STAR OCEAN Sanctions of God







第十一章








第三部










---エディフィス 荒れ果てた大地---





「カルナス・ノヴァ…正常に稼動中…いけるよクロード」

上空を旋回するカルナス・ノヴァはレナのオペレートの元

クロードは三体のアポトロディウスに向かって行った


グゴォアオオンッ!!!!


一体がこちらに気付いて大きな雄叫びをあげる

「レナ」

その一言でレナがキーを打ちこみながら上からの照準機を自分の上部にはめ

ポインタを合わせて最後に解除キーを押し込んだ

ゴゥンッ!

カルナス・ノヴァの肩から重装甲のキャノンが前方に倒れこむ


ズゴォオオッ!!!!


アポトロディウスの業火はカルナスをぎりぎりかすめる

「くッ」

クロードがアポトロディウスの攻撃をなんとか受け流し

ある程度の距離を保ち続けた

高速で動く機体から的確に狙うという手馴れない操縦にレナが少し唸りながら照準を合わせる

「は、発射!」


ズゴォオオンッ!!!!

ズドドドドドォォオ!!!


放たれたキャノンは正確にアポトロディウスの頭を一発で貫きその場で一体を撃墜する

「す、凄い威力…」

レナがそのバンデーン製のキャノンの威力に圧巻しながらもまた標準を合わせた

だが…気が付いた魔物達からも一斉に攻撃を受け始める










「……」

レオンはカルナス・ノヴァを高速に正確に回避するクロードの技術への驚きも隠せなかった

レナの次々に魔物を打ち落とす精密技術にもレオンは息を飲み魔物に拳を振るう

リヴァルが周りの魔物を蹴散らしているとディブル元帥が一言

「お前達はこの星の元凶を倒すのだろ?地上は今は我等の精鋭部隊に任せてくれ」

そう言ってディブル元帥はリヴァルとレオンを引かせる

クロードとレナは唯一空中で自由に戦闘を行える為、後退命令は出ない

腕を認めているのは確かだろう


『元帥という最高指令の任を追いながら…戦場に赴くのですか?』

と一度レオンはディブル元帥に聞いた事があった

だが、表情を変えずに答える

『君達のように複雑な種族や政治的な問題などがある訳でない

ただバンデーンの血が私を赴かせる、それだけの事だ』

それでは国はおろか種族は守れない

でもディブル元帥が言っていたのは種族の誇りなのだろう…

勝ち負けではない何か…


レオンがクロード達を見つめながらどこか楽しげに笑っている

リヴァルが戦闘から身を引いて、レオンに歩み寄った

「どうしたんですか?」

レオンが目線を変えずに語りだす

「人型機械製造が厳密に禁止されている中で…

誰もあそこまで自らの機械操作で人程の感度で動く人型の機械を動かし

動く中で精密射撃を続けるって事にまで連邦は踏み込んだ事がない」

リヴァルがよく分からないながらも関心してクロード達を見つめる

あまりにもクロードとレナはシンクロしていて、まるで一つになっているかのよう…

リヴァルが疑問を投げかける

「プリシスより上をいきますか?」

レオンは大きく頷いた

「プリシスはただ作った身だし、無敵君は力や出力がずば抜けているけど

射撃や俊敏さに優れている訳じゃない

カルナス・ノヴァはクロードのお父さんの乗っていた戦艦カルナス自体を回収…収縮して

機動力や射撃、砲撃を重視した遠距離型…

不慣れながらも元々色々な機械の操縦をしなれているクロード

戦艦のオペレートと主砲などの遠距離のエキスパートに上りつめたレナ

これで心が一つになっている…

これ以上の人型兵器の怖さを思い知らせるコンビはいないね」

リヴァルはとにかく頷いて活き活きとレオンに語る

「愛ですね!」

レオンは含み笑いをした後に周りを見渡す

「あれ、シャルは…?」

リヴァルが慌ててレオンと共に辺りを見渡した

「さっきまで一緒に戦ってたのに…!」















「あ、アーツー!」

いつの間にか奥へ向かっていたシャルとアーツ

アーツを見失って魔物にジリジリと迫られるシャル

「ど、どうすれば…!」

とにかく…

アーツといっぱい練習したんだから…!

