおびき出すかのように陣を組んだ


ヴァルンティスに未だ恐怖を感じている隊がいることを知っている

ヴァルンティスは戦う前に掲げた


「昔の私は死んだ

ディブル元帥の力を受け継ぎ…

バンデーン…!そして全ての生命を守るために私は全力で戦う!


それが私の戦う理由!!

恐れてはいけない!!

我等バンデーンの力を信じて戦うのだ!!」





「「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!」




「「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!」」






「絶対に…生き残ろうねシャル」

レイアが笑いながら拳を叩きつける

シャルとアーツが大きく頷いて志を確認し

ジーネが空を見上げ語る


「魔族王の名に恥じぬ戦いを…見ていて欲しい」












---エディフィス α隊---


こうして大気圏を経てクロードとレナはカルナスノヴァで地上部ギリギリを飛んでいく

レオンとプリシスは小型宇宙船でカルナスノヴァを追いながら一行はエクス・トロキアへ

魔物達の死角を掴みながら旋回していった




「レナ…?」

クロードの呼びかけにレナはハッとして涙を拭う

「あはは…やっぱりこの戦いで色々あったからちょっとね…」

レナは寂しげに笑っていたがすぐさま優しい笑みに変わった

「早く地球に帰って落ち着きたいね♪

あれ…見たいドラマの予約してきたっけ…」

クロードはなぜだか腹を抱えて笑っていて…

レナが口を尖らせてぶーぶー言っていた




「見てみて…!バンデーンの技術者の人たちとぎりぎりまで作り上げたんだッ!!」

プリシスが誇らしげに新しい無人君をレオンに見せ付ける

「無敵君は?」

プリシスがうーんと唸りながら頭をかいた

「そこまで時間なかったもーん…

それに…無敵君はちょっと頑張り過ぎたかなって…」

レオンが含み笑いをしながら無人君を見つめる

「シンプルだけど…なんだか凄そう」

プリシスが親指をたててはしゃぐ

「すんごいよ!!」

レオンは高らかに笑っていた

キリッとした表情に変わったレオンはコロニーのある方向を見つめながら呟く


「待っててね…リヴァル…!」















*こめんと*


戦いによりますが…ここまで危ない任務だと色々なモノを失いますね…

それでもくじけずに頑張って戦います…!

ヴァルンティスってちょっと名前長くてヴァにでも変更しようと思っていた時期がありましたねー…

クロードご一行ももうちょっとやそっとの事ではくじけません!!

くじけている暇なんてありませんからね!!


こうご期待!!!





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