STAR OCEAN Sanctions of God







〜番外編〜 エクスペル














---エクスペル クロス城跡、防衛拠点---




クロスに夜が明け始め、朝がやってきた

エクスペルを守っていたマグライト隊の行った事を全て報告するようにと

連邦からの指示がでていて、その報告書を書くのにクリスは大忙しで

チサトから色々と情報をもらったりしている

魔族殲滅作戦を要求してきたのは連邦の差し金ではあるが

魔族は全て殲滅したという事になった






「あの娘、死んだように寝てますけど…大丈夫ですかしらね?」

セリーヌはクリスが忙しそうに書類を次々に書き上げている所を話しかける

「え?ん?ボーマンさんもなんら異常もないって言ってたから大丈夫じゃないかな?」

クリスは兵に次々と書類を渡されながら書類を書き上げていく

それを見かねたセリーヌが手伝おうとするが…

「駄目だよ、セリーヌ達があんなに戦ったのに…

僕は王だというのに何もできなかったんだから」

セリーヌがぶーぶー言っている最中、ジーネがリンゴ片手に戻ってきた

「なんかジーネがリンゴを持って私達の近くにいると違和感がありますわー」

ふふっと笑ったセリーヌを見て苦笑いをした後

ジーネがどこか寂しそうな表情で空を見ていた

「魔族は…全て滅んだということでいいんですのね…?」

ジーネが苦笑しながら頷いてみせる

「私だけ残っていて「族」とは言えまい…

人間によって滅ぼされたのは確かだが


誇りはアシュトンやお前達が守ってくれた


それを胸に他の魔族の分まで生きていくのが私の役目だと…

そう思っている」

セリーヌが心に伝わってくる暖かさに笑みを浮かべた

ふと、ジーネが思い出した様に奥の部屋の少女を見つめる


「まずはあの少女が何者なのかだ」












ジーネはアシュトンと共にアースホープを打ち消したにも関わらず戦艦が健在な為、

再び戦艦がエネルギーが余る限り攻撃してきたのである

どうしようもない時その少女は戦艦がいる空から小型宇宙船に乗って降りてきた

攻撃が始まり、再び大地が揺れていく、そんな中その小型宇宙船は着陸して

その少女はジーネの元に駆け寄るとこう言ってきた


「プリシスさんっていうエディフィスへ

向かってる人の出身地はここですか?」


プリシスで今エディフィスへ向かっている者と言ったら…

一人しか思い当たらない

「あぁ、その通りだ」

体が起き上がらないジーネはそうとだけ呟いた

「やっと通じる人がいました…!」

薄っすらと閉じていく視界の中で見た少女の姿は…

格好に似合わないガントレットをはめ、赤髪の小さい少女で

どこか一人だけがそこにいるようには思えない…そんな存在感

そしていつの間にか表情がさっきとは真逆になり、覇気を漂わせる














ジーネが気が付いた頃には隣には少女が気絶して

上空にいた筈の戦艦はラスガス山脈方面に墜落していた







「私もここに戻ったらすぐにばたんきゅーでしたわ…」

奥の部屋を見つめながらセリーヌが呟く

「戦艦を落とせるなんて…やっぱり普通の子じゃありませんわね」

ジーネがどこか不信感が募る表情を浮かべながら頷いた

「あぁ」








---クロス城跡、元城下町---


ウェスタがどこか寂しそうに門から見える平原を見つめていた

アーリア村長が隣で同様に見つめている

「村長様…?おかしな話ですが…

アシュトンさんは…光の勇者だったんでしょうか?」

村長は首を横に振った

「確かに光の剣を持って災いから私達を救ってくれた…伝承通りじゃ…

だが…災いは魔族ではない

私達だけでなく、この大地をも飲み込む他の次元の者達であり

アシュトンさん、彼だけが勇ましくあった訳ではない

ここにいるクロス大陸全てのものが一つとなって…

それをアシュトンさんは果たしてくれた訳じゃし、

最後は魔族王のジーネまでもが光の剣を取った…

光の勇者は昔の伝承じゃ…現代の勇者は…このクロスの全ての人や魔族じゃ」

ウェスタが微笑んだ

「レナがいっぱい憧れますね」

村長は大笑いして、頷く








ボーマンはある程度の医療を行った後、こっそり抜け出した

「本当…ディアスもアシュトンも…

強い奴らは本当早々と逝っちまうもんだ…

あいつらは後悔してないんだろうな…

強い力を持って英雄になるのもいいけどよ…

俺はそこらの薬剤師がやっぱりお似合いだ」

ボーマンは煙草をくわえた状態で空を見つめた後

準備していた酒を持って平原に向かって歩き出す

「二人分の酒飲み場所がもっと近いと助かるんだけどなー

アシュトン終わったら神護の森でディアスに報告会だッ!