思い出しながら…

タタンッ

タタタンッ

「えとえと…!」

戦う事、そして目の前で雄叫びをあげる魔物達に脅えながらも

シャルは心に込めたダンスを踊る


「しゃ、シャイニング・ダンス!」

ズゥオォオオンッ!!!


ステップを踏むごとにシャルの足元は光り輝き、波動を大きく発生させた

「ぐぇぁッ!」

「ぐぉお!」

「ぎぃ!」

その光の波動はシャルを優しく包むが、魔物達を拒み、なぎ払っていく

「ぐがぁあ!!」

軽く吹き飛ばした魔物に追い討ちをかけるようにシャルは足を軽くしならせ、優雅に回転した


「パパパ・スプラッシュ!」

ズバババババンッ!!!


回転したシャルから再び大きな波動が魔物達をなぎ払っていく

未だに足元でステップ踏みながらの回転で光の波動を発生させ

確実に魔物を殲滅していく

が…

ぐきっ

「ぁ!」

あまりの回転と高度なステップの繰り返しに

シャルは足をひねりその場で倒れこんでしまった


「ドキューン・ブラスト!」

ズドドドドドンッ!!!


シャルが瞳を閉じている間にアーツが

上空から光り輝く圧縮した衝撃波を魔物達にぶつけた

「もう、すぐ離れないで欲しいプ!」

上からアーツが降り立つと、シャルを落ち着かせ、身構える

「でも…よく頑張ったプ

短時間でよく我輩の技とダンスをそこまで表現した…プ」

シャルが少し涙目でアーツを抱き上げた

魔物が寸前で迫る頃には数人のバンデーン精鋭部隊が囲ってくれていて…


ズドドドドドォンッ!!!


気が付けば周りの魔物は跡形もなく粉砕されていた

そして一人のバンデーン兵がシャルとアーツに喋りかける

「クロード隊長達のお仲間ですね?

お仲間は一時様子を見るに辺り一時戦闘後退しています」

シャルとアーツは頷き、精鋭部隊に誘導されながら後退した







「シャル!アーツ!良かったです!」

リヴァルがシャルとアーツをぎゅうっと抱きしめてにこにこと微笑んだ

「ご、ごめんなさい…」

少し涙目のシャルはレオンとリヴァルになだめられ笑顔を取り戻す

誰もがこんな小さい子を戦わせたくない

そう思っていても…シャルは今未来の踊り子を目指して…

必死に小さいながらも未来を守ろうとしている

その思いは皆をよりいっそうのやる気をおこさせた

レオン達はその気持ちだけは忘れまいと顔を引き締める









「クロード…行くの?」

レナがキーを操縦しながらクロードを見つめた

「あぁ…一時退却するにも…

多分目の前にいるアポトロディウスを倒さないと後退できない」

そう言ってタイミングをレナと共に見計らい

クロードはオーマを片手に飛んだ

ごぉおおおお!

一気に急降下しながら落下していくクロード

カルナス・ノヴァの操縦自体はオートにし

レナがひたすらに遠距離で打ち込み魔物の数を減らしていく

「ぐがぁああ!」

「ぎゃああす!!」

クロードが落ちながらも攻撃を仕掛ける魔物達

ディアスの意思を感じるオーマを握り締め、クロードは闘志を炎に変える

そんなクロードに近づく事すら…既に敵わなかった

「ディアス…」

クロードはこの一撃だけに全集中し、アポトロディウスに突っ込んでいく

燃え滾る炎、完全燃焼し青く鈍い音を立てながらオーマを中心に燃える龍を描く

雲を突き破り、空気を振るわせる

何者をも近寄らせない一撃


「青龍激流撃ッ!!!!」



ズゥォオオオオッ!!!

ズァアアアアアアンッ!!!!


