アルベル





長い戦いが終わり----



---交易都市ペターニ---



「最近アーリグリフの漆黒の隊長さん、アルベルさんでしたっけ?」

ある通りのお母様二人、買い物途中だと思うが会話に華を咲かしているようだった

「えぇ…確か、今山賊のように人を襲って殺してはお金を取ってるらしいわよねー?」

奥様はうんうんと無駄に頷いて、右手をパタパタした

「そぅそぅ!あの性格の悪さのうえに最悪よねー

シランドの方々が許さないわよー…

また戦争とかは嫌だわー」

この噂はこの町では当たり前というほどに、そして全都にまで広がり、少数の民がアーリグリフを批判した

シランドはアーリグリフをやはりまだ信用しきっていなかった状態にあったため、アルベルの処罰をアーリグリフに求めていた

それにアーリグリフは回答をよこさない日が続いている




---パルミラ平原 ---




「あり金を出して消えな」

ある夜の暗がりの平原での旅商人に刀を突きつける暗がりにいる人物

にたりと笑い、出さなければ本当に切り殺されそうな気配さえ漂わせている

「お、お前がアルベルか!そ、そんな事をして恥ずかしくないのか!」

対抗する気で短剣を抜き、構えに入る

「ほぅ…お前にそんな勇気があるのか?ふはは…死ね」

ヒュァンと音がしたと同時に

ガキャァンと鈍い音が響き、旅人は殺されるとおもい身を縮めていた

「へ?」

「アルベル…ノックス…この旅商人は私の大事なお客様です」

そこにいたのはウェルチ・ビンヤード

戦闘は向かない身ながらも指付きステッキで刀を受け止めて弾くと、旅商人を起き上がらせた

「小娘が調子込むな、切り刻むぞ」

軽く振るわれた刀をさっと避けて、ウェルチは呟いた

「この世の中をまた戦乱に引き込む気ですか!お客様にまで手を出した罪!

フェイトさん達の変わりに成敗します!」

叫んだ後にある程度距離をとるが、アルベルのリーチなどの関係で紋章術を唱える時間がなかった

「口だけか!小娘!!ほら!切り落とすぞ!」

悲鳴をあげながら避け始めるウェルチは出過ぎた事に今頃後悔していた

「散歩なんかしなければよかったー!;」

その時目の前に影のように誰かが現れた

「ほら、今のうちに唱えな!」

月影の反射で見えづらかったが、そこにいたのは確実にネル・ゼルファーであった

「ネルさん!ありがとうございます!」

ウェルチは軽いステップを踏んでゆっくり瞳を閉じた

「汝、凍てつく壇の祭、弧の衝動の息吹を示せ!

ディープフリーズ!!!」

直撃はしなかったものの、怪我をおわすことはできただろう

「ちっ!運がいい野郎だ!今日は引いてやる!」

素早く崖から飛び降りて姿を眩ましたアルベル

ネルは追わずにウェルチに声を掛けた

「やっと分かった、ウェルチ感謝する」

意味が分からない様子でウェルチは頷いた

「は、はぃ」






---王都シランド---


「そうですか…分かりました、アーリグリフ王に後々謝りたいと思います」

「ですが!ネルだけの意見だけで納得するのですか!?」

「黙りなさい、ラッセル」

「はっ」

シーハート27世はゆっくり頷くとネルを下がらせて、ため息をついた







---交易都市ペターニ---


「きゃぁぁぁ!」

「うわぁぁ!」

ペターニで人々が逃げ惑う

アルベルが堂々とペターニに乗り込んできたのだった

人々は見ただけで家に駆け込んでいく、アルベルは片っ端から建物などを壊したり、ドアをこじ開けようとしていた

「金だ!金!よこせば首をはねるだけにしてやるよぉ!」

そんなアルベルにただただ人々は脅えていた

兵も既に不意打ちで倒されている

いつも賑やかなペターニは静まり返っていた

「もう!!許せない!!!アルベル・ノックス!勝負しなさぃ!」

勢いで扉から勇を決し飛び出した

「また昨日の女か…!うぁははは!その心意気気に入った!俺の奴隷になれ!」

ウェルチは顔を林檎のように染めながら、杖を振りかぶりながらアルベルに突っ込んだ

「死んでも嫌に決まってるでしょうぉ!!!!」

「なら死ね!」

アルベルの刀がウェルチの肩を捕らえた…気がした

チキンッ

軽い音とともにアルベルの刀が砕けながら吹っ飛んだ

「阿呆の分際で俺を語るとは…身の程を知れ」

そこに立っていたのは、アルベル・ノックス

無表情ではあるが、紅い瞳には何かが渦巻いていた

「ぇ!?なんで二人もいるの!?」

ウェルチが驚きながらも、後ずさりをしていく

「けっ!つまらねぇ!ここで本物が出てくるとわなぁ!」

町の住民も騒ぎ出し、驚きを隠せなかった

偽アルベルは悠々と鋼鉄に包まれた左手をかざし、アルベルを挑発した

ゆらりと動くアルベル、左の爪が震えている

「クソが…テメェは…その左手の痛みを知っているのか?」

「はぁ?馬鹿か!知るか!こんなの殺す道具なんだろうが!痛みはお前が受けるんだよ!」

アルベルは無表情のまま、ただただ刀を握り締めている

「俺も大人になったもんだ…

が、テメェのようなクソ虫以下の野郎になめられるのはゴメンだ」

「そうかい!」

偽アルベルは腰から短剣を二つ取り出して構えた

「自分が強いと思ってるのか!?さっきは俺が油断したが、お前を殺して俺が本物のアルベルになってやるよ!

きっと楽しいんだろうなぁ!人をいっぱい殺せるんだろうなぁ!」

「俺は弱いんだよ」

「は?笑わせるな!怖気づいたか!?」

短剣を持ちながら偽アルベルは余裕綽々でにたりと笑った

「未だに守ってやれる野郎がいないからな」

アルベルは未だ動こうとしない

「ぬかせ!俺が本当の強さを教えてやるよ!死ねー!」

ドスッ!

アルベルのみね打ちで鈍い音とともに偽アルベルは倒れ込み、気を失った

「相当口だけだな…この野郎は…

はぁ…黙っていれば調子込みやがって、こんな野郎に化かされてたくそ虫どももどうかと思うが…

まぁ今回は牢獄拷問200年で許してやる

おぃ!てめぇら!聞いとけ!この俺を真似なんかしてみろ!次はこんな甘かねぇぞ!」

町の人々に荒々しく叫ぶと、背を向けて去ろうとした

「ねぇ!なんでアルベルはそんなに強いの?」

「俺は強くねぇ、強いって認めねぇからだ」

「どうして?」

「強さに限度なんかありゃしねぇからだ!」







*こめんと*


偽者が出てくるお話を作ってみたかったんです

アルベルはやはり成長して、強さに磨きをかけた

そんな感じで書かせていただきました



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