で、帰ってニーネ達全員にキスをしてもらう!完璧!」

そう言ってボーマンはクロス平原へかけていく








「さってとー」

チサトは食料とある程度ラクールまで持たせる為の道具を持って

ラクール方面を見つめた

ノエルが心配そうにチサトを見入る

「まだ完治してませんよ…?」

チサトがニコッと笑って見せた


「せっかくアシュトンが明日をくれたんだから…

無駄にしちゃいけない…それに

クロスの人々や、アシュトンの勇士

それに魔族達の誇りも…

なんとしてもラクールにも伝えなくちゃいけないの!

皆の頑張りを…誇りを知らせる…

それが…私の今やらなくちゃいけないことだから!」


清々しい程の笑顔

ノエルが苦笑いして、昨夜の事を思い出していた

「あんなに誰より泣いていたのに…ふふッ」

含み笑いをしたノエルにチサトが顔を真っ赤にしながらうつむいてしまった

「せ、せっかく決心したのに…」

ノエルが慌ててチサトに駆け寄ると…

チサトからノエルに抱きついてきた

「んふふーノエル先生はやっぱり優しいね♪


じゃ、またね!!」


そう言って駆けていく姿は力強く明日へ向かっていた

「さて…僕もボーマンさんが逃げた分、皆の救護しないとー」










---クロス城跡、防衛拠点---


クロス城下で再び笑い声が溢れてくる頃、その少女は目を覚ました

「あれ…私は…えっと確か…」

ジーネが起きた少女に気が付いて目を向ける

「大丈夫か?」

少女は今の状況を整理しながら周りを見渡す

「あなたは確か…プリシスさんの母星がここだって言ってくださった方ですよね?」

ジーネは頷き、皮を向いたリンゴを差し出す

少女は申し訳なさそうにリンゴを貰った

「あ、いただきます…」

シャリシャリと小さな口で食べている中ジーネが少女の事を見つめていた

少女がジーネの瞳に見入っていている様子でジーネが首を傾げる

「紅蓮の様に紅い…綺麗な瞳ですね」

ジーネは瞳を褒められた事がなく、動揺しながらも少女の事について聞くことにした

「名前はなんというのだ?」

少女が思い出した様にベッドから出て、服の端を持って礼をした


「私、レイア・ロセッティと申します」


さっぱり聞き覚えのない名前にジーネは違う質問をした

「プリシス達の仲間なのか?」

レイアは曖昧な表情で頷いたり、首を傾げたりする

「えっとですね…私の恋人さんがプリシスさん達のお仲間で…

エディフィスへ向かっていたのですが…

色々とありまして、私が代わりにお手伝いに行く事を決心しまして

それで、エディフィスへ向かおうとしたんですが…

場所がどこにいっても秘密事項みたいで…

そ、それで…お仲間のプリシスさんって人だけは覚えていたので…

プリシスという人を銀連邦の端末から

片っ端から調べまして…5つめの星がここでした…」

色々と手でジェスチャーしながら話すレイア

なんとも可愛らしいものだが、ジーネは先の戦艦を

落とした力を持っていると考えると眉を潜めるしかなかった

「エディフィスへ向かってプリシス達に合流したいのは分かった

だが…どうやってあんな強固な戦艦を落としたんだ?」

レイアはどう説明していいのか分からないのか首を傾げながら

「えっと…なんだか急に力が溢れてきてですね…

ドーンとどがーんとやりました」

ジーネはその可愛らしいジェスチャーに苦笑いしながら

レイアを見つめた

もし、敵だとしたらエディフィスへ行かせる訳にはいかない

だが…今はただの女の子…に見える

「私はあまり他の星の者を知らないのだが…

レイア…と言ったな…気配が二つあるように感じられるのだ

そういう種族なのか?」

レイアは気が付いたように微笑んでうつむいて

ひとさし指同士を触れさせる


「その気配はきっと私の恋人さんです」


そう言われるとなぜだか体が納得できた気がする

ジーネはそれ以上は深く追求しないで、セリーヌを呼んだ

「すまないが、エディフィスの場所を教えてくれないか」

セリーヌが部屋へ出向くと、微笑んでいるレイアを目にした

セリーヌがレイアを見てなぜだかギュッと抱きしめる

「貴方が寝いるのを見ていて思っていたんですのよ…

やっぱり可愛いですわ!」

何かつぼにはいったのか、レイアをぬいぐるみの様に扱い始め

ジーネは無言のまま少しの時間が経過した

……





レイアの事情を聞いた後、セリーヌは答える

「えっと…私はエディフィスの星の鼓動しか分かりませんわよ?」

セリーヌが言っているのは、紋章術を使う際に感じる星の息吹

星々によってそれらが違うのは理解してる

「十分だ」

セリーヌがエディフィスを思い出しながら紋章構造、

すなわち構成原理をジーネに触れて送り込む

「これで、分かるんですの?」

ジーネが頷いて、ある方向を見つめた

「方向だけだが…十分だ」

レイアは二人が何を話しているかは分からないが…