大地を揺るがす青き龍はアポトロディウスの業火をもろともせずに一心に貫き

周りの魔物と共に蒸発させた


「これが…クロードの力…」

ディブル元帥は青き波動の波を見て口元を緩める他なかった

どこかクロードを甘くみていたそんな部分もあっただろう

ディブル元帥は残りのアポトロディウスと魔物を…


ズガァアアアアン!!!

ドゴォオオオオオオオオンッ!!!!


一撃の衝撃波で消し飛ばす














「ぁッ…あぁ…」

何が起きたか分からなかった

レオンも目が擦れたのかと目を疑う

「リヴァルお姉ちゃん…?」

シャルが状況をよく掴めない様子で目を泳がせる

「何者…だプ」

アーツが真剣な眼差しで…リヴァルの後ろにたたずむ…少女に語りかけた

レオンは既にどこか自分を見失いかけながらもギッとその少女を睨みつける


「私はアクアの器でもあり、元より…カミの器

アクマはワタシ…ワタシはツクリモノのワタシ」


そう語る少女は見た目はリヴァルと瓜二つだが…

銀色に輝く青い髪、そしてリヴァルにはない落ち着きと、圧迫感

リヴァルは依然として目を見開き、体を硬直させて震わせる

「何を…言ってるの?」

シャルがそう言った瞬間にアーツはシャルの手を引いて後退りを始めた

「我輩達が太刀打ちできる相手じゃないプ…」

レオンがある程度の解釈をした後に冷静に喋りだす


「リヴァル…すなわちアクマ自体が…

あなた…カミの一部に過ぎないと…言いたいのか…?

今のリヴァルに何がしたい…

僕らの前になぜ現れた」


レオンが聞くまでもなかった…

その少女は威圧感でこちらを押してくる

それでも話が分かる相手なら多少は…


「おいで」


そうその少女が言うとリヴァルは…


「う、うぁあッ!!レオ…ンッ!」


ゆっくりと少女はリヴァルを抱きしめ…

リヴァルは少女に溶け込んでいく

アーツはシャルの目を塞がせ

レオンは目の前のおぞましい光景に身を震わせて体が動くと共に叫びをあげた


「僕の…リヴァルにッ!!!

何するんだぁあああッ!!!!」


その少女に近づこうとした瞬間にレオンはとてつもない悪寒と、威圧で目の前が真っ暗になり

「レオンお兄ちゃん!」

シャルがアーツを振りほどいてレオンの前に滑り込むと、目線を上げてしまった

「あぁ…あッ…ぁあああああああッ!!!」

リヴァルが苦痛の表情でその少女に飲み込まれる瞬間が目に焼きつき

シャルはその場で発狂してリヴァルを取り返そうとその少女に飛び込んだ瞬間


オォオオオオオオオオッ!!!!!


頭に刻まれる様な重低音が一気に大地を震わせ、蒼い光と共にその少女は瞳を開く

大地には羽が舞い散り、神々しい息吹が吹き荒れた


















「な、何がおこったんですか!?」

クロードが少々焦り気味でディブル元帥と共にその光景を遠くから見つめる

「お前の仲間が何か使った…というレベルではないな」

ディブル元帥の様子がおかしく、クロードはレオン達が心配で一歩踏み出す

「一度レナと共にコロニーに退却しろ、クロード」

クロードは危険な感じを極度まで感じる事はなかったため、少しためらわれるが…

「了解しました」

そう言って身を引くクロード

ディブル元帥は精鋭部隊にも同じ命令を下す

「ですが…あなたが一番…戻らなくては…」

クロードがそう口にするが…

ディブル元帥は何も喋ろうとはしない

そこで周りの撤退する部隊を見つめた

何も喋らずに敬礼をしてコロニーへ転送されていく

ディブル元帥は…レオン達の安否を考え

今の状況で危険を感じ、精鋭部隊を下がらせる程の…者…に挑むつもりでいた

「私自らレオン達の安否を確認し、一緒にすぐさま撤退する」

そうとだけ言って歩みを進めていく











「全ての…ワレノタマシイ…ここに集い…

与えられし命を遂行する」


その少女は蒼き鎧を着込み、蒼白…そう、まるでプラチナの様な髪をなびかせる

レオンは目が虚ろな状態で遠くに吹き飛ばされ、その少女を見つめた

「リヴァ…ル…」

自分の無力感や喪失感からレオンの瞳からは涙が溢れ出し、意識が遠のき、ゆっくり瞳を閉じる

その後ろで気絶し、倒れこむシャル

アーツがなんとか庇いシャルはほとんど無傷に近い…が

「訳が…分からない…プ」

状況をあまり把握できないアーツは重たい体を起こし

ゆっくりとこちらに近づく少女に目を凝らした

「ひッ…な、なんで…リヴァル嬢を吸収して戦乙女がッ…!!

い、意味が分からないプッ…!!!」

無表情で近づく少女は何も持たずにただ威圧で押してきてくるだけの様に思えたが…


ズォオオオオオッ!!!!


羽と光が舞ったかと思った瞬間に大きな片手剣を握り締めていた

シャルとレオンをかばいながら後退りするアーツ

その圧倒的な存在感に命を吸われるかの様な生き地獄…


ズガァアアアアッ!!!!


大地を揺るがす凄まじい音とともにレオン達は風圧で吹き飛ばされる

気が付けば目の前にディブル元帥が立ち尽くし、身動き一つしていなかった

「ディブル…元帥…?」

アーツが呼びかけるが…

「…………」

ディブル元帥はレオン達の前に躍り出て、少女に向かって最大限の波動をぶつけた…

はずなのだが…少女は何一つ変わらない様子で近づいてきている

「面白い…ここまでの者に会ったことがない…」

ディブル元帥は戦う前から力の差を知っていた…

それでも両手を振るい、大きく少女に向かって突き出した

「波動ッ…!!ッ!!!」


ザンッ!!!!


「がぁあ…ぁッ!!」

相当な速さのテンポで技を繰り出したディブル元帥の両腕は片手剣によって切り落とされた

何物をも通さない鋼の腕…何物をも寄せ付けない波動

あのディブル元帥が玩具の様にひねられている

アーツの目の前で見る絶対的恐怖

「あのディブル元帥でプよ…?

それが…はは…あはは…」


『聞こえますか』


突然響く声

アーツは驚いた表情で大声で叫んだ


「僕達を助けて欲しいプッ!!」




















---?---


レオンは気が付けばベッドで眠っていた

「ここは…」

レオンはこの場所を知っていた

シャルは深くうな垂れ、生気があまり無いように見える

アーツはずっと震えっぱなしで、レオンに苦笑い

ディブル元帥は両肩からしっかりと治療され、安眠していた

「そう…ここは…僕の記憶が正しければ…アクア」

気を失った場面までしか覚えて…いたくないが…

空間転移でアクアに飛ばしてくれたのだろう…

部屋に一人の人物が現れ、お辞儀をした


「お久しぶりです…ヴァイです」


レオンがお辞儀をして、どうしようもない悲しみと悔しさが一気に押し寄せてきた

またエディフィアンに助けられてしまったというのもあるが…

未だに状況が掴めないながら…リヴァルをまた救えなかった事…

「本当に…ありがとうございました」

あそこで終わっていたら…リヴァルすら助けられなかっただろう…

感謝してもしきれない…

アーツはポカーンとしながらヴァイを見つめる

「状況を手短にお願いしたい…プ」

ヴァイは頷き、口を開く


「マザーはより高度な技術を見に付け…

先ほどの戦乙女を模したリヴァルの様な戦力で…


世界を支配する計画に拍車をかけています」


レオン達は絶望の淵に立たされた













*こめんと*


信じるべき仲間達の救いの手

迎え撃つ壁を崩し、形勢逆転するも

突然現れた少女、消え去るリヴァル

そして蒼き騎士

エディフィアンとの再会も虚しく…

計画は…目を潰れるモノでなくなった

絶望的になりながらも…レオン達は…




こうご期待!!!





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