安堵の笑みを浮かべていた

「これで…エディフィスへ行けるんですね…」

セリーヌが心配そうな表情でレイアの顔を覗き込む

「大丈夫ですの?とっても危険な場所ですのよ?」

レイアが少しだけ不安になるが、拳を握り締めてガントレットを見つめる


「プリシスさん達の役に立ちたいんです」


ジーネが珍しく含み笑いをしながらセリーヌを見やった

「戦艦を落とす程の力があるんだ、邪魔にはなるまい」

セリーヌが苦笑いしてその心配は打ち消される

「えっと…ジーネさんも着いて来てくれるんですか…?」

ジーネは優しい笑みで頷いた

「そうしないと、場所が分からないだろう?」

その答えにレイアは飛び上がるかのような勢いで喜んだ


「やりました…!初めてのお仲間が出来ました!」


セリーヌが二人のやりとりを見ながら苦笑していた

「まさか、ジーネがプリシス達に手を貸してくれるとは思いませんでしたわ」

ジーネが真剣な表情でエディフィスを感じる方向を見つめた


「私がアシュトンや双頭竜の代わりというのもある…

それにプリシスや仲間達にアシュトンの死を教えなくてはならない」


その言葉にセリーヌが強い表情で首を横に振った

「今は絶対、皆不安な状態にある筈ですわ…

特にプリシスは…絶対エディフィスどころじゃ…」

セリーヌが言いかけた頃にジーネは話を重ねる


「どんな運命だっていつかは受け入れなければならない」


セリーヌはうつむいてしまった

ジーネはレイアのキョトンとした表情を見た後に窓の外を見る

「どのみち…死んだと言わずとも、アシュトンだけどこかで何かをしていると言う…

エディフィスよりも、プリシスよりも…大事な何かをしていると…

プリシスは思うだろう

いつかは言わざるを得ない…

それまでプリシスは死に匹敵するほどの不安を抱える…プレッシャーの中で…

アシュトンは大事な事をしている、そう自分に言い聞かせる…


死というものを嘘でかためて、その場しのぎにするつもりはない」


セリーヌは何も言えなくなって頷き

レイアも察して黙り込んでしまった

「大丈夫だ…私は人間の…プリシスの強さを信じている」

セリーヌはどこか寂しさを募らせた表情で頷いた

「そうですわね…プリシスも…強くなりましたわ…」


プリシスさんは大事な人を失ってしまった…

自分の手のひらをジッと見つめる

ヴァンさんの温もりが感じられた

これが…どれだけ幸せな事なのだろう…


レイアはなぜだか涙が溢れてきてしまった

そんなレイアをヴァンが包んでくれているかのようで…

また、たまらなく涙が溢れて…

その場を去ってしまった

「レイア…」

セリーヌが去っていく小さな背中を目で追った

事情は分からずとも…恋人の代わりに戦うと誓った

小さな体の少女

その体にどんな悲しみが詰まっているかは…分からない

「こんな悲しくて辛い戦いを…なんでプリシス達だけが背負うんですの…?」

ジーネは窓際に立ち、城下町の人々を見つめた


「それが…プリシス達の決意であり…

明日を守る為の戦いなのだろう」


一つの言葉で言えた事ではないが…

それぞれの明日がその辛さの、悲しみの先にあるのなら…

それを乗り越えていくしかない…

その先の明日があると信じて











---クロス城跡、元城下町---


「わ、私がですか…?私なんかでいいのでしたら…」

夜になり、少し落ち着きが出てきた城下町の人々

そこでセリーヌがレイアが踊り子であることを知り、躍らせる事にしたのであった

クリスも大賛成し、町の人々も大歓迎

その夜、最初はどこかおぼつかない踊りだったが…

いつしか華麗な可愛らしい天使が舞いながら、神秘的な歌声を披露した

一番ビックリしたのがセリーヌで、あまりの美しさと神秘さに時間が立つのを忘れ

町の人々のやる気が数倍に膨れ上がったのは言うまでもない

踊りが終わったレイアに近づき、群がった男達はなぜだか

レイアから殺気が感じられ、近寄る事はできなかったが

笑顔で全てが丸く収まっていた









次の日…夜が明けた頃…

小さな宇宙船はエディフィスへ向かった



「この宇宙を頼みましたわよ…

そして…どうか無事でありますよう…願いますわ」









*こめんと*

ということで九章の後のお話しとなります

番外編というか、ここまで話が絡むと番外編じゃありませんね

ここで行き先が分からなくなっていたレイアがエクスペルの最後を救う事に…

戦艦まで破壊する勢いがありませんでしたからね…(メテオスォームだとエクスペル吹き飛びます…

ぼろぼろになったエクスペル、クロスの人々でも明日を見つめて動き始めます

これからが本番…

エディフィスへ向かうレイアとジーネ

果たして…

こうご期待!!!





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